オーストラリア代表、ワラルーズのFBローリー・クラマーが狙った逆転のPGが外れ、その2分後に歓喜の時が訪れた。
しかし、決してラッキーな勝利でないことは明らかだった。
5月10日にゴールドコースト、ボンド大学内のスタジアムでおこなわれたオーストラリア×日本の女子代表のテストマッチ。
日本代表、サクラフィフティーンが個々の激しいタックルと粘り強い組織力で相手を2トライに封じた。
世界ランキング5位の相手に12-10と競り勝った(日本は12位)。
日本がオーストラリアに勝ったのは史上初めて。今回の遠征でサクラフィフティーンはフィジー代表にも勝っており、オーストラリアン・バーバリアンズ戦も含め、3試合を全勝で終えた。
ファーストスクラムでサクラフィフティーンのパックを粉砕した時、ワラルーズは楽な試合になると感じたかもしれない。
しかし、ボールが動き出せば日本が積み上げてきたものが多く出た。
相手より動き続ける。しつこく、低く、鋭いタックルを大きな相手に2人で繰り返す。
自陣で戦う時間も少なくなかったが、前半は0-0だった。
試合が動いたのは後半9分だった。敵陣でのワラルーズのスクラムから攻めたボールが乱れたところをSO大塚朱紗が足にかけ、拾い、インゴールまで走り切った。大塚がコンバージョンキックも決めて7点を先行した。
その6分後にモールから相手に5点を許すも、結果的に決勝点となるトライは、失点直後のリスタートのキックオフから得たのが逞しかった。
接点で絡んで相手反則を誘い、PKで敵陣深くへ攻め入る。
ラインアウトからしつこく、テンポよく攻め続け、相手をゴール前へ釘付けにした。
相手反則で得たPKから速攻。SO大塚からパスを受けたFL細川恭子がインゴールに入って12-5。
その後のワラルーズの反撃を1トライだけに抑え、勝利を手にした。
PR南早紀主将は、試合中に仲間に対し「我慢、我慢」と叫び続けたと明かした。
タックルし続ければ相手はミスをする。ボールを手にすれば、自分たちのテンポに相手が苦しむと分かっていたからだ。
遠征中にコロナ陽性者が出て、試合直前にメンバー変更もあった。その状況の中で、過去に見られなかったキックを使った戦い方を実践できた。選手層が厚くなったことも感じられた。
南主将は、10月に控えるワールドカップへ向け、「もうワンランク上のステージに進む新しいスタートラインに立てた」と笑顔を見せた。
歴史的勝利をつかみ、「これで女子ラグビーをもっと知ってもらえるし、価値を高められる」と話すキャプテンは、さらに上を見て前進し続けるつもりだ。
世界に大きなニュースを発信して気持ちよさそうだった。