時計の針は49分を回っていた。
ほぼ22㍍ライン上、左端。難しい角度にも思われた。
公式戦初先発の天理大SO、福本優斗が逆転サヨナラPGを決めて、リードが6転する激戦に終止符を打った。
関西大学リーグの最終戦が12月4日におこなわれ、天理大が同志社大を27-25で破った。これで天理大は関西リーグ3位(勝ち点24)、同志社大は4位(22)となり、両チームとも大学選手権に進む。
24-25で迎えた最後のショットは、福本自身で決断した。
「ペナルティをもらった時にはショットと言っていて…。蹴る前は緊張したけど、ここで自分が決めてやるという気持ちがありました」
福本は先週からAチームに昇格し、そのまま先発の座も勝ち取った。小松節夫監督は起用の理由をこう説明する。
「調子が良かったり、出たい気持ちの強い選手を使おうと。練習はセレクションと言ってきた中で結果を出せていた福本を、経験を積ます意味も込めて使いました」
関西リーグ開幕の翌週におこなわれた近大との練習試合では、まだコルツリーグ(Cチーム)の先発だった。福本は今日の公式戦初先発について、「(当時は)全く想像できていませんでした」と話す。「それでも上に上がりたい気持ちはずっとありました。準備はできていた」。そして見事、期待に応えた。
上宮太子高校出身。決して強豪校とは呼べないが、大西将史(帝京大→リコー)や池永玄太郎(天理大→神戸製鋼)、前田龍佑(帝京大→近鉄)らトップリーガーを輩出してきた。
福本についても、小松監督は「センスのある良い選手でキックも飛ぶ。チャンスがあればいつか上がれる選手だった」と評価する。「そこからかなり伸びました」。苦手なディフェンスを克服し、この大一番を任された。
「昨日は寝られなかったです(笑)。でも高校の部活の先生から電話をいただいて、『次のことは考えなくていいから、思い切りこの試合にかけてこい』と言われたのがすごい励みになりました」と福本。「今までとは違う流れを天理に持ち込めたらなと思って臨みました」。
試合中は緊張感の見えない強心臓っぷりを見せる。強気のキックでチームを前に進め、アタックでもラインスピードを上げた。
大学選手権に向けても小松監督は「選手層も厚くなった」と喜ぶ。福本も「昨年は優勝しているのでたくさんの期待がある。チーム一丸となって連覇できるように努力したい」と意気込んだ。
天理大は12月18日に花園で対抗戦3位チームと、同志社大は12日に同じく花園で朝日大と対戦する。