我らが「コーイチさん」がラグビー本を出しましたで。岩城滉一さんやおまへん。村上晃一。顔面は好みがわかれるとこやけど、爽やかさはどっこいどっこい、かな。
最初に「コーイチさんと呼んでいいですか?」ときいたのは、大学後輩の坪井くん。カラオケで歌ったマッチの『スニーカーぶるーす』に感動しまくり。みんな、トークショーでリクエストしてな。
その京都市在住のコーイチさんが書かはったのは、『ノーサイド 勝敗の先にあるもの』。あかね書房から1430円(税込)で発売中。
題材にとったのは、「ロスタイム18分」があった東福岡×東海大大阪仰星。前年度の100回全国高校大会の8強戦。場所はもちろん、高校生の聖地・花園ラグビー場でっせ。
ロスタイム18分の末、試合は21−21の引き分け。抽選により東福岡が4強進出。メディアはうまい表現方法がないから、「抽選負け」と表記するが、負けではおまへん。「次戦の出場権がない」ちゅうこと。MBS(毎日放送)の特番のナレーションはさすがですわ。
「東海大大阪仰星は負けることなく花園を去りました」
この放送局は全国大会中継のパイオニア。初実施は1960年(昭和35)ですな。
ロスタイム18分は100回の全国大会でも最長。選手たちは前後半も合わせて78分の中で、神秘的なものに包まれはる。
「30人でラグビーをしているような感じ」
勝敗を超越しての「ワンチーム」。18歳の言葉に、取材現場にいた56歳にならんとするコーイチさんはハートをゆさぶられる。
「この試合は本にして残さなアカン。未来がある小学生たちにこそ読んでもらいたい。世間の泥にまみれたり、グレーゾーンを知ってしまったりするその前に目を通してもらわんとな。ラグビーをするしないに関係なくね」
コーイチさんが子供用の本を手がけるのは3冊目。最初は『仲間を信じて』(岩波ジュニア新書・岩波書店)。選手や指導者などの大人ばかりやない。子供のことも考えておる。自ら売り込みをかける中、あかね書房が手を挙げてくれた。ほんま、サンタクロースやで。
全141ページ。両校の背景から当日の試合、その後のことが書き込まれている。「ラグビーを楽しもう!」という注釈が時々入り、ルール、グラウンド、ポジション、得点法などが説明される。文末には100回大会の組み合わせ、メンバーや試合経過なども挿入。読み終りには初心者でも基本的なルールや高校ラグビーがわかるようになっている。
対象は小4から小6。分類は「児童書」。小学校で習わない難しい漢字や氏名にはルビがふってある。書体は可読性や視認性などが高いユニバーサルデザイン。ハードカバーなのは、傷んだりしにくく、長く学校などの図書館に置いてもらうことを考えた。
この本の凄みは、大人でも十分楽しめる、ということや。コーイチさんの気合の入れ方は尋常ではない。佐々木裕司レフリーの義父が危篤で、この試合の翌日、1月4日に亡くなったことも入っている。レフリーも大きなものを背負って、笛を吹いていたんやね。
東福岡・藤田雄一郎監督の言葉にもしびれたな。さすが花園優勝6回、歴代4位の記録を持つだけのことはある。
「おれの言う通りにやれば花園でベスト8には行ける。でも、その上に行きたければ、おれの言うことだけを聞いてちゃダメだ。監督、コーチの言うことを、現場の判断で変えていくことができるのが、高校ラグビーのベスト8以上に行けるチームなんだ」
ラグビーは試合が始まれば、選手がプレーを選択する。この試合でも、東福岡は藤田監督が指示したペナルティーゴールを狙わず、スクラムを選択したりした。それを受け入れる監督はあっぱれや。当然ながら、花園優勝5回、歴代5位の成績に高めた湯浅大智監督も同じレベルやな。
まもなく、また花園大会が開幕しますな。両校とも優勝最右翼のAシード。再びドラマが始まる予感がするな。もちろん、この2チーム以外の49チームも色々なドラマを作る可能性を秘めている。
その101回大会を前に、『ノーサイド 勝敗の先にあるもの』を読めば、魂が浄められること請け合いや。この一年でたまった心の垢を落として、よき年末、そして新年をお迎えましょう。