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帝京、明治、早稲田の学生新聞ラグビー番記者で座談会。各校の2022展望【関東大学春季交流大会 J SPORTSで配信中! 3校による試合は実況・解説付き!】

2022.05.06

5月1日におこなわれた今季最初の早明戦は、26-19で明大に軍配。写真は明大・石田吉平主将(撮影:髙山展誉)

 関東大学対抗戦と関東大学リーグ戦からそれぞれ9校が参加し、6チームずつ3つのグループに分かれて総当たりのリーグ戦を行う恒例の「第11回関東大学春季交流大会」が、4月からおこなわれている。
 J SPORTSではAグループの全試合とBグループの注目試合を配信しており、帝京、明治、早稲田による3試合は実況・解説を付けてLIVEでお届けしている。

 今回はその対抗戦3大学の学生新聞(帝京スポーツ新聞部、明大スポーツ新聞部、早稲田スポーツ新聞会)のラグビー番記者に集まってもらい、座談会を開催。それぞれ昨年を振り返りながら、彼らの目線で今季の戦力分析をおこなってもらった。

●参加者
帝京大スポーツ新聞部(臼井塁さん/3年・編集長)
明大スポーツ新聞部(牛嶋淳太郎さん/3年、豊澤風香さん/2年)
早稲田スポーツ新聞会(森田健介さん/3年、谷口花さん/3年)

――(司会・編集部)今日はお集まりいただきありがとうございます。まずは、みなさんの新聞部、新聞会の紹介からお願いします。

帝京・臼井 帝京スポーツは年に4回発行していて、報知新聞社で作っています。ちょうどラグビー部が優勝した号が創刊100号でした! 部は人数が少なく2、3年生で6人ほど。ラグビーの担当は2、3人です。ただ今年は新入生7人の入部が決まりました。

早稲田・森田 早スポは2、3年生100名ほどでの活動です。年11回の発行で、ラグビー班では早明戦号、早慶戦号を試合会場で配布しています。11、12月は本当に忙しいですね(笑)。日本一になれば「荒ぶる号」を作ることができます!

明治・牛嶋 明スポは年9回の発行です。部員は80人ほどでラグビー担当は9人。それぞれ3、4部活を兼任してます。早スポさんと同じく明早戦では特集号を作ります。昨年の明早戦号では学生新聞ならではのことをやろうと、ラグビー部の日常を特集して、各学年のおしゃれな人たちに登場する企画もおこないました。

帝京スポーツの臼井さん。大学選手権優勝号は創刊100号に(撮影:長岡洋幸)

――大学ラグビーといえば早明戦です。

早稲田・森田 会場で配っていると、やはり明治ファンが多い印象がありました。

明治・牛嶋 昨年の明早戦では早スポさんと一緒に配布しました。いまはコロナ禍で1か所にブースを作り、会場に来た方々に配る形になっています。

帝京・臼井 早稲田、明治と戦うときはOBの数が全然違っていて、アウェーに感じることはあります。ただ昨年の大学選手権決勝は、学生に対して無料招待もしていたので対抗戦ほどは感じなかったです。

――他大学のスポーツ新聞もやはり意識して見ている。

早稲田・森田 明スポさんの紙面はきれいで、ホームページも見やすいです。昨年の早明戦の1面のデザインもすごく良かった。毎回、参考にさせていただいてます。

明治・牛嶋 僕も早スポさんの記事をよく見ています。試合展開が分かりやすく書かれていて、さすがラグビー経験者*だなと(笑)。雑誌に載せているような選手のデータも持っていたので、すごいなと見ていました。
*森田さんは中学でラグビー部

帝京・臼井 僕もいつも確認しています。工夫されたデザインや僕たちが書けないような内容もたくさんある。報知新聞の方から勉強会を開いてもらって、レイアウトや記事の書き方を教えてもらったりもしています。

明大スポーツの牛嶋さん(左)と豊澤さん(撮影:長岡洋幸)

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早稲田スポーツの森田さん(左)と谷口さん(撮影:長岡洋幸)

――昨年は帝京が9連覇以来、4年ぶりの日本一となりました。臼井さんはこれまでとのチームの違いをどう感じられていましたか。

帝京・臼井 これまでの主将は落ち着いていて姿で見せるタイプが多かったけど、細木(康太郎/現東京SG)さんは声を出して、部員を盛り上げようとする姿勢が伝わりました。勝つオーラが出ていましたし、結果、昨年は春季大会の初戦(大東大戦)から全勝です。スクラムや攻守の切り替えで、前年度からの成長を感じていました。

