第10節を終え、6勝4敗のトヨタヴェルブリッツ。今季、出場メンバーでプレータイムを大きく伸ばしているのがSH福田健太だ。
入社3年目の25歳。1年目は公式戦出場ゼロ、2年目の昨季はリザーブで7分間の出場だった。
それが今季は、開幕の東京サントリーサンゴリアス戦でリザーブ出場すると、次の東芝ブレイブルーパス東京戦で初先発。以後、第9節の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦まで9番で先発した。
第10節の横浜キヤノンイーグルス戦はリザーブとして出場し、SH茂野海人共同主将と二人での起用が定着している。
「先発はチームを勝たせるように流れを作る。リザーブは点差、状況に応じてどうゲームをコントロールするか。今シーズン、どちらも経験できているのはいい機会だと思います」
2018年度の明大キャプテン。チームを22年ぶりの大学選手権優勝に導き、卒業後はトヨタ自動車に入社。
「すぐに試合に出られると自信満々で入ったら、そんなに甘い世界じゃなかった」
試合で外国人選手を止めるためのコンタクトフィットネスが足りなかった。以後、黙々と自主練習に励んだ。
「伸ばしたのは土台のところ。パス、キック、ラン…。一番は身体です。筋肉量を増やすためにそこを徹底してやりました」
大学時代は76㌔。まず83㌔まで増やして、身体を絞った。そのかたわらFL古川聖人、WTB?橋汰地ら同期が公式戦デビューを飾って活躍していた。焦りがなかったわけではない。
「メンタル的にはしんどかったですけど、腐るのは誰でもできる。“ここで腐ったら終わりだ”と自分に言い聞かせてました」
今季のプレシーズン、チャンスが巡ってきた。姫野和樹、茂野海人共同主将が日本代表でチームを空ける間、古川聖人とともにチームリーダーを任されたのだ。
「2年目までは自分のことしか考える余裕がなかったのですが、チームのことを考えると、発言もどんどんしやすくなって、プレーに余裕ができた。いい循環でした」
リーグワンでは開幕の東京S戦で交代出場。初先発となったBL東京戦では、試合を決定づけるトライのきっかけを作った。以後、試合に出ながら様々なことを吸収している。
「準備の大切さを痛感してます。BL東京戦は万全な状態で試合に臨めたのですが、試合ごとにメンバーも変わる。SHは密にコミュニケーションをとり続けるポジションなので、準備を怠らずに続けないと」
選手一人ひとり特徴は違う。ボールを早めにほしい選手なのか、少し仕掛けた後で渡した方がいいのか。SOもライオネル・クロニエとティアーン・ファルコンでは考え方もプレースタイルも違う。誰が出てもベストのパフォーマンスを引き出すのがSHの使命だ。
「埼玉WK戦も、反省はあります。でも、これだけ学べるということは、まだまだ成長できるということ。いい時間を過ごせています」
開幕前、姫野和樹共同主将が今季一番伸びた若手として、真っ先に名前を挙げたのも福田だった。
「デクラーク(南ア代表SH)みたいな選手になれる」
本人も目指すのは、強みのスピードを生かしたアタック力のあるSH。昨季のトップリーグではNTTドコモに所属していたTJペレナラのプレーを食い入るように見た。
「発想も好きですが、彼はどんな状況でもずっと笑っている。僕も経験を積んで、常に余裕を持ってプレーできる選手になりたい」
同じポジションの先輩・滑川剛人はレフリーに比重を移した。現在、チームのSHは茂野と梁正秋と3人で回している。4月には同志社大で活躍した田村魁世も加わる。
「それぞれタイプが違うので、自分の強みを伸ばしながらスタッフの信頼を勝ち取っていきたい」
トップ4入りに向け、レベルの高い争いがチームの推進力となる。