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母国災害への支援にタウモハパイ ホネティは「泣きそう」。ダイナボアーズのいま。

2022.01.24

1月22日の試合、トンガ国旗を身にまとって入場したダイナボアーズのタウモハパイ ホネティ(撮影:松本かおり)


 試合が始まって間もなく、タウモハパイ ホネティは倒れてしまった。

 1月22日、相模原ギオンスタジアムでプレーしていた。ホストの三菱重工相模原ダイナボアーズで11番を託され、国内ラグビーのリーグワン・ディビジョン2の第2節に先発した。

 前半4分には敵陣22メートル線付近左で、味方の鶴谷昌隆の先制トライをアシスト。パスを放った瞬間に相手のタックルを受け、その場であおむけになったのだ。

 しばらく、腹部を抑えながらトレーナーに見守られる。ただし起き上がってからは、「そういうスポーツなので、大丈夫です。ありがとうございます」。ノーサイドまでに1つのトライを奪取。守っても味方の蹴ったボックスキックを追いかけ続け、捕球役へのタックルを重ねた。

 タフな1週間だった。15日に母国トンガの海底火山が噴火。家族との通信が途絶えるなか、試合への準備をしなくてはならなかった。

 いまは比較的、被害の少なそうな島に住む兄と交信。母の無事も確認できた。とはいえ、「(災害から耳にしていない)お母さんの声、(直接)聞きたいですね」。平穏な時代を取り戻す、その途上にある。

 試合当日、クラブはキックオフ前の場内にトンガ国歌を流した。その間は公式で「1066人」と記録されるファンも起立し、入口で配られたトンガ国旗の紙をグラウンドに掲げる。

 感想を問われたホネティは…。

「泣きそうでしたね。ウォームアップ中でしたが、正直に言って、ウォームアップにフォーカスできなかったですね。皆のことを思い出して…」

 身長180センチ、体重94キロの力強いWTB。トンガカレッジ、花園大、清水建設を経て、昨季までの2シーズンはクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(現名称)でプレーしていた。古巣のいるディビジョン1への昇格をにらむなか、この日はマツダスカイアクティブズ広島を52-25で撃破。開幕2連勝を果たした。

 しかし、チームを率いるグレッグ・クーパー ヘッドコーチは、「ここが終わりではない。学んだことを活かせるようにしたい」。自軍と違いトップリーグ経験のないチームに圧力を受けた時間帯もあったため、陣営は反省の弁を重ねる。

 ゲーム主将の安江祥光も、こう応じる。

「ゲームが停滞する時間帯の我々のストラクチャーのあり方、それを遂行する能力で、レベルを上げなくてはいけないと感じました」

 黄緑色のダイナボアーズは、幼少期にも日本で暮らしたことのあるマイケル・リトル、この日は欠場した元ニュージーランド代表のコリン・スレイドら国際色豊かなメンバーを揃える。チーム戦術の遂行力を高め、一枚岩となるのを目指す。

 ホネティも「ミスも多かった。ステップバイステップで頑張りたいです」と述べ、会見場を後にした。

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