後半33分、スコアは29-10と開いた。
帝京大快勝の空気も漂った。
しかし、その数分後の試合終了時は29-22。赤黒のジャージーが帝京大陣ゴールラインに迫っていた。
互いにブレイクダウンで真っ向勝負。気持ちのぶつかり合う試合となった。
前半は帝京大が12-3とリードした。スクラムで優位に立ち、得点機を作った。
前半5分、HO江良颯のトライはラインアウトから。その直前のスクラムで圧力をかけ、早大のコラプシングを誘ったのがきっかけだった。
23分、SH李錦寿が追加のトライを挙げる。
早大ボールのスクラムを押し込み、ボールがこぼれたところを拾い、インゴールに運んだものだ。
帝京大は前半のほとんどの時間を早大陣で過ごした。
PR細木康太郎主将は、試合を通して上回ったスクラムについて、「早稲田用に変えたことはなく、やってきたことを8人でやり切ることに集中した」と話した。
「ファーストスクラムでヒットした瞬間に自信を持てた」と手応えを口にした。
前半の終了間際に攻め込まれてPGを許し、後半7分にフェーズを重ねられてラインブレイクを許す。SH宮尾昌典のトライ(SO吉村紘のGも決まる)で12-10と迫られるも、途中出場の選手たちが好パフォーマンスを見せた。
後半20分、WTBに入ったミティエリ・ツイナカウヴァドラのトライはラインアウトから攻撃を継続してのもの。
ここも、スクラムを押してPKを得たのがきっかけとなった。
26分、32分に追加したトライは、ともに早大の反則を誘った後のもの。
前者は好タックルから始まったもので、帝京大・岩出雅之監督は「早稲田の展開をいかに止めるか。選手たちは集中力高く、全員がよく走った」と開幕5連勝、3年ぶりの対抗戦優勝に近づく勝利を喜んだ。
早大は特に前半、スクラムでの劣勢をきっかけに自陣で戦うことを強いられた。
終盤にFB河瀬諒介の活躍もあり追い上げたが、結局届かなかった。
ただ、大田尾竜彦監督は淡々としていた。
指導陣の指示通りにプレーを遂行する選手たちの力を感じたからだ。
スクラムはやられたが、ダイレクトに挑んだ結果。この日の体感を先に活かそうと考えている。
選手たちが指示通りにプレーした結果勝てなかったのだから、同監督は「(負けたのは)指導陣の責任」と話した。
「先発した15人はゲームを作れる選手たち。後半に勝負をかけるつもりだった」と話した。
だから、ほぼすべての時間を自陣で戦いながら3-12というスコアで終えた前半に及第点を与えた。
ハーフタイムには、「よく守ったのだから(後半は)攻めよう」と選手たちを送り出した。
追い上げは偶然でなく、フィットネスなど、積み上げてきたものがあるチームとしての必然だった。
「自分たちの土俵で戦えなかった」と反省した。
しかし、相手の土俵に引きずり込まれなければやれる手応えは確かに感じた。
シーズン中盤、両チームの足取りが悪くないことを示す試合だった。