互いのプライドがぶつかり合うから『福岡ダービー』は接戦となる。
1月30日におこなわれたリーグワン、ディビジョン3の宗像サニックスブルース×九州電力キューデンヴォルテクスは17-10で青いジャージーに軍配が上がった。
なかなか点差が開かない展開の中で頼りになるのがベテランの力だ。
この試合ではブルースのSO、34歳の田代宙士がプレーヤー・オブ・ザ・マッチに選出される働きを見せた。また33歳のFL𠮷田光治郎も、要所で輝くプレーを見せた。
9連覇・帝京大のV2時の主将で、卒業後はトヨタ自動車へ。𠮷田はキャップ獲得こそならなかったが日本代表に選出されたこともある。
オーストラリア留学後キヤノンで2シーズンを過ごし、契約満了を機に宗像へ。
今季は初戦の中国電力レッドレグリオンズ戦が途中出場で、この日がブルースでの初先発だった。
まだまだ若い。そう思わせるプレーは前半31分過ぎだった。
自陣ゴール前に攻め込まれたシーン。九電LOレイ・タタフがトライラインに迫ろうとすると、𠮷田が懐に突き刺さった。巨漢が思わずボールをこぼす。それを拾った味方が敵陣へロングキックを蹴り込んだ。
そのボールを33歳のベテランは追い続けていた。
キック処理した相手をWTBカーン・ヘスケスが潰し、浮いたボールがCTB王授榮の手に入る。パスはSO田代宙士に渡り、最後は自陣ゴール前から長躯、走り続けていた𠮷田の手へ。背番号7はゴールポスト左へ飛び込んだ。
一連のプレーを本人も、「いいフィットネス、サポートを見せられた」と振り返った。
新天地での生活を楽しんでいる。暮らしやすい土地も気に入っているし、若い選手の多いチームにも溶け込んでいる。
「よく喋る方です。いろんな提案をすると、みんなで話し、賛成してくれたり、いいコミュニケーションが取れている感じです」
ボールをよく動かすチームの中で、FWとBKのつなぎ役を務め、潤滑油のような働きを見せる。
「チームのシステムでFW3列が外にいるケースも多いので、情報伝達も大事」
チーム全体がコミュニケーションをとりながら動けるように心がける。
シーズン前、年齢を重ねた自分の現在地について、こう話した。
「若い時のような、肉体的な強さを武器にすることはできなくなりましたが、その分、体の使い方がうまくなり、知識が増えました。ラグビーは変わっていくので勉強し続けるのは当たり前。得たものをチームに還元することもまた、自分のためになると思っています」
自信と献身。両面が伝わってきた。
レッドレグリオンズ戦が17-15、この日が17-10と辛勝続きの開幕に、「予想していたよりレベルが高い」と、ディビジョン3の争いについて話す。
「向かってくる気持ちが強いし、プレシーズンマッチと公式戦でもまったく違う。この2試合でみんな、ナメていたら負けると分かったと思います」
相手チームのエナジーに負けないマインドセットで立ち向かう必要があると訴える。
ブルースはアタッキングチームだ。
「いいアクションでオフロードパスを連続させ、得点力を上げていけば自分たちのスタイルになる」と感じている。
「そのためにも練習を重ね、チームを熟成させないと。ディビジョン2に上がる。そのターゲットを全員で認識し、ピークを持っていくことが大事」
豊富な経験は、トライシーンやタックル、ジャッカルのシーンだけに表れるのではない。
ウイニングカルチャーを知る人の影響力は、日々の練習から細部に入り込み、チームを強くする。
新加入選手多数の新生ブルースが変化していく日々を楽しみに待ちたい。