ラグビーリパブリック

イーグルスは4強キープも「課題見つめる」。シャイニングアークスは最終年度に受難。

2022.04.22

4月15日に対戦したシャイニングアークス(青)とイーグルス(撮影:松本かおり)


 電飾にDJ。航空会社が演出に携わる「非日常的」な秩父宮ラグビー場で見られたのは、おなじみの高質なフィジカルバトルだった。

 4月15日の夜は雨が降る。パスの回数を増やしづらい条件を、ビジター扱いの横浜キヤノンイーグルスが味方につけた。

 11位のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安を、肉弾戦とエリアゲームでほぼ黙らせる。

 14-5で終えた前半に確たる地力を示し、今度のリーグワン・ディビジョン1の第13節を35-5と支配。3トライ差以上をつけてのボーナスポイントももぎ取った。

 まずは序盤のがまん比べ。自陣ゴール前左で相手のモールを壊し、次のスクラムを押して反則を誘う。いったんスリッピーなボールを相手に譲るが、対するSOのオテレ・ブラックがハーフ線付近で放ったキックパスを取り返す。左端で対峙するイーグルスのWTB、松井千士が捕球したのだ。

 松井は、前がかりになったシャイニングアークスの面々を振り切る。先制した。7-0。

 続く13分頃にも、イーグルスは自陣ゴール前で守る。耐える。接点へ2番目に入る選手の鋭さ、速さで、攻めるシャイニングアークスを上回る。

 後にプレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞のPR、五十嵐優がジャッカルを決め、ノット・リリース・ザ・ボールの反則を奪う。そこまでの過程で、LOのコリー・ヒルやFLのコーバス・ファンダイクも相手走者を羽交い絞めにしていた。

 肉弾戦の実相を、五十嵐は「味方がいいタックルをしてくれていました。チャンスがあれば(攻守逆転を)狙っていこうと思っていました。雨なので(攻撃側の)ボールがスリップする分、ブレイクダウンで(の球に指は)かけやすかった」。シャイニングアークスが接点への入り方に微修正を加えた中盤以降も、防御ラインの横幅を保って圧をかけた。

 後半3分にトライを決めたアマナキ・レレイ・マフィも、味方FWのタフさをたたえた。

「シャイニングアークスさんはいいディフェンスをしていて、ブレイクダウンでもいい圧力をかけるチーム。それと同じことをこちらからもやろうと、今週の準備段階から話していました。私自身、(スクラムで負荷がかかる)PRの選手がブレイクダウンのボールに絡むのが大好きです。ここ何週間か、ブレイクダウンで奮闘している選手たちをほめて欲しいです。(以下、日本語で)素晴らしいと思います」

 モールも光った。防御時のラインアウトもよく奪ったヒルらは、自軍ラインアウトを捕るや固まる。捕球役を後ろで支える面子が壁役となり、向こうに妨害する隙を与えない。

 その壁役を先頭に進みながら、タッチライン側の守りが手薄となればそちらへ回旋する。後半10分の事実上のだめ押し点は、塊を回して取った。ここまでで28-5。

「試合のなかで、モールで前に出られていました。この(雨の)コンディションもあり、ラインアウトのコーラー(サインの伝達役)とも話して多く使いました。それがいい方向にいった」

 手応えを語るのは、HOの庭井祐輔ゲーム主将。こうも言葉を選ぶ。

「もっとクリアに押していかなきゃいけない、とも思いました。相手がいろんなことをしてくるので、それにも対応しないといけないな、とも」

 25分頃には効果的なモールをビデオ判定で繰り返しチェックされ、「オブストラクション(妨害行為)」を取られた。捕球役を支えていた選手がモールを組む前に前方に回り込み、攻防の邪魔をしたという趣旨か。

 イーグルス陣営は自軍側の見解を述べたうえで、「そこの部分は、悲観していないです」。ひとまず水に流す。いまは、クラブ史上初の4強入りを目指す過程にある。指揮官は先を見据える。

「(残った試合でぶつかる)ワイルドナイツ、スティーラーズ、グリーンロケッツ。この3つにしっかりしたゲームをしないといけない。次への課題を見つめて、来週から準備したいです。流れを引き寄せる時に、個人、個人がスイッチを入れないと。アタック、ディフェンスの両方で、インディビジュアル(個人)のクオリティで勝てる選手になっていかなきゃいけないと思います」

 ここでの「ワイルドナイツ」とは、埼玉パナソニックワイルドナイツ。イーグルスが第3節で3-27と敗れた相手だ。

 実はシャイニングアークスは、熊谷ラグビー場での前節でワイルドナイツに24-31と応戦。向こうが規律に課題を抱えるなか、前半は10-0とリードできていた。

 チームの復調ぶりさえ匂わせていたが、いざイーグルス戦を迎えればロブ・ペニー監督いわく「ゲームの立ち上がりはがっかり。一貫性のないパフォーマンスが続く今季、先週、いい試合をして今週、期待して入ったなか、イーグルスのほうがいい試合をした」。ワイルドナイツ戦で先発してこの日途中出場の元スコットランド代表主将、SH兼SOのグレイグ・レイドローは、こう補足する。

「序盤で自信を失い、イーグルスにペナルティを与え続け、勝つ可能性をどんどんつぶしてしまった。一貫性を持つために重要なのは、基礎的な部分を本当に突き詰め、うまくやっていくことです。(例えば)ひとつひとつのコンタクトで負けていては球出しも遅れ、アタックをするのが難しくなる。どういった部分が欠けていたのか、それがなぜだったのかを突き詰め、前に進むしかない」

 チームは今季限りでNTTドコモレッドハリケーンズ大阪と統合される。現場は直近の試合と対峙するが、オフ・ザ・フィールドでは総じて「先」への取り組みが重なっているような。移籍や契約の見直しを必要とする選手へ個別で対応したり、人脈を利して有望な高校生選手をスタンドに招いたり。

 ペニー監督は言う。

「内部でもかなりプレッシャーがかかっている。チームマネジメントスタッフ、選手にとってはきつい状況だと思います。自分は年を取って白髪も増えてきて、『こういうこともある』と受け入れやすくなっていますが」

 ちなみに敗軍の将もまた、イーグルス陣営と同じように笛について言及。トライシーンにまつわるいくつかの判定を総合し、こう漏らす。

「レフリングでの一貫性が(試合に)影響したと思います」

 いずれにせよ、雨をかぶって試合を見るバックスタンドのファンにとって、場内にアナウンスの流れないビデオ判定ほどつらい非日常はない。

 まず、次節が開かれる各地の試合会場は好天に恵まれたい。