欧州チャンピオンズカップが開幕した。昨年度チャンピオンであるフランスのトゥールーズは、ウェールズのカーディフを下し開幕戦を勝利で飾った。前半20分で先制トライを許すも、ワールドラグビーの今年の最優秀選手に選ばれたばかりのアントワンヌ・デュポンが、トゥールーズの3つのトライのきっかけを作り、自らもフェイントとハンドオフで敵を次々と抜き去りトライを決め、またもや輝いた。
試合後の会見で、トゥールーズのユーゴ・モラ ヘッドコーチは、「いいプレーもあったがよくない時間帯もあった。前半のはじめはカーディフの勢いに押された」と試合を振り返った。
「カーディフはとても勇敢だった。ウェールズ代表のCTBウィリス・ハラホロやジョシュ・アダムスが中心となり、テンポを上げてどんどん攻めて来て、ゴール前まで追い詰められた。多くの主力を欠いていたにもかかわらず危険なチームだった」と対戦相手を称えた。
今季から始まったユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップに参加するカーディフのプロチームは、南アフリカのライオンズ、そしてストーマーズと対戦するために、11月下旬に同国入りしていたところ、現地でオミクロン株が確認され試合は延期。南アフリカからイギリスへの渡航制限に伴いフライトはキャンセル、チャーター便を手配してもイギリス航空当局の許可が出ず現地で足止めとなった。また、グループ内でも陽性者が確認され、陽性者を残して先に帰国した42人(スタッフを含む)も濃厚接触者と判断され隔離施設に入っている。代表に招集されていてクラブの南アフリカ遠征に参加していなかった選手、アカデミーの若手、引退から復帰した選手、そして平日は大学生や教師として働いているセミプロを集め、11人がプロデビュー戦というカオスの中で急ごしらえしたチームで昨年度チャンピオンに挑んだのだ。
「しかし、彼らは抵抗しただけではなく、果敢に攻め続けた。60分を過ぎるとフィジカルの差が出てきて限界は感じられたが、それでも最後まであきらめなかった」と、フランスのフィガロ紙もカーディフの選手の健闘を賞賛した。
ジョシュ・アダムスが、「この試合を本当に楽しめた。今日出場した若い選手を誇りに思う。今日の経験は彼らの今後の糧となり、大きな自信になるだろう」と試合後にコメントしている。
クラブのプライドを守り、隔離されてずっと家に帰れないでいるチームメイトやスタッフを励ますために勇敢に戦った。そして代表選手が居並ぶ強豪トゥールーズに臆することなく、むしろ通常ではこんなに早く巡ってこなかったであろうヨーロッパチャンピオンと対戦できる幸運を思う存分楽しんでいるようで、試合中笑顔が見えたのはカーディフの選手だった。
そんな選手にカーディフのサポーターは興奮し、熱い声援を送り、交代で退場する選手をスタンディングオベーションで称えた。危険なタックルでレッドカードを出されて退場になった、この日デビューの19歳のFBジェイコブ・ビーサムも例外ではなかった。「レッドカードでスタンディングオベーションは僕も初めて見た。せっかく素晴らしいパフォーマンスをしていた新人がこのような形で試合を終えてしまうのは残念だが、彼もこれで学び成長するだろう」と笑顔でアダムスは言う。
負けたチームの選手とサポーターの清々しい笑顔がとても印象に残る試合だった。