この人にあっては珍しかった。地面のボールを味方の足にぶつけたり、ラインアウトからの配球時に手元を滑らせたり。連続攻撃でのテンポのよさは相変わらずだったが、当の本人は反省しきりだ。
「僕自身、すごく課題の出た、勉強になった試合です」
12月5日、東京・秩父宮ラグビー場。早大ラグビー部で1年目からレギュラーに定着する宮尾昌典が、「早明戦」と呼ばれる明大との関東大学対抗戦A最終節にSHで先発した。自らのトライもあって17-7で勝利も、「プレッシャーを感じてはいましたが、軽いプレーは僕のミス」。技術的な改善点を見出し、26日から参戦の大学選手権を見据える。
「これまでの対抗戦で自分のいいところ、悪いところが明確になった。いまより自分に厳しく、もっとチームに溶け込んで、勝利に貢献できるようなプレーヤーになるよう頑張っていきたいです」
地元の兵庫で3歳からラグビーを始めた。面識のない父方の曽祖父はドイツ人。兵庫県ラグビースクールを経て京都成章高に入るまでの間、「地毛登録」なるものも経験している。「染めてたら、(早大の主力では)出れてないですよ」と笑うこの人は、常に淡々と力できる。
件の早明戦では足技でも魅した。同級生でNO8の佐藤健次が大きく突破してラックを作るや、その地点から一歩、後ろ移動しながら、前がかりになる防御の背後へ鋭い弾道を放つ。かような場面を前半25分頃、後半19分頃と計2度、創り出した。
いずれの場面でも、向こうの後衛の嗅覚と反応により捕球を許してしまってはいる。ただし、攻めを一本調子とさせない意志なら示した。しばしさばきのテンポを評価される本人は、目指す選手像をこう述べている。
「全てを強みに持って行きたい。キックにしても、仕掛けにしても、サポートにしても、全てにおいてレベルの高い位置でプレーしたい。(そう思うきっかけは)高校3年生で主将をやらせてもらった時ですね」
身体も張る。9月中旬からの対抗戦では全試合で9番をつけ、グラウンドの外側で防御ラインの後ろ側をカバー。唯一黒星を喫した11月3日の帝京大戦(東京・駒沢オリンピック公園陸上競技場/●22-29)では、真正面から突っ込んでくるHOの江良颯をタッチラインの外へ押し出す。身長、体重でそれぞれ8センチ、37キロも上回る突進役に、臆せず突き刺さった。
身長165センチ、体重70キロの新人は、「(江良は)だいぶ、強かったです」としながら「僕自身、狙われることは認識していた。シミュレーション、していました」。さらに続ける。
「肩も治したんで、そんなに心配なく思い切りできる。高校ラグビーの花園(全国大会)前に肩を脱臼していて、(当時は)かばうような感じもありましたが、(引退後に)手術したので」
この発言からわかるのは、高校3年目の昨季は手負いの状態で全国準優勝を果たしたという事実である。
大学では7月に戦列復帰し、秋のブレイクで自身を深めた。東京で迎える最初の冬。「強気なプレーでチームを引っ張っていけたら」と頂点を見据える。