若きスクラム職人がドレッドヘアになった。
好んで聴く音楽はレゲエ。そのカルチャーが好きで、「一度やってみたくて」と笑う。
髪型だけか。
寺脇駿(PR)は、そんなふうに絶対に言われたくないから、得意のスクラムで押し、タックルを決めたい。
2年目のシーズンに向け、レベルアップを誓う。
トップリーグ2021では開幕戦からベンチ入りした。新人ながら力を評価された証拠だ。
しかし18番のジャージーを着て、2試合続けてベンチを温めるだけに終わる。出場登録の23人中プレー時間がなかったのは自分だけだった。
「万全の準備はできていたのに、出られなかった。もどかしかったですね。でも、信頼が足りなかったのだと思います」
当時は、「出た時には首脳陣がまた使いたくなるようなプレーをする」と悔しさを飲み込んでいた。
デビューは第3節、山梨・甲府が舞台だった。相手は強豪・サントリーだった。
後半21分からピッチに立った。
スコアは10-54と開いていた。
「差がついていたので緊張はありませんでした。思い切ってプレーしよう。自分のプレーを見せよう。そう思って燃えました」
結局、ルーキーイヤーは4試合に出場。ただ、試合出場時間は65分と短かった。
新シーズンは先発出場をつかみたい。
ディビジョン3からスタートすることになったリーグワン元年。寺脇は、そこで「全勝する。ディビジョン2に上がる」と力を込める。
最前列の攻防がチームに与える影響が大きいことはよく知っている。一歩も後退するつもりはない。
大阪・柴島中でラグビーをはじめ、日本航空石川高校で全国レベルを知る。現在日本代表のWTBとして活躍するシオサイア・フィフィタは高校時代の1学年後輩だ。
「凄いなあ、と感心しています。が、自分も負けないようにやろう、と。大きな刺激を受けています」
スクラムに独自の強化メソッドを持つ京産大で大きく飛躍した。
2時間半続くスクラムセッションなどを経験し、個の強さとテクニック、周囲とともに塊になる大切さを学ぶ。
人一倍鍛え込んだ自負がある。だから、「負けず嫌いになった」。
ブルースに入団し、インターナショナルで活躍したパディー・ライアン(元オーストラリア代表)や、経験豊富な先輩たちから多くの教えを受ける。
「うまさも大事ですが、パディーには、それを上回る迫力や力強さも大事と教えてくれます。他の先輩方もいろいろとアドバイスしてくれる」
入団時とは違う自分がいる。
ブルース式スクラムへの理解の深まりは、そのまま評価の高まりにつながる。
しかし、ひとりのスクラメイジャーとして自分の組み方も大切にする。
「ブルースでは、2番がオーバーバインドで3番はアンダー。それが普通なのですが、僕はときどき、(3番の自分に)オーバーで組ませてほしいと言っています」
「絶対に押す」ことを条件に、局面によっては「大学時代から組み込んできたやり方」を主張する。
「まだ負けたことがない」を、リーグワンでも継続し、チームに貢献したい。プライドを支えに、責任を果たす。
新時代の開幕を目指すチームのことが好きだ。多くの選手たちが移籍で宗像を離れたが、新たな仲間たちも同じくらい加わり、魅力的な集団になった手応えがある。
加わった選手たちも受け入れる側も、みんな優しいから、「最初から仲がいい。ブルースらしい」。
プレシーズンマッチでも試合を重ねるごとに結果も出るようになった。
うまく滑り出せば勢いに乗るチーム。そのエナジーを生み出すひとりになりたい。
「1試合でも、1分でも多く試合でたに出たい。3番からチームを引っ張る」
髪型より結果で話題になる。