後半5分、ほぼ勝負の趨勢は決まった。
報徳学園が5本目のトライを挙げてGも成功、スコアは報徳学園31-7桐蔭学園に。厚いディフェンス、FWのボールキープ力、そしてBKに複数のランナーを擁するアタックの決定力から、報徳学園の決勝進出が濃厚になった瞬間だった。
3月29日、熊谷ラグビー場で全国高校選抜大会の準決勝が行われ、報徳学園が桐蔭学園を36-21で破った。報徳学園は同大会で初めての決勝進出となった。
「きょうはFWががんばってくれた。FWのおかげで得点できていた」とは、同世代随一のスピードランナー、海老澤琥珀。この日もWTBとしてラインの外側で何度も突破場面を作った。前半25分には12-7と勝ち越すトライを挙げるなど、チームを象徴するプレーヤーだ。
報徳学園はキックオフから攻守にフルスロットル。攻めてはSH村田大和、SO伊藤利江人のタクトで次々とボールを動かし、相手ディフェンスに深く食い込むランと、そこからの素早いボール出しで相手を押し下げる、切り崩す。接点の強さ、粘りではここまで敵なしだった桐蔭学園さえも受けに回らせた。前半8分に桐蔭学園がゴール前のラック連取でトライを挙げ(G成功)7点を奪った後は、報徳学園が連続トライ。前半13分、25分、28分、33分と4トライを挙げるなど前半だけで24-7とたたみかけた。
「FWは自信があった」と植浦慎仁キャプテン。自らFLとしてボール奪取の最前線で戦った。相手ディフェンスに捕まった後に素早く次の攻撃を仕掛けられたのは、タックルされた後のボールをいち早くコントロールするよう、FW陣が力強いサポートを繰り返した成果だ。ブレイクダウンでは相手ボールを奪うシーンも連発させた報徳学園FWのフィジカルの強さ、そして運動量が圧勝を支えた。
「今年のテーマは『インパクト』。きょうはプレー面でも、試合の入りからそれを意識しました」(植浦主将)
敗れた桐蔭学園の藤原秀之監督は「これが、今のウチの立ち位置です」と淡々と試合を振り返った。FW、BKとも力を出せないまま大差をつけられた。しかし、終盤は開き直ってコンタクト場面から意地を見せて相手を押し込み、後半20分、25分とトライも奪った。底力を見せた。今後はBKラインの構成、FWプレーの精度など力をつけての巻き返しが期待される。
決勝は1日おいて、あす11時。3月29日の準決勝が不戦勝となった東福岡と、報徳学園が対戦する。報徳学園は準々決勝(3月28日)が不戦勝となっており、ともに1戦をスキップしたチーム同士だ。このプロセスの違いがどのように影響するかもキーの一つになる。