外に出たからこそ得られたものがある。
今季宗像サニックスブルースのバイスキャプテンを務める高島卓久馬(たかしま・たくま)は、4年間、大阪の空気を吸って戻ってきた。
近鉄ライナーズでは3シーズンに渡りリーダーグループの中に身を置いた。
チームカルチャーを作ろう。オフフィールドの付き合い方も大事やで。人を引っ張るには、スキルも必要なんや。
そんなことを学んできた。
もともとリーダーシップはある。大学時代は名門・日体大でキャプテンを務めていた。
そこに、新しいものの考え方や知識などを付け加えた。
それらをブルースで活かす。
日体大からブルースに加わり6年在籍し、その後、近鉄で4年。経験値は高まっている。
ふたたび宗像に戻ってきたのは、松園正隆新監督の存在が大きい。
「(新監督は)大学の大先輩で、ブルースでは一緒にプレーしました。松園さんが監督をやることがあれば(その下で)やりたいと、以前から思っていました。今回、監督になられたと聞き、『一緒にやらせてください』と電話をしました」
おかえり。
玄海グラウンドでのトレーニング後だった。練習見学に来ている昔からのファンの方にそう言ってもらい嬉しかった。
「お喋りしました。懐かしかったなあ」
5年ぶりのチームは、随分顔ぶれが変わっていた。
昨季までと大きくメンバーが変わり、若手がたくさんいる。もちろん、昔からの仲間たちも。
「いい歳になりました。若い人のお手本になれるような姿勢を見せたいと思います。オンとオフは大事。その両方を大事にしたい」
チームのカルチャーを作り、浸透させたい。
あらためて感じたのは、ブルースの選手たちの純粋さだ。
「みんな、ルーティーンの練習にも全力で取り組む。しんどいことにも文句を言わず一生懸命やる」
自分たちの取り組んでいることを信じる。大切なことで、当たり前なのだけど、簡単なことではない。
リーグワンでの戦いはディビジョン3からのスタートになった。
もちろん、選手たちは上のステージで戦いたかっただろうし、ファンもそうだろう。
しかし高島は、自分たちでコントロールできなかったことなのだから意に介さない。前を向くだけだ。
「実際問題として、昨シーズンのレギュラーメンバーの多くが移籍したので、ここまで上のグループでやってきたことのお釣りはないと考えた方がいいでしょう。これまでトップリーグで戦っていたんだぞ、というのは関係ない。いい機会をもらった、と考えたいですね。松園さんのもと、一から魅力あるラグビーを作っていくしかない」
バイスキャプテンの打診を受けた時、光栄に思った。主将の屋宜ベンジャミンレイとは1歳違い。「落ち着いているベンさんと、バーッという自分。いいバランスで、お互いにやりやすいと思います」と笑う。
以前ブルースに在籍していたときはプロップも、近鉄時代はフッカー。そのまま2番で勝負したいと思っている。
バイスキャプテンとはいえ、試合に出るためにはポジション争いに勝たなくてはならない。
「同じポジションには、隈本(浩太)をはじめ、自分よりフッカーの経験が長い選手たちがいます。彼らのプレーから盗めるところは盗み、ライバル争いに勝った上で、全試合にスタメンで出たいですね」と覚悟を決める。
チームが始動する前の7月、玄海グラウンドを訪ねた。
久しぶりにクラブハウス内に入る。壁のあちこちに、いろんな年代のチームフォトや、オンフィールド、オフフィールドで写した写真が貼ってあった。
しかし、自分のものはなかった。
「6年間、自分のことばかりで、チームのことを何も考えていなかったんだな、と思いました。(周囲への)影響力とか、何も考えていなかった。いつか自分の写真も貼ってもらえるように頑張らないと」
5年ぶりに戻ってきて、変わんないな、と言われるのも嬉しい。
でも、変わったな、と言われないといけない。人間的に成長したところが伝わるように振る舞う。