――その帝京に決勝で惜しくも敗れてしまったのが明治でした。

明治・牛嶋 対抗戦で帝京と早稲田に敗れたときは、点差こそ開いてなかったですが得点を取れないという不安がありました(7-14、7-17)。しかも大学選手権で天理、早稲田、東海の厳しいブロックに入った。正直、今年は難しいかと思っていました。
 でも飯沼(蓮/SA浦安)主将は「負けてからどう成長するか」というのをすごく意識していた。早稲田とはこの年、春夏秋と3度戦ってすべて負けていたので、「早稲田に4回も負けられない」と選手たちがすごく燃えていました。飯沼主将がメンタルを変えたんだと思います。飯沼主将の番記者をした昨年は驚かされることばかりでした。たった2歳差でこんなにも考え方が違うのかと(笑)。

――早稲田は対抗戦の早明戦では勝ちましたが、大学選手権でリベンジされる格好になりました。

早稲田・森田 スクラムがどうしても劣勢で、スクラムの重要性を再認識した1年でした。今年はフロントローのメンバーも変わります。大田尾(竜彦)監督からは、フィジカル強化を図っていると聞きました。「FW8人の合計体重が帝京や明治、東海は800㌔台で、早稲田だけが800㌔を切っていた。特に東海は870㌔ほどあったので、成人男性1人分くらいの差になる。体重=パワーという訳ではないが、フィジカルの強化は必要」と。

帝京大の主軸。3年のHO江良颯(左)とNO8奥井章仁(撮影:松本かおり)

――帝京は細木主将こそ抜けますが、今年もタレントは揃っている印象です。岩出雅之監督が退任され、相馬朋和新監督を迎えての最初のシーズンでもあります。

帝京・臼井 偉大な監督が抜けてプレッシャーのかかるシーズンだとは思いますが、相馬監督は昨年からチームを見ていますし、どの学年にもキーマンが残っていて選手層も厚い。4年生では高本(幹也/SO)が昨年の日本一に大きく貢献していた。3年生には江良(颯)、奥井(章大)の大阪桐蔭コンビ、2年生にも青木(恵斗/FL)、本橋(拓馬/LO)がいる。松山(千大)主将は「80分間タフな試合ができるように、ラグビー以外の小さいことでもタフに粘り強く取り組んでいきたい」と話していました。

――早明からは今年の帝京をどう見ていますか?

早稲田・森田 今年も江良と奥井がいるのはちょっと嫌ですね(笑)。

明治・豊澤 明治もFWが強いチームですが、昨年はそこで負けてしまった。大賀(宗志/PR)さんは負けた瞬間、悔しいよりも先にスクラムでリベンジしたいと思ったそうです。咋年のFWは下級生も多くいたので、戦えるメンバーは揃っていると思います。

明治・牛嶋 決勝で帝京に負けたとき、新主将の石田(吉平/FB)選手と紀伊(遼平)選手が電光掲示板を眺めているシーンが印象的でした。「来年このスコアを絶対忘れないようにしよう」と話していたそうです。飯沼組の強さでもありましたが、明治の強さはリベンジするメンタルだと思ってます。今年こそと燃えているはずです。

26年間率いた岩出雅之監督の後任には相馬朋和氏が就いた(撮影:山口高明)

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スクラムは今季も勝敗を左右するカギとなりそう(撮影:松本かおり)

――明治はBKのメンバーが昨年とは大きく変わりそうですね。

明治・牛嶋 SH飯沼、CTB江藤(良/現横浜E)、CTB児玉(樹/現BL東京)、FB雲山(弘貴/現東京SG)がいなくなる。1年生の時から出ていたメンバーが抜けるので不安なところではありますが、神鳥(裕之)監督は「新しい選手がどんどん出てくるのが明治の良さ」と話しています。こないだの東日本セブンズでも活躍したCTB山村(和也)だったり、1年生にも良い選手がたくさんいるので期待したいです。神鳥監督は「来年の100周年につなげるためにも、99年目の今年はとても重要」と話していました。

――早稲田はどうでしょう。新主将にはFL相良昌彦選手が就任しました。

早稲田・森田 本人は口下手と言っていましたが、よく話してチームを引っ張っている印象です。前主将の長田(智希)さんが関西の方でよくしゃべっていたので、それに比べると、ということはあるかもしれません。ただ父でもある相良(南海夫)前監督には「自分らしくやりなさい」と言われたそうです。

早稲田・谷口 4年生の委員(FL植野智也、SH小西泰聖、CTB平田楓太)に取材する機会がありましたが、みなさん「昌彦だからついていける」と話していました。周りからの信頼は一番厚い。いろんな取材をしていても、相良選手の名前があちこちで出てきます。

早大の新主将となったFL相良昌彦(撮影:松本かおり)

