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初代表目指して移籍→もっとも苦しいプレシーズン。池田悠希は「成長曲線を上げたい」

2022.02.18

チームメイトのアイザック・ルーカスらと盛り上がる池田悠希(撮影:高塩 隆)


 待っているだけではいけない。ワールドカップ・フランス大会まであと2年を切っているからだ。

 少しでも早く日本代表に入って信頼関係を築くために、26歳の池田悠希は移籍を選んだ。

「僕の直近の目標は、2023年のワールドカップに出場すること。そのために今シーズン終了後に組まれるジャパンのスコッドに入りたい。そのためには環境を変えて、より自分に負荷をかけてチャレンジをしたい、成長曲線を上げたいと思いました」

 それまで3季プレーしていた現・NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安を離れ、昨年からリコーブラックラムズ東京に身を置く。

 新天地を選ぶに際し、今季からヘッドコーチとなったピーター・ヒューワットと面談。「メッセージがシンプル。いいコーチなんだろうな」と感じた。

 もともと同部に在籍し、東海大仰星高時代のチームメイトだった永井達啓、米村龍二(現在は引退)からも内部情報を聴取。果たして、サインに踏み切った。

 プロ選手として働く。

「先のことを考えずに、直近の目標に向けて後悔しない道を選ぼうと考えました」

 東海大出身。身長185センチ、体重98キロと体格に恵まれたCTBだ。バスケットボール経験者で、タックラーを引きずりながらの器用なオフロードパスに定評がある。

 今年1月からのリーグワンでも、それまでと違う色のジャージィをまとい持ち味を発揮する。

 話をした2月3日は、昨年度のトップリーグで準優勝した東京サントリーサンゴリアスに33-36と敗れて4日後。あと一歩で白星を逃したとあり、「わずかな差が、勝敗を分ける大きな差になった」と悔やむ。ただ、手応えもつかんでいた。

 昨夏からの準備期間は、選手時代をサンゴリアスで過ごしたヒューワット、やはりサンゴリアスでS&Cコーチをしてきた若井正樹ハイパフォーマンスマネージャーのもとハードワークを重ねる。

 若井は、動物のアクションに着想を得た全身運動の「ZUU」を教示。個々のプレー中の強い姿勢や機動力を磨いている。池田は「社会人1年目からいままでで、一番きついプレシーズンだったかもしれないです」とし、こう続ける。

「プレシーズンの時期は、毎週水曜のオフにも自由参加のZUUのセッションがありました。それにほとんどの選手が参加していました。(通常の)練習の間や最後にフィットネス(走り込み)があったりと、しんどい練習が続きました。だけど、誰ひとり下を向いていなかった」

 苦しいセッションに前向きに取り組むのは、大義を共有しているからだ。猛練習と並行してミーテイングを繰り返し、チーム作りに欠かせぬ資質を5つのキーワードに昇華する。

「グラティチュード(感謝)」

「チャレンジ(挑戦)」

「レジリエンス(適応力)」

「ディシプリン(規律)」

「ウイニングマインドセット(勝利への意志)」

 5つのフレーズが合わさってできた無形の「キャッスル」が、選手、スタッフの献身を促し、さらにはファンの共感を呼ぶイメージだろう。池田は続ける。

「本当にすごくいいコーチ、スタッフが揃っています。チームメイトにも一体感があって、そのなかにお互いへの厳しさもあって。切磋琢磨できると感じています」

 トップリーグ時代は入替戦出場や下部降格も経験しながら、昨季までは不成立だった2020年をはさんで4シーズン連続で8強以上というブラックラムズ。今季は第5節までの時点で不戦勝、不戦敗を含め2勝3敗としている。

 もっとも実際に戦って落とした試合は、いずれも昨季4位以上だったチームが相手で、点差は1桁台としている。

 2月19日の第6節では、こちらも前年度4強入りのクボタスピアーズ船橋・東京ベイと対峙。駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でのホストゲームに挑む。池田はこの日も定位置の13番で先発する。

「ディフェンスの精度を上げていかなければいけない。あとは。自分の強みであるフィジカリティはアピールしたい」

 今度は白星をつかむ。

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