184センチ、98キロと立派な体格も控えめな性格。のんびりしている。
宮古島出身の石垣航平は、「プライベートでは時間は適当」と沖縄タイムで動く。
ただピッチに立てば、強く、ダイナミック。
セブンズ日本代表として世界の舞台も経験した(3大会に出場)。一流アスリートたちを相手に戦った経験をチームに還元する。
ブルースに加わったのは2021年の初夏からだ。所属していたコカ・コーラレッドスパークスが昨季限りで活動停止となったため、活躍の場を移した。
宗像は、前職で営業所があった縁のある場所。そこでプロフェッショナルに転身し、チームに貢献している。
リーグワン元年は、シーズン序盤こそコンディションが整わず出遅れるも、その後復調した。
実施された全9試合(10節のレギュラーシーズン+順位決定戦初戦まで)のうち、第5節以降の5戦に出場。
第7節からの出場4戦はCTBとWTBで2試合ずつ先発とチームに欠かせぬ戦力となっている。
5月8日の順位決定戦、豊田自動織機シャトルズ愛知戦(パロマ瑞穂ラグビー場)にも11番のジャージーで先発する。
活動中止が決まったブルースにとってのラストゲームだ。
ブルースの一員となって初めてのホストスタジアム、グローバルアリーナでの試合は、4月3日の清水建設江東ブルーシャークス戦だった。
その試合には14番でピッチに立った。逆転勝ち(40-38)でファンを喜ばせた試合を「後半、うまく切り替え、意思統一できた」と振り返る。
「コーラ時代とは違う感覚を受けました。いい雰囲気の中でプレーできて、またここでプレーしたいな、と思いました」
仲間との仲の良さは、前チーム時代もそうだった。
「ただ、(ブルースは)若い選手が多く、のびのびとプレーしている印象を受けています。みんな、規律ある中で楽しんでいる」と話す。
28歳。コカ・コーラに5季在籍した経験があるから落ち着きがある。
社員選手からプロの生活に身を置くことになって「自分に使える時間が増えた」と変化を感じている。
「朝から集中力高く練習できる。午後の練習後、翌日の準備もできる」
「転向1年目なので、まだ上手に使い切れていないと思いますが」と前置きするが、新たなアスリート生活を気に入っている。
ただ、その生活も、クラブの活動休止決定に将来の見通しが立たなくなってしまった。
2年連続の青天の霹靂。
しかし、「チームがこれからどうなるのか、自分がこれからどうなるのか、と考えることはありますが、いまは目の前に集中しています」と言ってきた。
「昨年(コーラ休部決定)は、シーズンオフに集合の知らせがあり、会社の方から突然決定を告げられました」
呆然とした。ショックだった。
「でも今回は、わりと冷静に受け止められました。シーズン中で、試合もある。みんなで頑張ろう。そんな雰囲気があるので」
個々がバラバラになってもおかしくない状況なのに、前向きでいる選手たち。
なぜなのか。
「僕の場合、純粋にいま、このチームでプレーしていることが楽しい。ここに来て、時間を重ね、みんなとのコミュニケーションもとれています。充実しています。みんなと戦い切ってから、その後のことは考えよう、と」
宮古高校時代は無印。先輩が進学した帝京大学で肉体と意識を変えた。4年時には7連覇の感激を味わう。
這い上がった経験があるから強い。これまでも、これからも、目の前のことに集中して前進を続ける。
第10節(4月9日)の中国電力レッドレグリオンズ戦は、今季のプレータイムが短い選手たちがメンバー入りして50-14と大勝した。
メンバー外だった石垣は自主的に現地へ足を運び、観戦。仲間たちのパフォーマンスを見つめ、「溜め込んでいたものを爆発させていましたよね」と感じた。
「感動しました。このメンバーと最後まで戦いたい。あらためて、そう思った試合でした」
チームメートとの時間を最後の最後まで濃密にする。