「選手たちはすばらしいプレーをしてくれたと思う。日本らしいアタックで相手にプレッシャーをかけることができた。自分たちの小さなミスから相手にチャンスを与えてしまった部分があったが、そこで選手たちは下を見ることなく、ハーフタイムから自分たちのプレーを取り戻し、後半良いプレーをしたことは収穫だった」
11月20日、エディンバラのマレーフィールドで激闘を終えたあと、日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチはそう振り返った。
20-29。スコットランド代表に惜敗。2年前に日本で開催されたワールドカップではブレイブブロッサムズと呼ばれる桜のジャージーの戦士たちが歓喜したが、今回は、胸にアザミが咲く紺色のジャージーの男たちがホームでリベンジした。
ワールドカップで初のベスト8入りを果たした日本代表だが、世界中を混乱させた新型コロナウイルスの影響で2020年は活動できず、今年ようやくテストマッチ6試合を戦うことができた。しかし、ヨーロッパや南半球の強豪国と比べると圧倒的に少ない。次のワールドカップへ向けて準備は遅れているという見方もある。
それでも、敵地でタフな経験をできたことは間違いなく収穫だ。
「今回、このマレーフィールドでレベルの高いスコットランド代表と試合ができた経験を、しっかり学びとして今後に活かしていきたい」
日本代表の指揮官は堂々と前を向く。
日本代表はこの試合、ボールポゼッションを強く意識した。自分たちの強みのフィットネスレベルをしっかり活かして、自分たちのペースに持ち込むことができればいい試合ができると信じ、ボールを回し続けた。日本代表は立ち上がり、ボールキープで18フェイズ重ねた。堅守を武器とするスコットランド代表相手に、奪ったトライはゴール前のラインアウトを起点とした1本だけに終わったが、80分間を通して相手にプレッシャーを与え続けた。
「本当にテストマッチだったと思う。横浜で試合をした時と同じレベルのプレーを彼らはしてきた。日本のレベルは高かった。2019年と同じだ」
敵将のグレガー・タウンゼント ヘッドコーチは、苦汁をなめさせられたワールドカップから2年ぶりの再戦で勝利したあと、因縁の相手とされる日本代表を素直に称えた。
「日本は本当にプレーの精度が高いし、気持ちも熱いチームだ。フェイズを重ねられると本当にやっかいになる。あれだけボールをキープしてフェイズを重ねるチームは世界でもそうはいない」
日本代表はアタックだけでなく、ディフェンスの奮闘も光った。コリジョン(衝突・激突)の部分で対応できたところもあり、フィジカル的にもトレーニングの成果は出ていた。
その一方で、セットピースは課題だと日本代表のジョセフ ヘッドコーチは見る。
「スクラムに関しては経験のなさで反則を犯したところがあり、ラインアウトは常に自分たちにとってビッグチャレンジだが、体の大きい相手に対して、モールをどういう形で止めていくかということは改善していかなければならない」
次のワールドカップまであと2年。
2019年の日本大会前は、南半球のトッププレーヤーたちを相手とするスーパーラグビーにサンウルブズというチームで参戦して激しい試合を数多く経験できたが、いまはその機会がなくなり、それをどう補っていくかは重要な問題である。
若い選手たちの育成も必要だ。
「魔法のレシピはない」
ジョセフ ヘッドコーチがそう語る通り、これからもハードワークをしっかり続けていかなければならない。
日本代表としての年内の活動は今回のヨーロッパ遠征で終了となるが、選手たちは所属クラブに戻り、1月からはジャパンラグビーリーグワンが始まる。
「このあと、選手たちが国内リーグに戻って成長していくことが重要であり、楽しみにしていきたい」