各大学にとっては新チームで迎える最初の緊張感ある公式戦の場だ。ファンにすれば、代替わりした各校の現状と今後の展望を把握する絶好の機会でもある。
関東大学対抗戦と関東大学リーグ戦からそれぞれ9校が参加し、6チームずつ3つのグループに分かれて総当たりのリーグ戦を行う恒例の「第11回関東大学春季交流大会」が、今年も4月から6月にかけて開催される。昨シーズンの順位をもとにカテゴライズされたチームが対抗戦とリーグ戦の枠をまたいで激突する春の戦いは、秋のリーグ戦とは違った見どころや魅力でいっぱいだ。ここでは上位グループを中心に、注目校のチーム状況や今シーズンの要チェック選手を紹介してみたい。
相馬新監督体制で連覇に挑む帝京大学。明治大学は新星の台頭が楽しみ
最上位カテゴリーのAグループは、昨季の大学選手権王者である帝京大学、同準優勝の明治大学を筆頭に、そうそうたる顔ぶれがそろった。中でも最注目の存在は、選手権連覇がかかる帝京大学だ。
チームは 過去26年に渡って指揮を執り、選手権9連覇の偉業を成し遂げるなど輝かしい実績を残してきた岩出雅之監督が昨シーズンをもって退任。同氏が監督に就任した1996年度の1年生で、一昨年までパナソニック ワイルドナイツのヘッドコーチを務めた元日本代表の相馬朋和氏が後任に指名された。偉大な恩師のあとで優勝チームを引き継ぐ重圧は相当なものだろうが、国内屈指の強豪チームで積み重ねてきた指導経験を生かして、チームをさらなる高みへと導くことが期待されている。
勝利への意欲を前面に押し出しチームを4シーズンぶりの優勝に導いたPR細木康太郎主将らが卒業したものの、今年も戦力はまちがいなく学生トップクラスだ。キャプテンを務めるのは高校時代に主将として大阪桐蔭を花園初優勝に導いたCTB松山千大で、SO高本幹也副将や1学年下のHO江良颯、NO8奥井章仁ら当時からのチームメイトが脇を固める。昨季ルーキーながら大活躍を見せたLO本橋拓馬やFL青木恵斗が、2年生になってどのように成長を遂げるかも注目されるところだろう。
3季ぶりの覇権奪回を期す明治大学も、帝京大に匹敵する潜在力を秘めた存在だ。昨シーズンの大学選手権決勝で先発した15人からSH飯沼蓮主将、FB雲山弘貴ら7人が卒業したが、どのポジションにも高校時代から全国レベルで実績を残してきた大器、逸材がひしめく。激しいレギュラー争いを勝ち抜いて新星が現れる楽しみは、大学ラグビー随一といえるかもしれない。 新キャプテンに就任したのは、学生でただひとりセブンズ日本代表に選出されて昨夏の東京オリンピックに出場したWTB石田吉平。167センチ、75キロと体格は小柄だが、切れ味抜群のフットワークと並外れたボディバランスを有し、積極的にボールに絡んではチャンスメークからフィニッシュまでこなす。昨シーズンにブレイクしたSO伊藤耕太郎との息の合ったコンビネーションは必見だ。また4月10日の東日本大学セブンズでさっそくデビューを飾ったWTB山村和也などルーキーにも力のある選手が多く、春からチャンスをつかむ可能性は十分ある。
上位2強を追う東海、早稲田。日大は菊谷新HCのもとでさらなる飛躍期す
昨季のリーグ戦王者で選手権4強の東海大学は、主軸が多数卒業し大幅にメンバーが入れ替わった。ただ、地道に鍛錬を重ねて力を積み上げていく文化が定着しているだけに、この春季大会でゲームを経験するごとにチーム力を伸ばしていくだろう。キャプテンを務めるのは、体を張った頑健な攻守で貢献する桐蔭学園出身のCTB伊藤峻祐。1年時から司令塔として大舞台で非凡な才能を発揮してきたSO武藤ゆらぎには、多彩なスキルを駆使したゲームメイクでフレッシュな布陣をリードすることが期待される。 昨季対抗戦2位の早稲田大学も、上位2校に迫るだけのベースを備えた強豪だ。先頭に立つのは、1年時の大学選手権優勝をフィールド上で体感しているFL相良昌彦。早稲田らしいひたむきさとゲームセンスを兼ね備えたバックローワーで、主軸が多く抜けたFWを牽引する重責を背負う。BK陣はSH宮尾昌典、ユーティリティバックスの伊藤大祐など全国でもナンバーワンといえる戦力を誇るだけに、FWの奮闘が上位進出のカギとなるだろう。
近年着実に成績を伸ばしてきた日本大学は、日本代表のキャプテンとして2011年のラグビーワールドカップに出場した菊谷崇氏を新ヘッドコーチに迎えて2022年度のスタートを切った。同氏は選手の主体性を重視したチームづくりをテーマに掲げており、あと一歩でトップ4に届かなかった昨シーズンからどのようにクラブを変えていくかが注目を浴びそうだ。戦力面では下級生時から主軸としてアタックをリードしてきたSO饒平名悠斗、WTB水間夢翔、FB普久原琉の4年生トリオが、大きな役割を担う。 前年度関東リーグ戦3位の大東文化大学にとっては、この春季大会は貴重なチャレンジの機会になるだろう。昨季は鋭く前に出るディフェンスで流通経済大学、法政大学に競り勝ち、浮上の兆しを感じさせた。FL吉瀬航汰、FB青木拓己の共同主将体制のもと、強豪校相手の厳しいゲーム経験をチーム力向上へとつなげていきたい。
Bグループも楽しみなカード続々。実戦経験を通しての成長に期待
昨季対抗戦およびリーグ戦の4〜6位の6チームで争われるBグループも、興味深いカードが並ぶ。大会のオープニングマッチとなるはずだった4月3日の関東学院大学-慶應義塾大学戦は、部員に新型コロナウイルス陽性者が確認された慶應義塾大学の辞退により残念ながら中止となったが、6校はいずれも秋の公式戦で上位に食い込む可能性を備えた実力者たちだ。それぞれに将来性ある1年生も入部しており、チェックしておきたいゲームが続くグループとなった。
昨季対抗戦4位の慶應義塾大学は、圧倒的な存在だったHO原田衛、FL山本凱の抜けた穴をいかに埋めるかが、2022年度の大きなテーマとなるだろう。ただそれ以外のポジションではLO/FL今野勇久主将をはじめ前年のレギュラーが数多く残っており、総合力で前年を上回るチームに仕上がる素地は十分ある。
昨季13大会ぶりに大学選手権出場を果たした日本体育大学も、髙橋泰地前主将、万能フットボーラーのハラトア・ヴァイレアという主軸2人の後継を育てることが、今シーズンの焦点となりそう。昨季対抗戦6位の筑波大は、FL茨木颯、SO楢本幹志朗(ともに東福岡)、WTB小池陽翔(中部大春日丘)ら高校時代にトップレベルの実績を残してきた新人たちのプレーぶりが注目される。
昨季4位と躍進を遂げた関東学院大学、同5位から復権を期す流通経済大学、要所となるポジションに逸材を擁する法政大学のリーグ戦勢3校も、いずれも勢いに乗れば楽しみなチームだ。近年は選手権で対抗戦勢の優位が続いているが、この春季大会はそうした実力者たちと公式戦の緊張感の中で体を当てられる貴重な機会となる。ここでの経験を通じて、それぞれがステップアップした姿を見せてくれることを期待したい。
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