普通ならブレーキをかけてしまうコンタクトの瞬間に、目を見開き、逆にアクセルを踏み込んでいく果敢な選手たちがいる。花園近鉄ライナーズの片岡涼亮(かたおか・りょうすけ)もその一人だろう。大阪・摂津四中からラグビーを始め、千葉・流経大柏、立命館大ではキャプテンも務めた。
チーム2年目の片岡は今秋、花園近鉄ライナーズのプレシーズンマッチ4試合にウイング(WTB)やセンター(CTB)で先発。2年目ながらゲーム主将も務めており、リーダーシップも発揮している。
今季の花園近鉄ライナーズは水間良武ヘッドコーチの下、ボールを大きく動かす新スタイルを構築中。観客はもちろん自分たちもワクワクさせるラグビーだ。
「アタック面はより複層的になりました。いろんなオプションを使います」(片岡)
新たなスタートを切っているチームにおいて、片岡は弾丸ランナーとして機能する。全速力で駆け込み、力強いハンドオフなどスキルも駆使しながら推進力を生み出す。身長171センチはウイング、センターとして大柄ではないが、高確率でゲインラインを越える。
なぜゲインできるのか。なぜ強いのか。その秘訣を訊ねると、片岡の口から出てきたのはニュージーランド代表(オールブラックス)歴のある海外選手の名だった。
「大学の時にニュージーランドのウェリントンに留学しました。そこでハリケーンズ(スーパーラグビーチーム)の施設を使わせてもらった時、ラウマペ選手にお会いしました」
ンガニ・ラウマペ。全力の接点勝負が魅力の元13人制選手で、15人制転向後にニュージーランド代表として15キャップを獲得。2021年は海を渡り、現在フランス国内1部(TOP14)のスタッド・フランセに所属している28歳だ。
片岡はオールブラックスデビューしていた当時のラウマペと、握手をして、言葉を交わし、驚いた。
「ラウマペ選手と握手して挨拶したんですが、自分と目線がまったく同じだったんです。もちろん身体の分厚さは違いましたが、それからは『あのサイズでオールブラックスでできるんだったら日本でできへんわけないな』と思うようになりました。サイズが小さいことを言われたこともありますが、ラウマペやってるし、と思いながら(笑)。これまでも気持ちでは絶対に負けないようにしていましたが、目指すところ、目指す選手がより明確になりました」
これまでも強気に仕掛けてきたが、ラウマペの存在が後押しになった。海外選手に混じったラグビー漬けの日々も自信になった。
今季はリーグワン2部(ディビジョン2)に所属する花園近鉄ライナーズの目標も、すでに明確になっている。
「今シーズンはディビジョン1に上がることが目標です」
2部優勝、そして1部昇格へ。片岡涼亮の突進がチームの着実な一歩になる。