4月2日、晴天のアムステルダムに欧州在住の日本人ラガーが集った。
3年ぶりに開催されたサクラ・チューリップ杯のためだ。
アムステルダムに住む日系ラグビーチーム、アムステルダムジャパニーズ(通称アムジャパ)が主催するラグビーイベント。日本の花といえば桜、そしてオランダの花といえばチューリップ。アムステルダムに花が咲く季節になると、アムジャパは地元チームと親善試合を行い日蘭の交流を深める。
しかしながら、新型コロナウイルスの影響でこの大会は2年開催できなかった。
「2022年の欧州ラグビーイベントはアムステルダムからスタートする」
意を決したのは、アムジャパのメンバーたちだ。
日本よりいち早く新型コロナウイルス関連の規制が緩和された欧州では国外への渡航も容易になり、3年ぶり12回目の開催に踏み切った。
だが、新型コロナウイルスはチームにも大きな影響を残しており、チームの中心プレーヤーとなる日本人駐在員が減少。アムジャパ単体でのプレーは絶望的だった。
そこでアムジャパは、欧州で活動する、ロンドン、パリ、デュッセルドルフの日系ラグビーチームに声をかけた。当日はアムジャパの熱い想いに共感した15名の欧州在住日本人ラガーがアムステルダムに集結した。
その顔ぶれは様々だ。
海外駐在員、元高校日本代表、留学生など20代から50代がサクラ色のジャージを身に纏い、1日限りの草ラグビー界の「欧州ブレイブ・ブロッサムズ」が誕生した。
はじめまして、こんにちは、の次にはチームメイトとしてピッチへ入る。名前も覚え切る前にキックオフ。
しかし、試合が進むにつれて深まる連携と、連合軍のチーム力。
親善試合は28-12で「欧州ブレイブ・ブロッサムズ」が前大会に続き勝利した。
日本でいう不惑世代を中心に構成されたアムステルダムの地元チームを相手に、日本人ラガーの若手が躍動。試合当日のメンバー集めが勝負の決め手となる草ラグビー界の掟を理解し、欧州の仲間たちを集めたネットワーク力の勝利といっても過言ではない。
試合後は両者の健闘とさらなる日蘭の発展を祈り、恒例のアフターマッチファンクションで賑わった。会場となったアムステルダム郊外のラグビークラブハウスでは日本の国旗が高々と掲げられていた。
「欧州ラガーは、3月のアムステルダムに始まり、6月のデュッセルドルフ、11月のロンドン、パリと各チームがイベントを主催。2022年はどうしてもアムジャパからスタートしたかった」
数少ない現役アムジャパメンバーは、熱く語った。
アムジャパOBの一人に、この日ロンドンからやってきた若者の父親と一緒にプレーしたことがある人がいた。このOBはその後ロンドンを訪れたこともあり、かつて一緒にプレーした父親の息子である少年と楽しい時間を共にしたという。
その少年が、立派な男になってアムステルダムのグランドにやってきた。OB氏はその若者の逞しいプレーぶりを見て、目頭が熱くなったそうだ。
アムジャパにはもう一つの大きな目標がある。
「世界で活動しているジャパニーズチームに声をかけ、大陸対抗ジャパニーズ大会を開催したい。目標は2024年夏。もちろん第一回は是非アムステルダムで!」
長いこと祖国を離れて暮らしながらも、日本で始めたラグビーというスポーツからは離れられない。そんな日系一世は、世界中にたくさんいるのではないか。