――それぞれの今年の注目選手をずばり教えてください。

明治・牛嶋 SO伊藤(耕太郎)選手です。去年から先発していて、自分でも走れる。フィジカルも強い。ただ僕はもう一人推したいです(笑)。同じSOの池戸将太郎選手。1年生のころに人物記を書かせてもらって、思い入れのある選手です。1年生から対抗戦も出ているし、キックもゲームの組み立ても上手なので、伊藤選手と切磋琢磨してほしい。本人は「ディフェンスが課題」と話していました。

早稲田・谷口 今季からHOに転向した佐藤健次選手です。昨年から圧倒的な突破力を見せていて、そのNO8での良さをHOでも上手く発揮できるのかに注目です。

早稲田・森田 佐藤選手は人懐っこいという印象です。先輩、後輩関係なく絡みにいくし、コミュ力が高い(笑)。

帝京・臼井 FL青木(恵斗)選手です。昨年は1年生から先発で出場していましたし、スクラムの強さにも後ろからの押しで貢献していた。佐藤選手と一緒に桐蔭学園では優勝もしている。

昨季ブレイク、明大の司令塔・伊藤耕太郎(撮影:松本かおり)

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NO8からHOに転向した早大2年の佐藤健次(撮影:松本かおり)

――期待の新人はどうでしょう。あの選手、うちに入学してほしかったと思うこともあるのでしょうか。

早稲田・森田 早稲田はFWが課題だと思いますが、代表歴のあるFWの選手は明治に多く行ってしまうな、と感じることはあります。今年、花園を見て良い選手だなと思っていた選手も、明治に入ってしまいました(笑)。

帝京・臼井 LOやFLで活躍する、東海大仰星の春名海輝選手に期待しています。昨年の夏の全国7人制大会で活躍していて、運動量やスピードもある。花園での優勝経験もあります。青木選手たちと強いFWを作ってほしいです。

明治・豊澤 未知数なところではありますが、PR朝島燎夏選手に注目しています。出身の正則高校は都心の学校で、グラウンドも広くない。高校からラグビー歴も3年ということで、スター選手が集まる明治の中ではすごく珍しいです。一度、キャンパスで見かけましたが、かなり大きかった(笑)。183㌢、113㌔とサイズもあるので、ポテンシャルは高いと思います。

早稲田・森田 東海大仰星のCTB野中健吾選手は、長田選手が抜けた穴を埋めてくれると期待しています。同じ仰星出身で戦術理解度も高いと思いますし、同じくらいサイズ(180㌢、94㌔)。こないだのジュニアの試合でも良い突破を見せていたし、プレースキッカーも任されていました。

――ジュニアの試合までしっかりと取材されているのですね。

早稲田・谷口 昨年からC、D戦も取材しようと話していました。ラグビー班のチーフをしていた先輩がAチームだけにスポットを当てるのではなく、CやDチームにいる選手がアカクロを掴む過程を取り上げるべきだと。昨年はコロナでできませんでしたが、今年からできるようになりました。4月24日の白鴎大との試合では、1年生が多く出ていました。FB山下一吹選手(早稲田実)は先発でトライも決めていた。一浪して入学した小澤ジョージィ選手(流経大柏)も出場していました。

前年花園の優勝メンバー。東海大仰星のLO/FL春名海輝は帝京大へ(撮影:宮原和也)

――関東大学春季交流大会が始まっています。最後に、それぞれ大会で注目しているポイントを教えてください。

明治・牛嶋 春は今まで出ていなかった選手が出る機会でもあるので、その声を聞きたいです。また対抗戦や大学選手権を戦う中で、春のこの試合がターニングポイントだった、となる試合があると思います。この試合がそうだったと、書ける準備をしていきます。

帝京・臼井 監督が変わったシーズンになるので、秋に向けてどういう采配をしていくのか注目したいです。また9連覇した後は早明になかなか勝つことができませんでしたが、昨年は6月に明治に勝ったことが転換点になったと感じています。そういう意味でも春の試合は大事です。

早稲田・森田 今年は佐藤選手がHOにいったり、川﨑(太雅)選手がHOからPR1になったりと、ポジション変更も多い。春を通してどうハマっていくのかがカギになると思っています。今年こそは「荒ぶる」を達成してほしいです。

第11回関東大学春季交流大会Aグループの全試合とBグループの注目試合を
J SPORTSオンデマンドでLIVE中心に配信中!
詳しくはコチラ↓
https://jod.jsports.co.jp/rugby/college_kantoshunki

帝京スポーツ新聞部のTwitter▶https://twitter.com/teikyo_sports
明大スポーツ新聞部のHP▶https://meisupo.net/
早稲田スポーツ新聞会のHP▶http://wasedasports.com/

座談会に参加していただいた5人(撮影:長岡洋幸)