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急上昇イーグルスで奮闘の「ライザーズ」。天野寿紀は「どの立場でも100パーセント」。

2022.04.15

経験豊富なイーグルスの天野寿紀。写真は今季開幕節のグリーンロケッツ戦から(Photo: Getty Images)


 控え組は「ライザーズ」。クラブ史上初の国内4強入りに近づく横浜キヤノンイーグルスにあって、31歳の天野寿紀はそのグループの貢献度を知る。

「どれだけいい選手がいても、チームの代表として試合に出られるのは(リザーブを含めて)23人。それは、どこのチームでも変わりません。僕の考えですが、チームにおける役割は全員にある。ライザーズのメンバーで言えば、(次に対戦する)相手のアタックをクオリティ高くやるとか、チームをサポートするとか…。タフな環境に置かれているけど、そういう時こそやるべきことを明確にしてやることが自分の成長、チームの成長につながる。そういうマインドでいます」

 ウイルス禍にあって練習試合が組みづらいなか、公式戦に出られないメンバーは全体練習に心血を注ぐ。主力組の相手役として、タフに圧をかける。

 その熱気が、数年前よりも高まっているのでは。

 チーム内外からのかような指摘に、「そういう声があるなら、そうかもしれない」と天野はうなずく。

 自身は4月で入部10年目に突入していて、過去には低迷期も経験している。レギュラー組と「ライザーズ」を行き来するいま、組織の雰囲気をこう見ていた。

「若い選手はモチベーションが低くなって目標を見失い、練習の質が下がる…ということも(過去には)あったかもしれないです。僕がその立場になればわかる部分もあるので。ただ、いまはどの立場の選手も練習に向けて100パーセントの準備している。一体感があります。その理由が何なのかは自分たちではよくわからないですが…。とにかく、ハードワークしてきた結果じゃないですかね」

 昨季就任の沢木敬介監督のもと、チームの練習強度は様変わり。総攻撃を成立させるための技術と体力が涵養(かんよう)されてきた。「一体感」を生んだかもしれぬ「ハードワーク」の積み重ねについて、天野はこうも続ける。

「自分たちがハードワークしてこられていることも信じているし、それが結果につながってきて、さらに自信がついてきて…。その連続だと思う。目の前のことを必死にやってきた結果です」

 帝京大では、大学選手権9連覇のうちの4連覇までを在学生として経験。イーグルスでは5年目の2017年度、社員からプロへ転向した。

 現体制下では、グラウンド外でもある役目を授かっているような。

 元日本代表コーチングコーディネーターの指揮官が毎週、全選手とおこなう個別面談で、「チーム、どう?」と聞かれる。グラウンドレベル、ロッカールームで感じた空気を伝える流れで、その時々の自分たちの行動規範を紡いでゆく。

 沢木は現・東京サントリーサンゴリアスの出身。古巣や日本代表では、いまのイングランド代表ヘッドコーチ、エディー・ジョーンズとともに働いてきた。その世界的名将のジョーンズも、選手との会話でチーム状態を把握、改善する向きがあった。

 サンゴリアスの田中澄憲ゼネラルマネージャーは、同部のベテラン選手だったころにジョーンズに師事。定期的に話し合いをおこない、自身が口にした言葉をメモに記されていたこともあったと振り返る。

 沢木と話す天野はこうだ。

「チームに負けが込んでいて、沢木さんがよく言うような『昔のイーグルスに戻る』『ひとつのミスに一喜一憂する』ことが起きた時は、『なぜそうなるのかなぁ…』となることもありました。基本的には、僕が僕の見える範囲でのチームの雰囲気を敬介さんに伝え、もっとよくするためにはどうしたらいいかを話します」

 沢木が「ライザーズで何かできないか」と口にした延長で、新たな試みも生まれたようだ。

 2019年度同大主将の山本雄貴が中心となり、モチベーションビデオを作る。練習や試合でのプレー動画や写真に音楽をつけ、公式戦前の出場選手に見せる。天野は笑う。

「僕がメンバーに入った時にあれを見ると、すごく心に響くものがあるし、出られないライザーズのために頑張ろうとも思える」

 天野と同じSHのポジションでは、今季新加入で元20歳以下日本代表の山菅一史が多くの出番をつかんでいる。そのほかには昨年に日本代表となった荒井康植、一時離脱も復帰を果たした松山光秀がいる。それぞれ24歳、28歳、26歳。さらに来季は、南アフリカ代表のファフ・デクラークを迎えるのではと伝えられる。

 厳しい競争のもと、チーム有数のムードメーカーは「自分でコントロールできないことは、もう考えない。いまを全力で生きて、楽しむ」。態度を一貫させる。

「コロナで世界の状況も変わっていますし、(自身も)あと何年ラグビーできるかもわからない。自分の課題、ストロングポイントを明確にして、毎週のトレーニングをやっていく。試合のチャンスもらえる、もらえないにかかわらず、ハードワークしていきますよ」

 取材に応じた3日後の4月9日、大阪・万博記念競技場で赤の21番をまとう。リーグワン第12節で、4試合ぶりの主力入りを叶える。

 後半33分から出場し、第5節(神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場)で21-50と敗れたクボタスピアーズ船橋・東京ベイを30-21で下した。

 続く15日の第13節でもリザーブに入り、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安に挑む。

「どの立場」になっても「100パーセント」の力を出す。

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