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フィジーから日本代表目指すヴァカヤリア ブラックラムズで「最善、最高」に。

2022.03.24

ブラックラムズ東京のネタニ・ヴァカヤリア。写真は2月27日のイーグルスから(撮影:松本かおり)


 かれこれ2年半はフィジーへ帰っていない。

 感染症が流行るいま、2018年に来日のネタニ・ヴァカヤリアは世田谷で部屋とクラブハウスを行き来する。家族には毎日、連絡をするという。

 故郷との距離を遠ざける感染症には、自身の職場も侵されている。所属するリコーブラックラムズ東京は、1月から参戦するジャパンラグビーリーグワンのディビジョン1でこれまで2度の不戦敗を喫している。

 特に2月19日の第6節は、試合前夜のキャンセルを受け入れた。18日の練習後、発熱した選手に陽性反応が出たためだ。ヴァカヤリアら試合に出るメンバーは、前泊先のホテルでその決定を聞いたという。

「驚きました。プレーする準備をできていたのですが…」

 もっとも、いまいるクラブには愛着がある。主力WTBとして「強いキャリー、ステップ、スピード……。期待されるパフォーマンスをするには、まだ改善点があります」と研鑽を積む日々を、このようにも語る。

「このチームからたくさんのことを学びました。家族の絆があり、コーチも選手もすごくコミュニケーションがしやすい。私が練習中、何かわからないことがあった時はコーチが向こうから来て優しく対応してくれます。私が間違った動きをしていても『ネティ、本当はこうだよ』と教えてくれるのです」

 身長180センチ、体重88キロの24歳。100メートルを10秒台で走る韋駄天が楕円球と出会ったのは、約15年前だ。ブタレヴエレメンタリースクールを経て、14歳になる学年から計5年通ったレリーンメモリアルスクール時代には20歳以下(U20)フィジー代表に選出。さらには、目下、オリンピック2連覇中の7人制フィジー代表にも名を連ねた。

「フィジーはお互いがお互いを知り合っている小さな国です。ここでナショナルチームに入ると、(周りからの)尊敬が得られます」

 若くして才能が認められたアスリートは、プロになることを目指した。くしくも、U20フィジー代表で指導していたセレマイア・バイ氏は日本でプレー経験があった。バイ氏は、同代表のオーストラリア遠征を前後して日本のエージェントへヴァカヤリアを紹介する。

 かくしてヴァカヤリアは、入部テストを経てブラックラムズ入りを決めた。21歳の誕生日を迎える前のことだ。その折の公式体重は、現在よりも4キロマイナスの「84キロ」。関係者の談話によると、実際はもっと軽かったのではと言われている。

 当初はホームシックにも陥ったが、チームが多様性を重んじていたのに助けられた。環太平洋諸国出身の同僚と仲良くなれ、特にアマト、タラウのファカタヴァ兄弟が入った2019年以降は居心地の良さを感じるようになった。

 7人制日本代表のトレーニングメンバーになったのは、ちょうどそのころのことだ。2020年は東京オリンピックの出場も目指していて、いまも、ブラックラムズファーストを誓うシーズン中以外は同代表への参加に意欲を示す。

「自分の国を離れ、違う国でプレーをしています。その国の代表になれることは、大きな達成感を覚えました。家族も誇りに思ってくれています」

 かような経緯から、15人制日本代表になる資格を有する。リーグワンでは、出場枠の上限がない「カテゴリA」に位置付けられる。2023年のワールドカップ・フランス大会を目指す15人制日本代表への思いを聞かれれば、謙虚に述べるのだった。

「僕の目標は、自分のなかでの最善の、最高の選手になることです。日本で一番いいWTBになりたい」

 昨季トップリーグで8強のブラックラムズは、グラウンド外では新卒選手の獲得、外国籍選手のカテゴリ変更へのアクション、何よりホストゲームでの催しの企画に注力。運営サイドは、2~3季後のリーグ制覇ですべてを結実させたいと目論む。

 むろん現場は、目下の戦いを制しにかかる。今年度はここまで3勝7敗(不戦勝、不戦敗を含む)。優勝争いをするクラブに惜敗した際、決して善戦を讃えないあたりに目指す位置の高さをうかがわせる。

 3月27日には東京・江東区夢の島競技場で、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安に挑む。ヴァカヤリアは第7節以来の出番を探る。

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