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将来の海外挑戦に興味。帝京大司令塔の高本幹也、26日から日本一目指し大学選手権へ。

2021.12.25

帝京大の10番をつける高本幹也。写真は11月3日の早大戦(撮影:松本かおり)


 今度の大学選手権に出るラグビーマンにあって、もっとも注目される司令塔のひとりだ。

 帝京大3年の高本幹也は、優れたジャッジメントとそれを具現化するスキルでチームを前に進める。ライバル校のあるコーチによると、「ずっと表情が変わらない。落ち着いている」。当の本人は謙遜する。

「判断、間違えまくりなところはあるんですけど、周りは見るようにしています。前だけじゃなく、いろんなところに目を向けています」

 今季は加盟する関東大学対抗戦Aで7試合に出た。筑波大との初戦(埼玉・熊谷ラグビー場)から、相手防御のギャップを鋭いランで突く。

 その試合では17-7と勝利も、自身、チームにミスがあったことから、「皆、このままじゃだめだと気づいた。ひとりひとりと(互いに)関わる時間を増やした」。練習中の対話、練習後のビデオ分析で連係プレーを磨く。

「細かいコミュニケーションのところでのミスは、得点できないこと、失点することにつながる。グラウンド外でもお互いの意見を伝えあったり、(一緒に)映像を見たりしてコミュニケーションを取っています」

 積み重ねの成果が表れたのは、11月3日の早大戦だ。東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場で、多彩なキックを蹴り込む。「スクラムが強かったので(敵陣でプレーしたかった)。あとは、僕たちのキックを蹴って相手がノックオンしてくれたらいいなと」。望む試合展開に持ち込む。29-22。同カード3季ぶりの白星を得た。準備の賜物だった。

「普段からいろいろと考えて、コーチの人たちと相談しながら『こんな感じで試合を組み立てて行こうかな』と事前に決めていました。相手の特徴はあまり考えず、自分たちが練習でやってきたことを出したら試合に勝てると思っていた。自分たちのやってきたことをやることを、意識していました。僕自身は2、3日前くらいは不安だったんです。僕やSHの(エリア獲得時の)キックの精度が上がっていなかったので。ただ、試合に入ってみたらいい感じで蹴られたのでいけそうだと感じた。試合で、自信をつけられました」

 11月20日の明大戦(東京・秩父宮ラグビー場)では、キックパスによるトライの演出もあり14-7で勝った。

 12月4日、秩父宮での慶大戦では、7点差を追う前半23分に魅する。敵陣22メートル線付近で大きく球を動かし、防御網の隙間が広がったところへショートパスを繰り出す。右PRの奥野翔太のトライを生み、直後のコンバージョンは自ら決めた。14-14。スコアを振り出しに戻した。

 その後も防御へ鋭く仕掛けながら、長短を織り交ぜたパスを放つ。チームは後半から調子を上げて64-14と、対抗戦全勝優勝を決めた。高本自身は通算105得点をマークし、対抗戦Aの得点王となった。

「だんだん精度が高くなっているのは、ひとりひとりの意識、練習量のおかげだと思います。それと、チームワークがよくなってきたと感じます。最初は勝ちたい気持ちの強い細木(康太郎)主将に引っ張られる感じでしたが、いまはひとりひとりに勝ちたいという気持ちが出てきている。それがコミュニケーション、(自主)練習の量につながっていると思っています」

 兄の影響で小学1年からラグビーを始め、大阪桐蔭高3年時には全国大会で優勝。高校在学中に17歳以下日本代表となったことで、将来もラグビーで生計を立てられればと思うようになった。

 進学先の帝京大は2017年度まで、大学選手権で9連覇を達成している。強いチームで学びを得たいからと、高本はいまの道を選んだ。

「段々、(ラグビーが)おもしろくなってきたというか、違うおもしろさ(の種類)が増えている感じがしていて…。高校時代までは自分の力だけで行けた(局面を打開できた)部分もありましたが、大学ではそう簡単にいかないとわかりました。逆に最近は、仲間を活かしてトライを取ったり、それが勝利につながったりというのが楽しいですね」

 練習の虫だ。今度の取材があった11月中旬の某日午後も、直前までグラウンドに残ってタッチキック、ゴールキック、ハイパントなどの足技をチェックしていたそう。将来は「日本代表を目指しながら、海外にもチャレンジできたら」と息巻く。

「いろんなところで(ラグビーを)経験して、それを成長につなげられればと思っています」

 身長172センチと小柄な東洋人が強豪国の大男たちを統率していれば、世界中のラグビーファンから注目されるだろう。希望を抱かせる。

 いまはまず、10度目の大学日本一達成を目指す。

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