6万4000人の観衆を集め、満員御礼のマレーフィールドで行われたこの日の試合。オータムネーションズシリーズの最終戦は、会場を沸かせる好プレーが連続し、29-20でスコットランドの勝利となった。
「日本がボールを保持し続け、フェーズを重ねてくる攻め方には苦しめられましたが、日本がこういう攻め方をしてくるチームだということはよく知っています。ただ、レフリーはボールを保持して攻めているチームに良い笛を吹くもので、これが原因で多くのペナルティを取られたのは課題です」
試合後の会見で、スコットランドのグレガー・タウンゼント監督はラックで犯したペナルティー数を反省点として挙げた(7/日本は3)。結果としては敗戦となったが、比較的キックを少なくしてボールを保持するこの日の日本のゲームプランは、スコットランドを苦しめる要素となった。
だが、比較的少なかった日本のキックから、スコットランドにしてやられた場面もあった。先週の南アフリカ戦で2トライを挙げ、スコットランド代表の最多トライ記録24に並んだFBスチュアート・ホッグ。日本戦の前半27分にはキックカウンターアタックでチャンスを作り、その後のフェーズから自らトライを決め、代表最多トライ記録を更新した。
「もちろん今日はチームが勝てたことが何より大事だが、見れば分かる通り、あのトライは本当に嬉しかった」
スコットランドラグビーの歴史に名を刻んだキャプテンは、喜びを爆発させたトライシーンを振り返った。同国の歴史に残る名キャプテンといえば、現在NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安に所属する、SHグレイグ・レイドローがいる。
「グレイグとは、今でもよく連絡をとっている。彼は本当に日本での生活を楽しんでいるようだ。今日も、試合が終わってすぐにお祝いのメッセージがきていたよ」
ラグビー界での日本とスコットランドの関係は、2019年ワールドカップでの因縁だけには留まらないようだ。実際に試合前日の会見で、スコットランドラグビー界にとっては大きな悲劇となったワールドカップでの日本戦について聞かれたホッグは、「あれはもう相当前の話だし、リベンジなどという感情はまったく持っていない」と、余裕のコメントを残していた。
また、オーストラリアに23-32と健闘はしたが、アイルランドに5-60で大敗し、格下のポルトガルを相手に38-25の辛勝で終わった日本は、明らかに不調と見られていた。トップリーグの中断に加え、2019年ワールドカップ以来今年の夏までテストマッチを一切行えなかった日本代表が、本調子ではないのは当然だろう。そんな状況に置かれたチームにしては、いい戦いを見せていたという見方もある。
「アイルランド戦を観て、日本は本当に不調に喘いでいるチームに見えたが、今日は予想していたよりかなりいい出来だったと思う。ポルトガル戦も辛勝だったようだが、今日の日本はこの秋で一番いい試合をしたのではないか」とは、タイムズ紙のアリスター・レイド記者のコメントだ。
この秋、12選手を代表デビューさせてチームに新しい血を入れたスコットランド。油断できない相手をきっちりと倒し、いい形で秋のシーズンを終えることができたというのが正直な気持ちだろう。
日本代表ツアー初戦のアイルランド戦の大敗は、敵将ジョナサン・セクストンの100キャップ試合。今回も国際的名手の記念の場になった。日本にとっては収穫と課題が入り混じる欧州遠征だったが、2023年へ向けた戦いは、まだまだこれからだ。