歓喜の笛が鳴ったあと、日体大のFL髙橋泰地主将が宙に舞った。
「言葉にならないくらい嬉しかった」
11月27日。江戸川陸上競技場で関東大学対抗戦Aの最終節がおこなわれた。大学選手権最後の一枠をかけて戦った日体大は、35―17で筑波大を破り、2008年以来となる全国切符を勝ち取った。
胴上げされたキャプテンは「前に出るディフェンスを80分間やり切れた」と喜んだ。8点差以上の勝利が大学選手権出場の条件だったが、髙橋主将は冷静さを保っていた。
「そのコントロールは僕とリーダー陣でするから、自分たちの形を貫こうと話しました。常に0―0の気持ちでやろうと言ってきました」
序盤はお互いにペナルティやハンドリングエラーなどで落ち着かない展開も、先制トライは日体大が挙げた。前半13分、相手のミスキックをSH梶田壮馬がキャッチ。そのままステップで抜き去り、インゴールに飛び込んだ。
梶田はその後もラインブレイクと正確なハイパントで勝利に貢献。プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。
互いに1PGずつ加えた前半終了間際には、梶田のハイパントからすぐさまカウンターラック。一気に敵陣22㍍内に入り、最後はWTBクリスチャン・ラウイが防御網を突き破ってリードを広げた(15―3)。
後半も日体大ペースで試合が進む。キックを使って敵陣でディフェンスをしたかった筑波大だったが、アタックでのミスとWTBラウイの突破を何度も許し、追撃は叶わなかった。
鼻骨の骨折で控えに回っていたFB松永貫汰主将は後半開始と同時に登場。「ベンチから見ていて裏や外のスペースが空いているのは分かっていたけど、うまくポジショニングできず、エリアも取れなかった。中に入ってもそれを実行できなかった」と悔やんだ。
日体大はPRミキロニ・リサラやWTBラウイの突破で2トライを加え、後半17分に27―3までリードを広げた。
その後、ラインアウトモールで1トライ返されたが、34分にWTBラウイが魅せた。左タッチライン際を走り抜けて敵陣に入ると、華麗なバックフリップパスでCTB皆川祥汰のトライをお膳立て。32―10とし、試合を決めた。
明大戦での大敗を機に調子を落としていた筑波大とは対照的に、日体大はシーズン中に成長を続けていた。
「『シーズンを通して強くなる』をキーワードにやってきました。私も大学時代は早稲田に100点ゲームをされることもありました。なので目標を明確にして、それに向けてしっかり取り組んできた。今年はどの試合でもアティチュードの高いゲームができた」と母校を率いる湯浅直孝ヘッドコーチは評価した。
手応えを得たのは2節の明大戦だった。10―46で敗れはしたが、SH梶田は「自分たちがやってきたことが初めて形になった」と話す。
「『一殺』を掲げてやってきました。一人ひとりが前に出て止める、ひたむきにタックルするディフェンスに手応えを掴めた」
髙橋主将は躍進の理由に、周りの4年生を挙げた。髙橋は昨季の慶大戦で左ひざの前十字靭帯を断裂。今夏にようやく復帰できた。
「グラウンドに立てない間、同期がしっかりまとめてくれて、自分が帰ってきた時も自分の居場所を作ってくれた。4年生みんながリーダーになってくれました」
シーズンが始まる時に立てた目標は、「選手権ベスト4」。髙橋主将は「新たなスタートラインに立てた。また気持ち新たに頑張りたい」と意気込んだ。
対抗戦5位を決めた日体大は12月18日、関東リーグ戦2位と秩父宮で対戦する。