ラグビーリパブリック

課題は「オーガナイズ」。経歴話題の伊藤耕太郎、明大の10番を任されて。

2021.11.24

ボールを持っているのが伊藤耕太郎。11月3日の慶大戦(撮影:松本かおり)


 ラグビー選手の伊藤耕太郎は、「田村二世」と謳われる。國學院栃木高を経て明大に入った経歴と、司令塔のSOというポジションが現日本代表の田村優と重なるからだ。

 もっとも、両者のスタイルは異なる。

 身長181センチ、体重92キロの田村が統率力と鋭いキック力を持ち味とするかたわら、身長176センチ、体重84キロの伊藤はスペースへの果敢な仕掛けで魅する。

 メディアで用いられる「二世」の称号に「あまり気にしてはいないですけど、もっと頑張らなくちゃ…というあれ(刺激)にはなっています」と伊藤。先輩の田村に「日本の10番としてのオーガナイズのところ(力)、キックはすごいと思います」と敬意を払いながら、己の特徴をささやかに示す。

「自分はランが得意。そこは、(田村と特徴が)違うかなと」

 3歳で藤沢ラグビースクールに入った。高校1年時から全国大会に出て、2年時には最後尾のFBからSOに転じた。

「相手がBKの時が多くなくて、FWの時が多い。ミスマッチを突いて抜くランが自分の得意な部分ではあります」

 ラグビーでは、守る側は接点の周辺に身体の大きなFWを置くのが一般的だ。攻撃側のFBが動きの身軽なBKとよく対峙するのに対し、最初にパスをもらうことの多いSOはFWと1対1になりやすい。異なるポジション群同士のマッチアップは「ミスマッチ」と呼ばれ、伊藤は相手FWとの「ミスマッチ」を活かす。

 明大では2年目の今季からレギュラーに定着した。秋の公式戦でファーストジャージィを着る際は、「普通の練習試合とは全く違う緊迫した雰囲気」を覚えるそうだ。加盟する関東大学対抗戦Aでは開幕5連勝も、その時々で課題を痛感した。

「10番(SO)としてのオーガナイズというか、チームへの指示の部分はまだまだ。(ものごとに)100点の正解はないですが、(SHの飯沼)蓮さんとも相談しながら『こういう時は、ここの部分(にスペース)が空きやすい』というのは少しずつ頭の中に入れ、なるべく早くFWに声をかけたい。いいアタックができるように」

 話をした後の11月20日、東京・秩父宮ラグビー場で帝京大戦に挑んだ。チーム全体として好機でミスを重ね、7-14で敗れた。12月5日には同じ場所で早大戦へ、細部を再点検していよう。

 伊藤のそれは、「オーガナイズ」に関する事案か。本人は以前、パスを放った後にすぐ全体を見渡す習慣をつけたいと話していた。全体を「オーガナイズ」する力をつけるには、それが必要だからだ。

「パスした後にその方向を見ちゃうという癖が抜けなくて。ただ最近になって少しずつ、パスした後にすぐFWの位置(陣形)を見ることができるようになっています。いい雰囲気の時はいいラグビーができている。(ミスを)引きずらないのが大事です。ここから相手は強くなってきますが、(自身は)まず(試合の)メンバーに入るところから。全力で練習に取り組んでいきたいです」

 周りを束ねながら、勝負所では得意の走りを披露したい。

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