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ジェイミー・ジャパンの底力が問われる一戦。11.13ポルトガル戦プレビュー【J SPORTSで生中継&LIVE配信!】

2021.11.12

予想外の完敗を喫した11.6アイルランド戦。SH流大は「それぞれがプレッシャーを受け続け、立て直せなかった」と唇を噛んだ(写真/Getty Images)

気迫満点のアイルランドに完敗。残り2戦で誇りを取り戻せるか

ラグビーワールドカップ2023フランス大会の開幕まで2年を切り、この秋の国際交流期間は各地で世界中の強豪国による激闘が繰り広げられている。そうした中、日本代表は10月23日に2年ぶりの国内でのテストマッチとなるオーストラリア戦を行った後(23-32で敗戦)、ヨーロッパに遠征して11月6日にアイルランドとのツアー初戦に臨んだ。

今年7月には同じダブリンのアビバスタジアムで31-39の接戦を演じており、期待が高まる中で迎えた4か月後の再戦だったが、結果的には厳しい現実を突きつけられる戦いとなった。この試合で記念すべき100キャップ目を獲得したキャプテンのSOジョニー・セクストンをはじめ、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのツアーメンバーに選出されたNO8ジャック・コナンやCTBバンディー・アキら前回の対戦では出場していなかった主軸が復帰したアイルランドは、開始直後から強みを存分に発揮して主導権を掌握。多彩なプレーとボールへの強靭な絡みで、攻守にジャパンを圧倒する。

防御のギャップを見逃さず一気に仕留め切った前半4分のWTBジェイムズ・ロウの先制トライを皮切りに、前半だけで4トライを挙げて29-0と大きく先行。後半もまったく緩むことなく攻め続けて加点し、リードを拡大していく。相手の気迫みなぎるパフォーマンスにジャパンは1トライを返すのが精一杯で、終わってみれば2000年11月の対戦(9-78@ダブリン)に次ぐ、両国のテストマッチ史上2番目の失点および得失点差の完敗となった(最終スコア5-60/通算成績はジャパンの1勝11敗)。

試合後、FLピーター・ラブスカフニ主将は「モメンタム(勢い)の部分でアイルランドにやられてしまった。流れを自分たちで止めることができなかった」と試合を振り返り、NO8姫野和樹は「気持ち、マインドセットが足りなかった。それに尽きる」と敗因を口にした。2019年のラグビーワールドカップで初黒星を喫した相手に、7月のテストマッチに続いてホームで締まりのないゲームはできない――。そんなアイルランドの決然たる意志は、プレーの随所に立ち上った。同国のシンボルであるセクストンの100キャップの節目に、快勝で花を添えたいという思いも強かっただろう。

ジャパンにとっては、世界のトップ国に対しメンタル面で受けに回ればこうなるという教訓をまたしても刻まれた格好だが、ヨーロッパツアーはまだ初戦を終えたばかりであり、誇りを取り戻す機会は十分に残されている。とりわけ今秋のテストシリーズ4連戦のうち唯一世界ランキングが下の相手となるポルトガルとの次戦は、チームの真価と底力が問われる一戦となる。

ホームで意欲的に挑んでくるポルトガル。フィジカルバトルとラインアウトがカギに

2度目のワールドカップ出場を目指すポルトガル。写真は今年3月に行われたジョージア戦(写真/Getty Images)

欧州遠征2戦目の相手となるポルトガルは、シックスネーションズに次ぐヨーロッパの国別対抗戦『ラグビー ヨーロッパ チャンピオンシップ』に参戦するチームで、2021年の同大会での成績は3勝2敗の2位。優勝のジョージアに16-29、4位ルーマニアに27-28で競り負けたものの、スペイン、オランダ、ロシアにはいずれも40得点以上を挙げて完勝している。国際統括機関のワールドラグビーが発表する世界ランキングは、11月8日時点で19位。ワールドカップは過去2007年フランス大会の一度だけ出場しており、4戦全敗でプールマッチ敗退となった。チームの愛称は、ポルトガル語で狼を意味する『オス・ロボス』だ。

