全国大学ラグビー選手権大会はいよいよベスト8が出そろった。12月26日には秩父宮ラグビー場と熊谷ラグビー場の2会場で、準々決勝の4試合が開催される。関西大学リーグ1位の京都産業大学、関東大学対抗戦1位の帝京大学、同2位の早稲田大学、関東大学リーグ戦1位の東海大学という上位シードの4校も加わり、いずれもタイトな熱戦になることが予想されるトップ8の激突を、ここで展望してみたい。
秩父宮の第1試合は最注目の早明再戦。
奪還期す帝京大は好スタートを切れるか。
今回の準々決勝の最注目カードは、秩父宮ラグビー場の第1試合、早稲田大学対明治大学(11時30分キックオフ)で間違いないだろう。両校は3週前の12月5日に関東大学対抗戦の最終節で対戦しており、その時は早稲田大学が17-7と勝利している。短期間での再戦が果たしてどのような展開になるのか、興味は尽きない。
早明戦での早稲田大学は今季一番の出来といえるディフェンスで明治大学の猛攻をことごとく寸断し、少ない得点機を見事な集中力で仕留めて会心の勝利を収めた。大黒柱のCTB長田智希主将をケガで欠きながらタイトな接戦を勝ち切ったことは、チームにとって確かな自信になるだろう。その半面、帝京大学戦同様に圧倒されたスクラムは、依然として大きな課題だ。攻守の起点となるプレーで、重圧がかかる大一番では致命的な要素になりかねないだけに、ここをどこまで立て直せるかが連勝を果たす上でのカギとなる。
一方の明治大学は、帝京大学戦に続き持てる力を出し切れずに敗れた印象が強い。結果として対抗戦は3位に終わったが、大型で勤勉なFW、WTB石田吉平、FB雲山弘貴ら好ランナーが並ぶBKと、戦力では学生随一の存在であることに変わりはない。昨季準決勝で完敗した天理大学を花園で破った4回戦の勢いに乗って、潜在力を余すことなく発揮できるかが、雪辱のポイントだろう。
14時キックオフの秩父宮ラグビー場の第2試合では、トップシードの帝京大学が満を持して登場する。今季はPR細木康太郎主将、HO江良颯が牽引する強力スクラムを武器に早稲田大学、明治大学を力でねじ伏せ、最終戦では慶應義塾大学を64-14と圧倒して3年ぶりの対抗戦優勝を果たした。勝利を重ねるごとに右肩上がりにパフォーマンスを高めており、心身ともに充実した状態で選手権の初戦に臨んでくるはずだ。
対する同志社大学は今季、春の関西大学トーナメントを制し大きな期待を集める中で秋のシーズンを迎えたが、近畿大学、京都産業大学、天理大学との僅差勝負を落とし、関西大学リーグ4位で滑り込みの選手権出場となった。もっともリーグ戦7試合の総得失点差は184の首位で、好選手がそろうBK陣の攻撃力はどの相手にとっても脅威となる。一発勝負で波に乗れば怖いチームだ。
総合的に見て、FWからBK、リザーブまで含めて充実の布陣を誇る帝京大学の優位は動かないだろう。戦い慣れた地元の秩父宮ラグビー場でプレーできるアドバンテージも大きい。選手権の初戦を快勝で乗り切れば、過去3年逃してきた覇権への視界はさらに開けるはずだ。同志社大学にすれば得意のBK勝負に持ち込むために、スクラムでの奮闘が絶対条件となる。
好ゲーム必至の京産大対日大。
東海大は慶大の挑戦に真価を問われる。
埼玉県の熊谷ラグビー場では、まず第1試合で関西大学リーグ戦1位の京都産業大学と、関東大学リーグ戦2位の日本大学が対戦する。京都産業大学は全勝で23季ぶりの関西制覇を果たしており、日大も36季ぶりのリーグ優勝こそならなかったものの、1位東海大とは6勝1分けの同勝点で、総得失点差での2位だった。ともに勢いのあるチームだけに、目の離せない熱戦になることが予想される。
今季の京都産業大学の戦いで目を引くのは、ディフェンス面の充実だ。ゲームキャプテンを務めるPR平野叶翔、猛タックラーのFL三木皓正を筆頭に誰もが接点でひたむきに体を当て、ボール争奪局面で圧力をかけ続ける。我慢比べで上回ってペナルティを獲得し、FB竹下拓己のPGでスコアを積み上げる――という勝利の方程式が、シーズン中盤から確立された。派手さはないがそのぶんパフォーマンスには安定感があり、相手にすれば攻略の糸口が見つけにくいチームだろう。
昨季の主軸が多く残った日本大学は、前評判通りの力を発揮してリーグ戦で好成績を残した。前週の4回戦では日本体育大学の気迫あふれる攻守に苦しめられたが、勝負どころでスコアを刻んで41-22と突き放したのは、培ってきた地力の証だ。こちらもFWとBK、攻守ともにバランスのとれた戦力を有し、ベースとなるフィジカルの強さも備えているだけに、24大会ぶりの大学選手権ベスト4に向け、今回は絶好のチャンスといえる。
熊谷の第2試合は、関東大学リーグ戦で4連覇を達成した東海大学と、関東大学対抗戦4位の慶應義塾大学という顔合わせになった。今季の東海大学はFLジョーンズリチャード剛主将やCTB丸山凜太朗をはじめ下級生時から公式戦を経験してきた選手が多く、悲願の大学日本一に向け力が入る勝負の年。LOワイサケ・ララトゥブアら海外出身の留学生たちも上級生になってよりチーム戦術にフィットしてきており、いよいよ条件は整ったとの感もある。
対する慶應義塾大学は対抗戦の最終戦で帝京大学に大敗を喫し、近畿大学との選手権4回戦でも崖っぷちまで追い込まれたが、チームの顔であるFL山本凱をケガで欠く布陣で苦境を乗り越えた経験は、選手たちの自信になるだろう。シーズン当初から優勝候補の一角と評されてきた実力者に挑戦する立場となる今回のゲームは、開き直って向かっていく格好の機会にもなりえる。
近畿大学戦では相手の強みであるスクラムを巧みにいなして先行する展開に持ち込み、魂のタックルでわずかなリードを守り抜いたように、試合運びのうまさは慶應義塾大学の伝統だ。東海大学にすればいかに相手の土俵に上がらず、学生屈指のアタック力を伸び伸びと発揮できるかが、最大のポイントといえる。仮にここを完勝できたなら、頂点に向けチームは一気に加速するだろう。
どの大学もこの一年のすべての積み重ねをかけて挑んでくる負ければ終わりの決戦は、間違いなく緊張感に満ちた激闘になる。必見だ。
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