フルタイムの笛が吹かれたあと、ピッチ横にある得点板に3点が加えられた。
筑波大(以下、筑波)のFB松永貫汰主将がDGを決めた直後、ホイッスルは鳴った。
24-21。
11月7日に青山学院大学(以下、青学)緑が丘グラウンドでおこなわれた関東大学対抗戦で、筑波が青学に辛勝した。
優勝争いには距離があるものの、両者の頭には大学選手権出場があった。
筑波はここまで上位校に奮闘するも1勝だけ。青学は4戦全敗。しかし、この日勝ち点5(相手より3トライ多く取っての勝利)を獲得すれば、道が開ける。
ホームの青学がボールを持つ時間が長い試合だった。
勝ち点5を目指す姿勢が、アグレッシブさを呼んだ。黒いジャージーのFWは80分を通して働き続け、攻撃時間を長くすることで筑波に圧力をかけた。
筑波にとっては難しい試合だった。開幕から4戦続けて強豪校と戦い、この日今季初めて、前シーズンに自分たちより下の順位だったチームと戦った(昨季は筑波=5位、青学=8位。両者の対戦は80-15で筑波の勝利)。
もちろん、気持ちの緩みなどない。
ただ相手チームが、これまでの自分たちと同じように全身全霊をかけて挑んでくる。
松永主将は「もの凄いプレッシャーをかけてくると分かっていた。それに負けないようにしようと言っていたが、苦しみました」と振り返った。
先制は青学。キックオフ直後から攻守に前へ出て筑波陣で戦った。
前半13分だった。強みとしているアウトサイドのランナーが走った。
スクラムから攻める。左サイドのWTB榎本拓真がゲイン。そのあと右に振り、WTB手島究がインゴール右隅に飛び込んだ。
前半20分にモールからトライを奪った筑波が同点に追いつき、7-7でハーフタイムに入った試合は、後半が始まってすぐ、天秤が傾いた時間があった。
4分、8分と筑波SH鈴村淳史がインゴールに入る。両方とも、PKからすぐに攻め込み、背番号9が仕留めたものだった(筑波が21-7とリード)。
しかし、スコアは開くも青学の動きは落ちなかった。
後半18分過ぎ、スクラムから攻める。BKとFWが一体となった攻撃で前進した。
一度はボールを失いながらも圧力をかけ続けてPR田中創太郎がトライ(22分/Gも決まり7点差に)。
37分にはキックカウンターから攻めて反則を誘う。
PK→ラインアウト。そのモールをBKも加わって押し込む。右ライン際からのコンバージョンをSO桑田宗一郎が決めた。
21-21と追いついた。
そこから10分ほど攻防が続き、決着は筑波FB松永主将のDGでついた。
「敵陣で戦うことが大事。そう考えてプレーしていました」
殊勲者はそう話し、反省した。
「相手のかけてくるプレッシャーに自分たちのラグビーで打ち勝とうと思っていましたが、それができなかった。(前戦の明大戦に完敗し)ディフェンスでプレッシャーをかけていこうといっていたのに、できなかった」
同主将は、「ただ、(大学選手権前の)対抗戦でこういうゲームを経験できてよかった」と、苦しみながらも勝ち切れたことについては前向きだった。
嶋﨑達也監督は、「今季ここまでの4戦で出た課題についてチャレンジしていこうと準備してきました」
変化しながら勝つ難しさがあった。
大学選手権出場は遠のくも、青学にとっては積み上げてきたものを出せた80分だった。
清水孝哉監督は「今季、やってきたことをいちばん体現できた試合」と選手たちの奮闘を評価した。
「自分たちの強みを出し、攻撃時間を長くしようと考えました。(両WTBが走った)最初のトライは理想的。ロータックルもあり、ロースコアに持ち込めた」
桑田主将は、「これまでと違った形でこの試合に臨んだ」と話した。
「これまでは相手のやってくることに対してどうするか、でした。きょうは自分たちにフォーカスしました。ポゼッション重視で、勝ち点5を取るつもりで攻めた」
仲間たちを信じていた。
「FWがずーっときついことをやってきているのを知っています。(働き続けてくれる)自信がありました」
昨季80点を奪われて大敗した試合にも出ていた主将は、その違いを語った。
「その場、その場の判断だったのが、今季は個人の判断でなく、戦術に沿って、15人全員で動くようになっている」
最終的に敗れるも、目指す形で戦えた80分は自信になった。
シーズンが深まるにつれて結束が強くなるのはチームが正しい道を歩んできたからだろう。
関東大学対抗戦の成績表を見れば、青学の欄には黒星が5つ並ぶ。しかしその黒色には、本当は濃淡がある。
勝ち点1(7点差以内の敗戦)を手にしたこの日は、グレーに近いか。残り2戦。選手たちの目は、白もとらえている。