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元日本代表ラトゥさんがNPO法人設立。「トンガ出身選手のサポートを」

2022.02.12

日本、日本ラグビーと、長く、密接に生きるラトゥ ウィリアム志南利さん。(撮影/松本かおり)



 日本のラグビー界に欠かせない存在となったトンガ王国からの留学生。その歴史は1980年、大東大に留学したホポイ・タイオネ、ノフォムリ・タウモエフォラウ氏から始まる。彼らに続いて1985年に来日、大東大−三洋電機、日本代表でNO8として活躍したのがラトゥ ウィリアム志南利さんだ。

 昨年5月、ラトゥさんが中心となって「NPO法人日本トンガ友好協会」を熊谷市に設立。2月26日に総会を開き、4月から本格的な活動をスタートさせる。
 ラトゥさんが設立を考えるきっかけとなったのは、来日する選手が増える一方で、必ずしもそのサポートが行き届いていないと感じたからだ。

「トンガから日本にラグビーで来た選手全員が、トップチームでプレーを続けられるわけではない。正式な契約書を交わさず来日し、ケガなどでプレーできなくなった後、面倒を見てもらえず困っているケースも出てきている。そういった若者たちの助けになりたいと」

 選手以外にも、トンガから日本に来ている人数は200人程度。トンガ大使館と連携して、日本におけるトンガ出身者のコミュニティを目指す。 

 NPO法人の設立は必ずしも順調ではなかった。活動に不可欠な口座開設に対応してくれる銀行探しに難航。たまたまラトゥさんが熊谷市内のある銀行に電話すると、大東大時代に対戦したことのあるラグビー部OBに話がつながった。そこで事情を説明し口座開設にこぎつけた。

 この春から本格的な活動を開始するが、今回の海底火山の噴火により、急遽、義援金口座を作り、現在はそちらが最優先事項となっている。 

 ラトゥさんは昨年10月で、パナソニックを早期退職。現在は群馬県邑楽郡大泉町にあるパソナ・パナソニック ビジネスサービス株式会社に勤務。イノベーション本部スポーツプロモーション部地域連携担当マネジャーとして、地域とスポーツの普及に携わる。

 今回のNPO法人の設立は大東大でともに来日、一昨年12月に急逝した盟友WTBワテソニ・ナモアさんの遺志を継いだものでもある。
 ナモアさんは現役引退後、群馬県邑楽町に居を構え、タグラグビーをはじめとして、邑楽町とトンガの交流に力を尽くした。邑楽町もトンガ王国との交流を積極的に推奨し、昨年3月30日にはトンガ王国のホストタウンとして国から正式に認定。6月には邑楽町、パソナ・パナソニック ビジネスサービス株式会社、NPO法人日本トンガ友好協会の三者で、地方創生に関する包括連携協定も締結された。

 昨年11月13日には、邑楽町中央公民館でトンガ王国との文化交流セレモニーが開かれ、360人が参加。トンガ王国特命全権大使のテヴィタ・スカ・マンギシさんも出席した。一昨年の同じイベントには、在りし日のナモアさんの姿もあった。ナモアさんの遺志は確かに引き継がれた。

 日本とトンガ、邑楽町とトンガとの交流を結ぶ触媒となっているラトゥさん。現在、国内でプレーするトンガ出身選手でチームを作ってチャリティマッチをすることを計画中だ。
「日本でプレーしている大学生や社会人選手をピックアップしてみたら、余裕で2チーム作れる(笑)。リーグワンが終わったら、各チームに協力してもらって、今回の海底火山噴火のチャリティマッチを開催できればと思っています」

 日本とトンガのラグビーを通した交流に、さらに力強い結びつきが生まれようとしている。

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