ブルース9年目。33歳になった。
「この年齢で、と。正直びっくりした」と本音で話す。
陣容が大きく変わった新生・宗像サニックスのキャプテンに指名された屋宜ベンジャミンレイ(WTB・FB)は、落ち着いた笑顔を浮かべる。
びっくりした。
しかし動揺ではない。
副将としてチームを引っ張ってきた経験がある。肩書きがなくとも頼りにされるリーダーとして生きてきたから、これまで通りやるだけだ。
首脳陣も「プロ意識の高い選手」と信頼を寄せる。
それでも、主将就任の打診を受けた時は「考える時間をください」と答えた。
「自分がキャプテンになったら(ブルースが)どうなるのかイメージしました」
断る理由が見つからなかった。妻に相談すると「いいね。やりなよ」と即答が返る。自身の将来にも生きる経験になると思い、決断した。
架け橋。あるいは接着剤であり潤滑油。
主将に就いた自分の役目は、そんなところか。人と人をつなぐ存在をイメージする。
「チームには日本人選手、外国出身選手、移籍してきた選手たちがいます。英語を話せる自分が、一人ひとりの距離を近づけられたらいいな、と」
ブルースを結束の固いワンチームに。それが目標を達成するための第一歩だ。
ベンを止めろ。
沖縄・石川高校時代から、対戦校のすべてがそんな合言葉で挑んでくる好ランナーだった。
主将は、同校3年時以来のことだ(国体の沖縄高校代表でも主将)。
ただ、「当時の経験はなんにもならない」と笑い飛ばす。
「高校時代は監督(先生)の言うことを、みんなでちゃんとやろう、守ろうと言えば良かった。プロは次元が違います」
トップレベルで、「ちゃんとやろう」は当たり前。もっと先をいかないといけない。
「監督、ヘッドコーチの考えを理解し、全員で同じ方を向く集団にすることが求められる」
そのためにも首脳陣の真意を自分の中で咀嚼し、仲間の一人ひとりを知り、浸透させる。
ピッチ上の指揮を執るダミアン・カラウナ ヘッドコーチは選手たちに、プロとしての自覚を持とうと呼びかける。その自覚が人としての成長、プレーヤーとしての進化を呼ぶから、と。
その要求に全選手が応えられるように、個別に目配りをしようと思う。多様性がブルースの魅力。そこを尊重しつつ、チームのスタンダードを高める。
「行動と言葉の両方で引っ張りたい」と決意する新主将は、「いま、どういう言葉を発することが求められているか考えるようになった」という。
チームメートのモチベーションを高める言葉探しも、新たな日常になった。
すべての重責をひとりで背負い込むつもりはない。
副将に就いた高島卓久馬(HO)は、頼もしいパートナーだ。
一度ブルースを離れ、近鉄ライナーズの空気を吸い、戻ってきただけに新鮮な感覚を持っている。
「積極的にコミュニケーションをとってくれます。一度外に出たからこそ分かる、ブルースに足りないことを伝えてくれます。練習のことについても、コーチ陣にこうしてもらいましょうとか、いろんな角度から考えを言ってくれる」と語る。
昨季のトップリーグでは6試合に出場。そのすべてで先発し、15番を背負った。年齢を重ねても強気の走りに変わりはない。
しかし新加入選手も多く加わり、チーム内競争は激化している。キャプテンといえども試合出場は実力次第だ。
「それは理解しています。練習からベストを尽くすことだけは、絶対にやり切ろうと思っています」
その結果がピッチに立つことにつながるかどうかは分からない。しかし、その思いと姿勢は、必ずチームを前進させる。チームマンとして知っている。
ブルースに活躍の場を求めて集まってきた新加入選手たちの情熱と、もともとチームにあった奔放さが混じり合って「いい刺激。いい雰囲気」と感じている。
「(コロナ禍が収束し)世の中が平穏になったら、みんなでワイワイやりたいたですね。すでにみんなのことは分かっていますが、オフ・ザ・フィールドで見えた顔が、もっと繋がりを強くしてくれると思っているので」
今季目指す『リーグワン』ディビジョン3での全勝優勝、ディビジョン2昇格が成る頃には、祝杯をあげられるだろうか。
そこでみんなと笑い、「もっと上へ」と語り合いたい。
乾杯の音頭は、きっとキャプテンにまわってくる。