日本代表との正式なテストマッチは今回が初となるが、2007年のワールドカップ直前にイタリアのヴェネトで入替自由のトレーニングマッチとして一度だけ対戦しており、その時は日本代表が15-13で勝利。もっとも当時のポルトガルはほとんどのメンバーがアマチュアで、フランスリーグなどでプロとしてプレーする選手も多い現在のチームは、元フランス代表WTBのパトリス・ラジスケ監督のもと、サイズやパワー、スキルなどあらゆる面で大幅に進歩を遂げている。ワールドカップ2023の出場権をかけたヨーロッパ地区予選における有力候補のひとつでもあり、今週末の戦いでは、ホームの大声援を背に満々の気迫で挑んでくることが予想される。

ジャパンにとってまずポイントとなるのは、そうした相手の意欲に受けることなくきっちりと体を当てた上で、自分たちがアタックする機会をどこまで増やせるか、という点だろう。アイルランド戦ではフィジカルの強さを押し出してたたみかけてくる相手の攻撃に対抗しきれず、そのままトライまでつなげられるシーンが多かった。出足鋭いディフェンスで圧力をかけ続け、ポルトガルの勢いを断ち切ることが、勝利への条件となる。

また直近の2試合は、マイボールラインアウトを安定して確保できなかったことも大きな敗因となった。攻撃の起点が定まれば試合運びにもリズムが生まれ、狙い通りにアタックを仕掛けやすくなる。メインのジャンパーとなるLO陣に負傷者が相次ぎ、苦しいやりくりが続いている状況だが、ゲームの流れを左右する重要な局面だけに、いいボールを供給できるよう立て直しを期待したい。

2023年へ向け誰がチャンスをつかむのか。メンバー起用にも注目

ここまでの2試合はベンチで戦いを見つめたリーチ。多くのファンが復活を待望している(写真/Getty Images)

このポルトガル戦に関して遠征前から注目されていたのは、メンバー起用だ。コロナ禍でテストマッチの機会が大幅に減る中、今夏のツアーも含めここまでは強豪相手の勝負最優先のゲームが続いていたため、若い選手にはなかなか出場機会が巡ってこなかった。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ、藤井雄一郎ナショナルチームディレクターともに、この試合ではフレッシュなメンバーを起用することを示唆しており、誰がどのような形でチャンスを与えられるのか、関心が集まるところだろう。

現在遠征中の日本代表38名のうち、オーストラリア戦とアイルランド戦に出場したのは24名。残る14名の中で、PR淺岡俊亮、LOワーナー・ディアンズ、FL/NO8福井翔大、WTB髙橋汰地、WTBジョネ・ナイカブラ、WTB中野将伍の6人がノンキャップの選手だ。いずれも非凡なポテンシャルを秘め、未来の日本代表を背負う逸材と期待されているだけに、メンバー入りとなれば多くの注目を浴びるのは間違いない。

無論テストマッチである以上、大前提となるのは勝利することだ。実績ある選手を軸に据えつつ、そうした若手やレギュラー奪取を狙う経験の浅いメンバーをいかに組み合わせ、チームとして機能させるかが、首脳陣の腕の見せどころといえるだろう。この点では2019年のワールドカップ後、なかなかベストパフォーマンスを発揮できない状態が続いている前キャプテンのリーチ マイケルの起用法にも、さまざまな角度から視線が注がれている。プレー、精神の両面で絶大な信頼を集めてきたリーダーであり、ラグビー界にとどまらない知名度を誇る無二の存在だけに、復活を待ち望む人は多いはずだ。

このようにいろいろな意味で見どころ満載の戦いとなる、今回のポルトガル戦。ぜひ内容をともなう勝利を手にして、翌週のスコットランド戦、さらには2年後のワールドカップフランス大会へ向けた飛躍の足掛かりにしてほしい。

【日本 vs. ポルトガル】
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