才能を見出される。可能性を広げる。
横浜キヤノンイーグルスのサウマキ アマナキは、昨季から働き場を変えている。グラウンド端のWTBから、前線のFW第2、3列にコンバートした。力を発揮する。
身長190センチ、体重100キロの24歳。昨季のトップリーグでも公式戦計4試合でプレーし、今年1月に始まったリーグワンでも初戦から2度続けてLOで先発した。突進とタックルで存在感を示し、開幕2連勝に喜ぶ。
「ディフェンスは、やりやすいです。接点に入らずオープンサイド(広い区画)の防御の枚数を増やすのか、それとも逆側に行くのか。低いタックルをするか、高いタックルをするか。そのあたりの役割が(チーム内で)明確になっていて、あとはそれを遂行するだけでいいのです」
埼玉パナソニックワイルドナイツに初黒星を喫した第3節は欠場し、不戦勝を挟んで迎えたクボタスピアーズ船橋・東京ベイとの第5節ではリザーブからの登場で敗戦。再浮上が期待されるなか、こう展望する。
「まずはチームの目標があるので、それを達成したい。(個人的にも)昨季より成長しなくてはいけない。最後に目指すのは、ジャパンに入ることです」
転向を勧めたのは沢木敬介監督だ。日本代表のコーチングコーディネーター、サントリーの指揮官などを歴任した沢木は、最近のサウマキの働きぶりを高く評価。自軍にいるNO8で日本代表経験者のアマナキ・レレイ・マフィを「見本」とし、よりインパクトのある選手になってほしいと期待した。
「まだFWに転向して2年目。これからまだまだよくなるんじゃないですか。LOで使っていますけど、本当はバックロー(より攻守に絡むFW第3列)をやらせたい。これからはもっとボールキャリーの力強さも、ボールに絡む動き(を磨いてほしい)。ナキみたいになれればいいんじゃないですか」
力強さが欲しい。その思いは本人も同じだ。異動が決まってからいままでに、体重を「約10キロ」も増量させた。プレシーズン期の食事は1日4回。プレーの途切れる時間が極端に短いイーグルスの練習に参加しながらでも、サイズアップを果たせた。
「自分のなかでは、練習の方がきついと感じる。そこでワークレートを上げるなか、とにかく食べる!」
2016年に19歳の若さでトンガから来日。翌年には兄で5歳年上のホセアとチームメイトになる。
「トンガでは、ラグビーしかすることがなかったんです。家族にラグビーのバックグラウンドがあり、私は自然とラグビーを始めました。兄が海外に行ったことで、自分もそこで努力し、ラグビーで稼いでいきたいと思うようになりました」
アマナキが憧れるホセアは、2013年に大東大に入るや持ち前の破壊力で台頭。その才能はやがてスーパ―ラグビーでも発揮するが、長らく熱望していた日本代表入りは果たせなかった。
学生だった2016年春に候補入りも、その後に日本代表となる資格がなかったと認識する。母国にいた頃に7人制トンガ代表となっていたため、異国の代表チームに入るには高いハードルを乗り越えねばならなかった。
「俺は、トンガ代表を目指すよ」
結局、イーグルスは昨季限りで退団した兄から、弟はこう告げられた。まもなく兄はトンガ代表デビューを飾り、いまはイングランドのレスター・タイガースに在籍する。
弟の述懐。
「もともと、2人で日本のパスポートを取ろうと思っていました。ただ、兄の方が難しかったのです」
自身は日本人の妻と結婚して4年目。すでに新たな国籍を有しており、赤と白のジャージィに憧れを抱く。
「いまの日本代表は世界ランクで(トンガ代表より)上位にいて、高いレベルでプレーできます。また、日本が僕にチャンスを与えてくれて、受け入れてくれた経緯があります。ひとつの恩返しとして、日本を代表してプレーしたいと思っています」
兄の叶えられなかった願いを自らの野望とする。まずは19日以降のリーグ中盤戦を見据える。