ラグビーリパブリック

あす準決勝。あの日メイジの1年生だった元木由記雄氏は、京産大の一員に。初の決勝進出へ向け、自然体で勝負

2022.01.01

12月31日、京都市内の京産大グラウンドは時折吹雪くほどの降雪のなか(撮影:松本かおり)

 暮れの京都に雪が舞った。

 1月2日に大学選手権準決勝を迎える京産大が12月31日に学内での練習をおこなった。練習は2時間弱で、FWとBKに分かれたポジション練習と、15人で相手をつけた流れの確認などの内容。練習は全部員が一斉に行う。皆の前でメンバー23人にファーストジャージーを手渡す儀式も、雪の中で行われた。

 就任1年目の廣瀬佳司監督は15季ぶりの準決勝の舞台にも淡々。元旦も、部としての願掛けやお参りなどはせず、いつも通りに過ごすという。

「ただ、選手が寝起きする寮は普段は冬休みで閉鎖期間。特別にあけて、食事も風呂も用意していただいています」(同監督)

就任1年目の廣瀬佳司監督。元日本代表SO(撮影:松本かおり)

 就任後、今季初めのミーティングでは、1990年度の準決勝をみんなで観た。明治29-15京産大。FWが看板の人気チーム、明治を向こうに、雑草軍団がタフに押しまくる。後半に逆転を喫したが、京産大の名を広く世に知らせる勝負になった。廣瀬監督自身が高校時代に目にして、ずっと忘れられない試合だという。

 奇しくもこのゲームに明治の1年生として出場していたのが、現・京産大GMの元木由記雄氏(元日本代表)だ。グラウンドの指導ではディフェンスを担当する元木GMにも気負いはない。ディフェンスのキーマンにはFW第3列(FL、NO8)を挙げた。

「選手はよくやってくれています。チームが求めるのは、早くセットをして、相手にプレッシャーをかけ続けること。それをいかに組織のものとしてできるか。15人が連携して動けるかにフォーカスしてきた。特にバックローの3人がよく動けている。先陣を切って、そのきっかけを作ってくれている」

 対戦校は相手にとって不足なし、だ。

「帝京、あれこれ見ましたけれど、つおいですね。ただ、そこで引くんじゃなく、こちらが一歩踏み込んでいくことが大事。ディフェンスでも、セットから勝負してほしい。3フェイズくらいまで押し込む形に持っていければ。やってくれると思う。セットプレーはウチにとっても伝統と誇りがある。そこでいかに崩していくか。相手の強みを、こっちの強みで崩す」(元木GM)

 選手としては1年時から経験している準決勝の舞台に、コーチとして臨むことについて聞かれると「そういうふうに考えたこともありませんね」と相好を崩した。

「選手たちががんばってくれていることが、うれしいです。よくここまで来た。準決勝では、全力を出してほしいです。思いっきり暴れてほしい。あの観客の中でできる幸せ、充実感を味わってほしい」

 舞台は国立競技場。そのパワーをまた糧にして、初めての決勝に臨みたい。

 大晦日の全体練習後、30分経っても、40分経っても、雪で白くなった神山グラウンドにはぽつぽつと選手が残っていた。ある者はタイヤを押し、ある者は白線の間を黙々と往復する。延々とボールを蹴る選手も。

 3人でタイヤを押していた選手の一人は1年生部員のLO日吉健。「雪ですけど、大晦日なので、やらないと1年終われないと思って」押した。あえて、ゆっくり。遅さを競うように雪の中で湯気を立てる3頭の「亀」が雪の中を進む。 

 メンバー23人は1月1日に東京へ向かった。 

 京産大は1月2日、国立競技場で帝京大学と対戦する。京産大は今季関西大学Aリーグ優勝校(23季ぶり)。大学選手権には6年連続35回目の出場で、最高戦績は4強。今回の4強入りは15季ぶり8回目となる(年度では1983、’85、’90、’93、’94、’97、2006、’21)。キックオフは14時40分。