ラグビーリパブリック

ピンチに動じない。スピアーズ、1敗同士だったイーグルスに快勝。S東京ベイ 50-21 横浜E

2022.02.06

開始2分で左スミへ。ピーター"ラピース"ラブスカフニがトライ(撮影・櫻井ひとし)

前半は2トライずつ。後半に連続5トライで突き放したS東京ベイ(写真はNO8ファウルア・マキシ/撮影・櫻井ひとし)
ヘルウヴェと先発LOコンビを組んだルアン・ボタ(撮影・櫻井ひとし)

 不戦勝を含め3勝1敗同士。好試合の期待された対戦は、後半に流れが傾き大差に終わった。

 2月6日、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場。リーグワン・ディビジョン1の第5節があり、昨季のトップリーグで初の4強入りを果たしたクボタスピアーズ船橋・東京ベイが、同8強の横浜キヤノンイーグルスを50-21で下す。

 前半はイーグルスがアンストラクチャーからの攻めを機能させ、2トライを奪取。かたやスピアーズでは、SOのバーナード・フォーリーのペナルティーゴールを2度失敗させて足踏みの感を覗かせた。

 しかし時間を追うごとに、持てる力をスコアボードに反映させる。

 14-14と同点で迎えた前半39分頃には、イーグルスのNO8アマナキ・レレイ・マフィが速攻を仕掛けると同時にキック。スピアーズはそのボールを自陣中盤左で捕り、展開する。

 自陣10メートル線付近右で接点を作ると、SHの谷口和洋がショートサイド(狭い区画)へ仕掛ける。FBのゲラード・ファンデンヒーファーとのパス交換を重ね、ファンデンヒーファーのフィニッシュを促した。

 直後のコンバージョン成功で、スピアーズは21-14とリードしてハーフタイムを迎えた。

 後半は蹴り合いでも魅せる。10分にHOのマルコム・マークスがトライラインを割ったきっかけは、その約4分前にCTBの立川理道主将が放ったキックだ。

 ハーフ線を境に陣地を取り合う流れのなか、イーグルスのSOの田村優主将がスピアーズの防御の裏へグラバーキックを転がす。

 しかし対するフォーリーが、首尾よく戻って球を抑える。自陣10メートル線付近右中間でパスを放つと、受け手の立川が迷わず前方へ足を振った。ボールは敵陣22メートルエリアへ弾み、タッチラインの外へ出た。

 スピアーズは現行ルールに伴い、自軍ボールのラインアウトを獲得する。身長205㌢のLO、ルアン・ボタら、巨漢の推進力を活かしやすくなった。

「あの場面は相手のショートキックの後でしたが、あのようなトランジション(攻守の切り替え)のところではチャンスがあると思っていました。キック(自体)はあまりよくなかったのですが、うまく転がってくれた」

 立川が自らの一撃を振り返る傍ら、田邉淳アシスタントコーチは「イーグルスさんは、田村選手を中心にディフェンスの裏に蹴るショートキックを多く使っていた。そこからの(攻守の)切り替えをチャンスに変える。それをマスターすれば、我々の展開になると信じていました」。この場面ではトライとコンバージョンの成功により、28-14と点差をつける。

 続く14分には、グラウンド中盤左に放たれたハイパントをフォーリーがキャッチ。無人のスペースをランとキックで侵略し、WTBの金秀隆に止めを刺させた。33-14と流れを決定づけた。

 この日はフラン・ルディケが不在だったが、田邉はクラブとしてのタフさを誇った。

「PCR検査の結果が出るまで(試合の)メンバーを構成できない難しさもありましたが、最新のテクノロジーをうまく使いながら(前節まで)休んでいた選手とも常にコネクトしてきた。事前にコーチ陣同士がzoomで打ち合わせして、選手に落とし込みを。今日はラインを使いながら、コーチボックス、給水係で連携を取りながらやっていました」

 終盤はイーグルスの防御が乱れる場面もあり、後半19分にイエローカードをもらった田村は「僕も、ですし、皆、個人個人に、責任があると思うので、修正するしかないです」と語る。

「今年は(昨季大敗した相手から白星を得るなど)順調にいい試合を続けていましたけど、自分たちは100パーセントでベストなゲームを繰り返さないと、勝つ力はないです。自分たちの力には自信はあって、悲観もしていないですけど、毎試合、ベストなパフォーマンスを出せるよう準備するのが大事です」

 就任2季目でチームを成長させる沢木敬介監督も、潔かった。

「自分たちのなかでレベルの低い試合をした。観に来てくれたファンの方に申し訳ない。次、どう、ふるまうか。チームとしてしっかりとテストしなきゃいけない。どのフィールドポジション(陣地)でプレーしなきゃいけないかも含め、1週間かけて準備してきたつもりですが、それが全く今日のゲームに活かされなかった。それも全部、僕の責任です。しっかり全員が同じピクチャーを見られるように、僕もしっかりレベルアップしていきたい。(選手の)力を出させられるコーチになろうと思っています」

 殊勲者の1人はヘル ウヴェだ。移籍1年目で今季初先発を飾り、自軍キックオフで競り勝ちマイボールを得ること2回。前半13分のワンシーンはイーグルスの反則も招き、一時的な勝ち越しに繋がった(8-7)。代表復帰も期待される核弾頭は、「キックオフについては(蹴る役目の)フォーリーと1日3回は練習した」と笑った。

 際立ったFWはウヴェのみにあらず。水色ジャージィの群れは、走者を掴み上げるチョークタックルを多用。イーグルスの球出しを遅らせた。敗れたFLのコーパス・ファンダイクは、「スピアーズがチョークタックルをすることは想定していました。(走者が)スペースへ走り込み、(援護役がタックラーを)素早くクリーンアウトしたかったですが、それができずに(攻撃に必要な)クイックボールを供給できなかった」と脱帽した。