穏やかな空の下、激しさ最上級のバトルが繰り広げられた。
リーグワンの第7節の試合でいちばんの注目カード、埼玉ワイルドナイツと東京サンゴリアスの試合は予想に違わぬ好ゲームとなった。
ファイナルスコアは34-17。最終的にはホストチームのワイルドナイツが完勝するも、ファンはレベルの高い内容を最後まで楽しんだ。
チームの勝利に笑顔のロビー・ディーンズ監督は、「きょうの試合は世界のどの大会(のレベル)と比べても遜色ないものだった」と話した。
先に自分たちの時間を作ったのはサンゴリアスだった。
立ち上がりの3分にPGで先制を許すも、すぐに自分たちのテンポでゲームを進めた。
8分、ラインアウト後のモールから攻めてボールを動かすと、最後はSO田村煕がロングパスをPR石原慎太郎に通してトライ。
PGで加点した後の17分には、相手キックを受けてカウンター攻撃。WTB中野将伍がゲインした後、FL下川甲嗣がインゴールへ。17-3とリードを広げた。
サントリーの黒いジャージーが、前へ前へと出た時間帯だった。
しかしサンゴリアスの得点は、ここで終わりだった。ワイルドナイツがディフェンスを改善したからだ。
修正能力の高さは、相手がどこでも変わらない。ベンチスタートだったHO堀江翔太は、「もっとコミュニケーションを」とピッチ内に声をかけた。
「相手にしてみたら、なんで止められるんだろうと思うかもしれませんが、うちのデイフェンスはシンプルなんですよ」(堀江)
個々がそれぞれの仕事を全うする。そして、つながる。サンゴリアスから勢いを出す機会を奪った。
パナソニックの反撃は、前半20分、ラインアウトからのトライ(FLベン・ガンター)が号砲だった。ゴールキックも決まり、差を詰める。
29分にPGを決めると、38分にはラインアウト後のモールからトライ、ゴールで7点を加える。
20-17と逆転して前半を終えた。
サンゴリアスに精神的なダメージを与えたのは前半終了間際のディフェンスだった。
リスタートのキックオフからいっきに攻め込み、フェーズを重ねた相手の攻撃に対し、ワイルドナイツはしつこく、激しく守り続け。最後はFLガンターがボールを奪い返してみせた。
後半に入っても、その流れは変わらなかった。
7分、19分、31分とSO松田力也がPGを重ねて29-17。32分にはサンゴリアスの手から落ちたボールをすぐに外につなぎ、WTBマリカ・コロインベテが快走。CTBディラン・ライリーがトライを決め、ファイナルスコアを刻んだ。
サンゴリアスがだらしなかったわけではない。
ただ、野武士たちは力強かった。接点で何度もボールをもぎ取った。相手の生命戦、ブレイクダウンでのスムーズな球出しを寸断することで完全に自分たちのゲームとした。
敗れたサンゴリアスの中村亮土主将は、ワイルドナイツが「素晴らしいラグビーをした」と相手を称えた上で、規律の乱れを悔やんだ。
「ブレイクダウンでの自分たちの基準とレフリー、相手の基準がバラバラだった。自分の力量不足。コントロールできなかった」
ワイルドナイツのHO坂手淳史主将は、序盤の劣勢時に「自分たちのやるべきプレーを考え、(その後はそれを)やり切った」と振り返った。
「相手より先に動こう、と。(みんなが)チームプレーの中で、自分のプレーを出してくれた」
「天気もよかったし、ファンの皆さん(7106人)も喜んでくれたと思います」と話し、自分たちらしいゲーム展開に気持ち良さそうだった。