渋く光る無印の星。NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安の竹内柊平は、国内ラグビー界最上位のリーグワン1部にあっても確たる手ごたえをつかむ。
身長183センチ、体重115キロの24歳。スクラム最前列の右PRやHOを務めながら、突進役、タックラーとして何度も局地戦に顔を出す。
「自分が得意としているフィジカルの部分では通用していると実感していて、自信を持っています」
競技を始めた宮崎ラグビースクールでは、「背が小さくて、(仲間内で)僕だけ県の選抜に入れないくらいの実力」。進学した宮崎工高では「160センチ」だった身長を一気に伸ばしたものの、全国的な実績を作れなかった。それでも、トップレベルでプレーするのをあきらめなかった。
九州学生リーグ1部の九州共立大では関東、関西の強豪大に比べてスカウトから注目されづらかったものの、ひとつの機会に焦点を絞る。
最上級生になる前の2019年3月。当時のトップリーグの合同トライアウトにあたる『トップリーガー発掘プロジェクト2019』に参加した。当時はFW第2列以降のLO、NO8を務めていたが、生来の頑丈さを活かすべくこのトライアウトでは最前列でスタンバイした。
運をつかんだ。参加者を複数のチームに振り分けておこなう実戦形式のセッション。竹内が入っていたグループのヘッドコーチ役が、シャイニングアークスの斉藤展士FWコーチだったのだ。本人の述懐。
「ぶっつけ本番で8対8でのスクラムを組むことに。変な形で押していたら、斉藤コーチに『竹内君、押し方が違うよ』と。そこで初めて『実は僕、今日、初めてスクラムを組んでいるんです』とカミングアウトをして…」
果たして、正直が一番だとわかった。
「おもしろいね、君! って」
スクラムに造詣の深い斉藤コーチにとって、色のついていない大器が魅力的に映ったのだろう。まもなく竹内はシャイニングアークスの練習に参加。事実上の「最終セレクション」をパスできた。
リーグワン元年にあたる今季は、第15節までに12試合に出場。シーズン中にクラブが今季限りで再編されると聞いた時も、「僕をここまで強くしてくれたチームがなくなるのは寂しいです」としながら「これがパフォーマンスに影響するようなら今後も勝てない。強いメンタリティで引っ張っていけたら」。目の前の勝利に加え、もうひとつの目標も視野に入れる。
「高校も大学も無名校でした。大学選手権にも自分の代で初めて行きました。そういう僕のような選手が日本代表に行けば、(日の当たりづらいチームの)希望になると思います。なので、上のカテゴリーに行きたいです」
ナショナルチームでスクラムを教える長谷川慎アシスタントコーチとは、学生時代に面識がある。スーパーラグビーに挑むサンウルブズが北九州で合宿をした2018年冬、長谷川ら当時のコーチ陣が九州共立大の指導に訪れたのだ。
長谷川コーチはこの時、普段から唱える8人一体型の組み方を落とし込む。間を置かずに何度も組み込ませ、理想の形と実際のずれを端的に指摘する。数十分、コーチングを施し、「これでスクラムが好きになった人!?」と問う。皆が手を挙げた。
3年生の竹内もそのひとりだった。笑顔で述懐する。
「8人で組むというメンタリティを教わって、その年の九州では一番のスクラムが組めました。自信になりました。初めて指導を受けたのですが、本当に楽しくて。ただ、その後まさか自分がPRになるとは。…あの時、もっとちゃんと聞いておけば!」
特異なキャリアを積みながら大海を見据える竹内。5月8日のリーグワン第16節(対 コベルコ神戸スティーラーズ/宮城・ユアテックスタジアム仙台)でも、3番で先発する。いつかまた、「慎さん」の指導を受けたい。