序盤から1対1で、接点で圧力を受け続けた。しかし、時間を追うごとに点差をつけられた。要所でキックを用い、防御の切れ目に突破役を走らせ、結果的には42-3と安全運転ができた。
東京サントリーサンゴリアスは4月9日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でリーグワン・ディビジョン1の第12節に臨む。12チーム中10位だったNTTドコモレッドハリケーンズ大阪を下し、11勝1敗で首位キープである。
「前半は風下スタートで、自分たちのミスも重なって、少し難しい展開になったと思います。ただ80分を通してエリアを取るところ、ボールを持ってアタックすることのバランスが修正できて…いや、修正というよりもかなり強い風のなかで、後半、風上に立って、シンプルにエリアをとれるようになった。修正というか、必然的にキックを蹴れるようになった。そこでスコア的には、いい形で終われたかなと思います」
総括したのは齋藤直人。24歳のSHだ。
今年1月からのリーグワンを、日本代表デビュー以降初めて挑む国内リーグとする。かねて定評のある球さばきのスピード、パスの精度に加え、50:22ルールに沿ってチャンスを広げるボックスキックでも爪痕を残す。
自身の5つ上で、日本代表でも定位置を争う流大前主将と競争する。「もちろん(先発で試合に)出たいですけど、自分にフォーカスして準備はできているかなと。いつチャンスが来てもいいように、いい準備ができている」と、今度のゲームで5度目の先発を果たした。
ここまでで成長した点を聞かれれば、内なる進化を言葉に変えた。
「少し、プレー中に余裕ができたとは思っています。自分では。特にアタック時に去年まで(パスを)さばくことばかりにフォーカスしていたんですが、いまはラック(接点)とラックの間を走りながらいろんな場所を見たり、いろんな情報を仕入れながら、キック、ラン、パスのオプションを幅広く選択できるようになったかなと思います」
この午後は激しいプレッシャーを前に「少し焦っちゃうところがあった」と認めつつ、さらに内省した。
「去年までだったら、いろんなところを見るということにすらも気づけていなかったんですけど、きょうは焦りながらでもそこ(観察と情報収集)にフォーカスできたというか…。それができていたか、できていなかったかは別として、それが必要だと考えながらプレーはできたので、その意味では成長していると思います」
さかのぼって第4節では、ゲーム主将も任された。
1月30日、東京・秩父宮ラグビー場。開幕時からのレギュラー格が多く抜けていたうえ、味方のレッドカードで約45分を14人で戦うこととなった。それでも、リコーブラックラムズ東京に36-33と勝利。その翌日、ゲームまでの準備を踏まえてかように振り返ったものだ。
「いまはなんとかやりきれた…という思いだけですが、今後、同じ状況で主将をやらせてもらう時には、今回の1週間の経験が活きてくるのではないかと思います。1週間を通してどうチームをドライブするか。どんなメッセージを選んだら伝わりやすいか。いまはメッセージ多すぎるからしゃべんないでおこう、とか…。いままではあまり、そういうふうに考えたことがなかったので…」
桐蔭学園、早大でも主将を経験も、国内トップの舞台で多国籍のチームをまとめるのには違った難しさがあったか。インサイドCTBの中村亮土主将の名を挙げ、こう続けた。
「主将って、大変なんだな、と思いました。なので、(主将を担ったのは)ほんの1週間ですけど、亮土さんが(戦列に)戻ってきた時に少しは支えられる部分が生まれるのかな、と思います」
攻撃の起点として、若きリーダーとして、その時々の体験を成長につなげる経験へと置き換えている。