0－5。
「（第三者から見れば）めちゃくちゃ面白い試合だったと思います」
激闘から1週間後。法政二高の紀伊悠佑部長は晴れやかな表情の中に、悔しさを見せた。神奈川県の花園予選3回戦、法政二は慶應高と対戦し、惜敗した。
序盤に先制トライを許すも、前半は相手の猛攻に耐え続ける。後半は何度かチャンスを作ったが、仕留めきれなかった。
「前半は3本くらい取られてもおかしくない状況でした。FWの先輩方がよく守ってくれました」
そう振り返るのは、アウトサイドセンターで先発した平野仁。ルーキーながら、192センチ、80キロの体躯で突破役を任される。初めての15人制での公式戦も、「いつも通りプレーできた」。
「相手が慶應ということでみんな気合いが入ってました。自分も緊張していられないなと」
平野は法政二中出身。中学卒業前に、現高3生とプレーすることをひとつの目標にしていた。中学に入学した時の3年生がかっこよかったからだ。
「1年の時は出られなかったので、一緒にプレーしたかった」
慶應高にも中学時代に対戦したメンバーが何人かいた。2年時は慶應中に5－26で負けている。中3時は、決勝で慶應に勝った桐蔭中に（48－7）、予選リーグで15－21と惜敗。しかも試合終盤まで分からない激戦だった。
「中3の時は（慶應中より）自分たちの方が強い感覚があったので、リベンジしたい気持ちがありました。けど、対戦は叶いませんでした。なので今回（対慶應高）はなおさら勝ちたい思いが強かったです」
幼なじみに誘われて、小学2年から田園ラグビースクールで楕円球を追った。小6で身長は172センチまで伸びる。学校では一番だったが、FWをやらされることはなかった。
「その頃からBKにはこだわりを持っています」
赴任して6年目になる紀伊部長の指導観も見える。
「身長や体重は一生の長所になるとは限りません。（平野も）身長にはとらわれず、スキルの習得を大事にしてきました」
平野は今秋に行なわれたTIDユースキャンプ（Bigman & Fastman Camp）に参加した。昨年から同キャンプの存在に気づき、狙っていた。田園RSで同級生だった、早大学院の田能開成（PR／186㌢119㌔）と自薦で応募。ともに受かった。
事前で応募する動画には、主に強みであるサイズを活かした突破力とオフロードパスでアピール。セッションでも伊達圭太BKコーチ（城東監督）にオフロードのコツや意識していることなどを積極的に質問した。
憧れの選手にもソニービル・ウィリアムズや中野将伍ら、オフロードを得意とするプレーヤーの名を挙げる。
「（2人の）オフロードやそこにいたるまでのポジショニングを映像で見てます」
最近はFBをやることも多くなったから、サイズが重なる、イズラエル・フォラウのプレーもよく見るようになった。
同キャンプでは、花園出場経験のある先輩たちからも意見を聞くことができた。「自分が考えていることは間違ってないし、自信が持てました」と話す。花園予選に3年生たちと試合には出られたけど、そこがゴールではない。もっと強くなりたい、もっとうまくなりたいと、常に高い場所に意識はある。
「慶應戦を終えてフィジカルはまだまだだと思ったので、一回LOも試してみたいです。当たり方、体の使い方を学べると思うので。チャレンジできる機会は今だけですから」
その飽くなき向上心で、さらなる高みを目指す。