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よく喋り。よく走る。小野晃征の幼馴染、申東源[宗像サニックスブルース]は、こんな人。

2022.04.22

35歳。まだまだ走る。(撮影/松本かおり)※この記事は、宗像サニックスのHPにすでに掲載されたものを、再編集しました。



 屈強なスクラメイジャーではない。しかし、よく走る。
 宗像サニックスブルースの歴史の中にはそんなスタイルのフロントローがたくさんいて、ボールがよく動くスタイルのラグビーを実現させてきた。

 申東源(しん・どんうぉん)は、その一人だ。
 2008年に入団。途中、2013年からサントリー、近鉄で2季に渡ってプレーし、ブルースに復帰(2015年)。35歳になったいまも走り続けている。
 韓国代表の経験もある。

 今季はチームの初試合となった中国電力戦(第2節)に3番で先発するも、その試合中にケガで交代。
 以後、復帰を目指してトレーニングを続けた。

 復帰戦は、4月3日にホストスタジアム、グローバルアリーナでおこなわれた清水建設江東ブルーシャークス戦となった。
 多くのサポーターが訪れた一戦に3番を背負って出場。後半12分まで奮闘した。

 ほとんどのスクラムを安定させた。トリッキーなキックでスタンドを沸かせるシーンもあった。
 交代した後、味方のシンビンにより後半40分に再びピッチへ。ラストシーンのスクラムにも入り、勝利のホイッスルをピッチの上で聞いた。

 春が近づくとともに「調子が上がってきた」と笑顔を見せる。陽気な性格。練習でもよく声を出す。

「プレーが変わってきました。若い時はスクラムより、走りたい、走りたい、という感じでした。いまはセットプレーの重要性を考えるようになり、自信も出てきました。スクラムのおもしろさが分かってきました」

 FW最年長になった。チームの中での立ち位置も変わった。周囲に影響を与える存在だ。
 ただ、後輩たちに手取り足取り教えることはしない。自分の姿を見て、感じてほしい。

「僕は有名な外国出身の選手たちとは違います。凄くない。頑張って練習をして、上手になって、試合に出る。努力が必要です。若い人たちには、その姿を見せるのが大事だと思っています」

 チームのことも深く知る。
 勝利を重ねたシーズンでは笑い、負けが混んだ年は唇を噛んだ。

「いろんなシーズンがありました。でも、ブルースのスタイルは変わらない。それをやり切れたときは、気持ちいいし、楽しいです。勝てることも多いし、もし勝てなくても、充実を感じます」

 自分たちのスタイルを貫けないシーズンは、結果もよくない。そして、スッキリしない。

 ニックネームはドンチャン。あるいはダニエル。気さくな性格で誰とでも仲良くなる。
 韓国・ソウル生まれ。10歳になる前に家族とともにニュージーランドに移住した。

 クライストチャーチに暮らし、小野晃征(トップリーグ2021までブルースでプレー)とはエイボンヘッド・プライマリースクール(小学校)に通っていた10歳からの友だちだ。

 小野とはクライストチャーチ・ボーイズ高でも、ともに楕円球を追った仲。申の来日のきっかけも、友が作ってくれた。

 2007年からブルースでプレーした小野が1年目のシーズンを終えてクライストチャーチに戻ってきた時だった。

「日本でラグビーしない? 晃征が、そう言ってくれました。それで、自分のプレーをチームの方に見てもらい、入団が決まりました(当時、ハイスクール・オールドボーイズクラブでプレーしていた)」

 3年間、カンタベリー大学で弁護士になる勉強をしていた。
 しかし、大好きなラグビーに打ち込める生活を選んだ。

「弁護士の勉強は、始めてから10年で終わらないといけないので、3年分はさよならになっちゃいました」と笑う。
「ラグビーが仕事になる。楽しみで、楽しみで」

 来日して14年が経った。韓国(9年)やニュージーランド(11年)で過ごした時間より長くなった。「もう自分が何人か分からない!」と笑う。
「都合が悪くなれば、僕は韓国人なのでよく分からないとか、ニュージーランドで育ったので、とか言ってごまかしています」

 国境に関係なく、どこにいても多くの友人ができるのは、積極的に、誰とでもコミュニケーションをとれるからだ。
 その能力はFWのユニットプレーや、チームマンとしての存在感を放つ日々の中でも発揮される。

 3月30日、チームは「5月末で活動を終える」と発表した。
 しかし申は、今季途中、「毎試合、これが最後、という気持ちでプレーしているから、(チームの未来が)どうなっても自分の気持ちは変わらない」と話していた。

 昨季シーズン前にアキレス腱を断裂も、必死のリハビリを経て終盤の2試合でピッチへ。その時も、同様の覚悟があった。

「ブルースらしいラグビーをやり切りたい」
 グローバルアリーナでのブルーシャークス戦は、その言葉通りの戦いだった。
 今季の残り時間を精一杯過ごす。
 力の限り走り回る。

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