先日(11月20日)、フランス対NZ戦のキックオフに先立ちルイ・ヴィトン社製のトロフィー・トランクに飾られたウェブ・エリスカップが、同社のアンバサダーである女優のレア・セドゥと、エリスカップを2度掲げた元オールブラックスのジェローム・カイノによってお披露目された。
場所は、ワールドカップ2023の開幕戦、そして決勝戦会場となるスタッド・ド・フランスだ。
トロフィー・トランクは、同社のアイコニックなモノグラム・キャンバスに覆われ、側面には「XV」の文字、赤、白、青のフランス国旗のカラーで前面の扉に描かれた「V」は、「Vuitton」、そして「Victory」を表す。エリスカップを収納する内側にはブルーのライニングが施されている。
「19世紀に初めて製作したトランクは、人が旅行するためのものではなく、美術品を収納して運ぶためのものだった。伝統的なヴィトンのサヴォワールフェール(匠の技)を駆使して、エリスカップが大切に守られた状態で世界中を旅できるように作られた」と同社のマイケル・バーグCEOは語る。
ルイ・ヴィトン社は、1983年のヨットレースのアメリカズカップに始まり、FIFAワールドカップ、テニスのデビスカップ、NBAのラリ・オブライエン・トロフィーを経て、最近ではフォーミュラ1モナコグランプリと、様々なスポーツとのパートナーシップに積極的に取り組んでいる。ラグビーでは2015年ワールドカップに続いて2度目になる。
「チームスポーツの精神は、あらゆる活動に通じる。ヴィトングループでは製造部門と販売部門が二世紀以上共存してきた。どちらも重要で、グループが前進するためには、お互いのことを考えて仕事を進めなくてはならない。ラグビーは特に団体競技の要素が強く、1人で前に出てもタックルされ、ボールを失ってしまう。トライするためには全員でうしろにパスしながら前進しなくてはならない。またラグビーはクリエイティブなスポーツだ。素晴らしいアクションを見せてくれ、魔法のような時間を過ごさせてくれる」とラグビーの魅力に話題が移る。バーグ氏もラグビー経験者なのだ。
ドイツで育ち、フランス北部のリールの大学に進学してラグビーと出会った。
「すべての体型の人に合ったポジションがあり、誰もが受け入れられる。また、どんな激しい試合でも、終われば敵と酒を酌み交わすという独特の文化があり、強い帰属意識を生む」
そんなラグビーにはまった。
ポジションはフッカーだった。
「誰もやりたがらなかったが、よくわからなかったから喜んで引き受けた。冬のフランス北部のグラウンドはぬかるみだらけで、スクラムが崩れるたびに息をするのにシュノーケルが必要だったよ。木曜日の夜にラグビーをしていたが、当時は企業研修中で、翌日ひどい状態で出社して顰蹙を買った」と当時の思い出を語る。
「トロフィーは何千もの人の夢。大切なのは勝利ではなく、勝って自己を超える夢を見ることだ。ラグジュアリーも夢。人々にライフスタイルを提案し、感動を届ける。ハイレベルのスポーツのように」と、バーグ氏はスポーツとラグジュアリーブランドを結びつける。
フランス2023組織委員会のクロード・アチェ会長は、「フランス文化の一端である、この国で受け継がれてきたサヴォワールフェールを活用し、世界中の人々にあらためてフランスを知ってもらいたい。これから2年かけて、このトランクに飾られたエリスカップが世界各地でお披露目される。その後はフランスに残ることになってくれれば…」と本音も漏らす。
これからどんな仕掛けが披露されるのだろうか。フランス2023、試合だけでなく演出も楽しみだ。