全勝対決は引き分け。優勝の行方は11月28日の最終節に持ち越された。
関東大学ラグビーリーグ戦1部で4連覇を狙う東海大は、21日、東京・江東区夢の島陸上競技場で昨季3位の日大と競り合う。19―19。勝ち点5を奪った側は優勝を決められた80分を、引き分けで終えた。
「色んなシーンで、日大さんのアグレッシブなプレーに最後までリズムを作れないまま終わってしまったかなと。決して受けたわけではないですが、何かが、自分たちのリズムを崩す要因になった。反則に最後までアジャストしきれなかったことが今日の課題かなと。リーグ戦で本当にいい勉強をさせてもらったなというところです」
こう言葉を選ぶのは、東海大の木村季由監督。ドローゲームの捉え方はさまざまだ。対する日大の中野克己監督は、やや前向きに総括した。
「東海大さんのセットプレーに対してどれくらい(対抗)できるか、攻められた時にどれくらい我慢して守れるか(が焦点だった)。選手が最後まで頑張ってくれたことに、うれしく思っています」
今季過去5試合の得失点差は、日大の166に対して東海大の264。ここまでは東海大が他校を凌駕してきたが、この午後は日大がタフさを示した。
LOのテビタ・オト、NO8のシオネ・ハラシリは得意の突進に加え、接点の球への絡みでも際立つ。板倉正矢、飯田光紀主将という日本人FLも、地上戦でしぶとかった。
14―12と2点リードで迎えた後半13分頃、自陣ゴール前右で東海大のモールを止める。さらに塊の後ろから出現した相手のレキマ・ナサミラに、低いタックルとカウンターラックを決める。ターンオーバー。
一発目で下に入った飯田はこうだ。
「自分たちがモールで止めて、止めて…というところにレキマ選手が来た。ダブルタックルで仕留めて、ターンオーバーを狙った感じです」
すでに2トライ奪取済みのナサミラはこの時、やや孤立した状態で強引に飛び込んできていた。
東海大はスクラムを常に押し込んでいて、ラインアウトでは相手ボールを再三、スティール。それでも要所で日大の圧力を受け、自滅する場面を多く作った。
後半37分以降にトライアシスト、コンバージョンを披露したSOの武藤ゆらぎも、こう反省する。
「ゲインラインを取れなかった(前進できなかった)時の接点(の質)が足りなかった」
両軍の勢いの推移は、船頭の決断も揺るがした。
7―7と同点で迎えた前半終了間際、東海大は敵陣22メートル線付近右中間で相手の反則を誘発。ペナルティゴールを決めれば3点リードで折り返せたが、東海大FLのジョーンズリチャード剛主将は「自分たちの形にこだわり続ける」とラインアウトに移行。結局、トライは奪えなかった。
その後14―12と2点ビハインドを背負うと、後半24分、敵陣中盤中央でのペナルティーキックからゴールを選択。ジョーンズは「リセットという意味で」。武藤が蹴った軌道はわずかにそれ、勝ち越しならず。4分後には攻守逆転後の速攻から19―12とリードを広げられた。
19-19で迎えたラストワンプレー。日大は自陣で東海大の反則を誘う。勝ち越しを目指して攻める選択肢もあったろうが、飯田はこうだ。
「あそこでアタックを開始して、ミスしてしまって東海大さんにボールを渡し、トライされるのが怖かった。それで試合を切りました」
リーダーたちの決断に、互いの心理が浮かび上がった。
今度の結果を受け、リーグ戦の優勝の行方は28日の最終節に持ち越された。東海大、日大とも秩父宮で流経大、法大とそれぞれぶつかる。
勝ち点で並んだままの場合は得失点差で上回る東海大が優勝するとあり、日大は是非ともボーナスポイント(相手に3トライ差以上付けて勝てば1)付きの勝利で勝ち点5を得たいところだ。飯田は続ける。
「きょうはセットプレーのよさがあまり出なかったので、まずはそこを修正。それとブレイクダウン周りの強さを発揮する。BKは展開力があるので、アタックテンポを落とさない。そうして法大さんから勝ち点5を獲りに行きたいです」
かたや東海大のジョーンズは、「ラック周辺のペナルティ(連発)でグタグダと80分が過ぎてしまった。次への課題も明確になった」と次を見据えた。