ラグビーリパブリック

32歳でプロ1年目。静岡ブルーレヴズの伊東力は開幕に出遅れもめげない。

2022.02.26

2月19日の横浜キヤノンイーグルス戦で今季初登場となった静岡ブルーレヴズの伊東力(撮影:大泉謙也)


 ラグビー選手の伊東力が、社員からプロに転じた。

「社員の頃は朝6時から朝練をして、そのまま時間なく会社行って。勤務地も遠かったので、午後の全体練習のためにグラウンドに戻るのは30分前と(ウォーム)アップもあまりできなかった。ずっとそれを当たり前のようにしてきたのですが、いまは練習までの準備、練習後のケアがしっかりできるようになった。それで練習の中身がよくなったと感じます」
 
 所属していたヤマハ発動機ジュピロが昨夏、法人化を経て静岡ブルーレヴズとなった。おりしも、日本の国内リーグがトップリーグからリーグワンに変わっていた。

 伊東は、生まれ変わったチームから専業化を勧められた。同年11月、決断した。

 リーグワン開幕後には32歳となったベテランの挑戦だ。

「すごく悩みました。いまさら会社員を辞めてアホちゃう? と自分でも思いました」

 こう笑みをうかべつつ、決意に至る心境を明かす。

「10年目。あと数年できるかどうかだと、自分でも感じています。家族もいたので相談しながら考えたんですが、妻も理解があって『引退後、頑張ってくれるんならいいよ』と。人生一回きりですし、このチャンスも全員がもらえるわけではないです。だからチームが新しいことにチャレンジするタイミングで、自分も、チャレンジしようかなと。以前もそうしていたんですが、それ以上に、いま、ラグビーをやれることに全力になる」

 身長173センチ、体重80キロ。関西大学Bリーグの龍谷大から2012年度にヤマハ入りし、長らくタッチライン際のWTBで主力を張った。14年度は日本選手権を制し、17年度は日本代表デビューも果たした。
 
 加速力は相変わらずだ。今季は2月19日の第6節で初先発を果たす。ホストゲーム2戦目にあたる、横浜キヤノンイーグルス戦だ。雨に降られながら、静岡・ヤマハスタジアムの芝で味方のキックを追い続けた。

 この日は18-28で敗れたが、続く第7節にも先発できる。千葉・柏の葉公園総合競技場で、NECグリーンロケッツ東葛にぶつかる。開幕前から言っていた。

「静岡を代表するという面でも、恥ずかしくない、プライドを見せられるような試合、プレー、パフォーマンスをしていかないといけないです」

 ここまで1勝5敗とする。開幕前にクラスターを発生させ、初戦は前日に辞退。以後計3試合を不戦敗で落とした。1月19日に約2週間ぶりに活動を再開させるまでは、オンラインミーティングを開くのにも各自の体調を鑑みなければならなかった。

 それでも伊東は「僕らはいつ、どんな時でも準備し、ファンの方々にいいパフォーマンスを見せるだけ」。雌伏の時間も、決して無駄にはしなかったと強調する。

「先も見えないし、今後どうなるかということも含めて不安はあったんですが…。皆が一緒に(練習が)できない時も、『5Hearts(チームのプレースタイルを表す言葉)リーダー』や大戸(裕矢主将)が中心になって個人、個人で(対戦予定の)相手の映像を分析して、フォーカスしたい点をグループLINEで共有していました。『活動停止が明けたときには〇〇を皆に意識させたいよね』『キーマンは□□』と、ラフな感じで。皆、離れてはいましたが、ひとつの方向を見てやれるだけの準備はやれたんじゃないかと思います。出遅れはしましたが、多くのスポンサーさん、ファンの方々の期待を裏切らないようにしたいです」

 新しいリーグへ、新しいチームの一員として、新しい立場で臨んでいる。過去は振り返らず、自分の、自分たちの価値を示す。

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