ラグビーリパブリック

天理大の新SO。松永拓朗を目標にするルーキー・筒口允之の現在地。

2021.10.30

天理大の筒口允之は10月31日の摂南大戦でもSOでの先発が決まった(撮影:平本芳臣)

 10月31日、天理大は関西大学Aリーグの4戦目(対立命大)を迎える。
 開幕戦の近大戦を落としてからは、関大、摂南大に連勝。3戦目の摂南大戦では前半苦しみながらも、最後は40-0と完封勝利を飾った。

 その試合でプレイヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に輝いたのが、新たに漆黒のジャージーの10番を背負う、ルーキーの筒口允之(まこと)だ。

 この日は特にキックで見せ場を作った。
 前半は長い時間、自陣でのディフェンスを強いられていたが、終了間際にようやく脱出。39分にスクラムでPKを得ると、筒口は敵陣22㍍ライン付近左から右サイドへ大きくキック。WTBアントニオ・トゥイアキへと渡り、先制トライにつなげた。

 後半13分には、今度は右から左へのキックでWTB内村祐介のトライをアシスト。その前の9分には自ら走り切ってインゴールを割っている。

 初のPOM選出も、本人は浮かない表情でこう言った。
「キックはミスキックを連発してしまいましたが、トライをアシストできたのは良かった。ただディフェンスやサインチョイス、ゲームコントロールで足りないところがまだまだあります」

 小松節夫監督は「落ち着いてやってくれている」と前置きしながら、高い期待を込めてこう話す。
「ゲームの流れの中で絶対に切らないといけないところ、サイン選択などを含めて、まだまだいい方向にチームを持っていくことに関しては勉強中なのかなと。1試合1試合経験を積んで、チーム全体を良い流れに持っていけるようなスタンドオフになってほしい」

 筒口は高校との違い、大学での難しさを「プレッシャー」と語る。
「自分へのプレッシャーだったり、自分がパスする味方の選手へのプレッシャーが違う。相手のディフェンスに対応して、どのタイミングでパスを放るのか、自分たちのポッドを作って、どうアタックを変えていくのかが難しい」

 5歳から長与ヤングラガーズでラグビーを始め、中学は長崎ラグビースクールで楕円球を追った。小学時に剣道、中学はソフトテニスもやっていたが、得意とするキックにつながりそうなサッカーはやったことがなかった。
「キック力は公園で蹴ったり、先輩と一緒に取り組んでいて伸びた感じです(笑)」

 高校は長崎南山を選び、昨季は主将としてオータムブロックチャレンジを制す。九州ブロック代表として第100回の花園に出場した(1回戦で東福岡に0-55)。
 天理大への志望は、はじめからではなかった。
「大学のことをあまり知らなくて。スタッフの中村さん(龍、S&Cコーチ)とのご縁もあり、天理大を知りました。天理大は体が小さい選手でも活躍できる。こういうチームで活躍して、関東のチームを倒して日本一になりたいと思いました」

 170㌢、80㌔と上背はないが、「1年から(10番を)取っていこうと決めて入学した」と、早くも昨季日本一のジャージーを着る決意を固めていた。

 春の春季トーナメントから先発を任され、秋の公式戦でもここまで3戦フル出場。近大との開幕戦は「目の前のことで正直、いっぱいいっぱいだった」と語るも、「3試合戦ってキックパスだったり、少しずつですけど周りを見て余裕を持ったプレーができているように思う」と自身の成長をわずかだが感じている。

 夏以降は同じ1年生のSH藤原健之朗とHB団を組むことも増えてきた。その光景は、1年時から活躍してきたSH藤原忍(クボタ)とSO松永拓朗(東芝)の4年前と重なる。
「先輩方から去年の藤原さんや松永さんに比べたら喋れてないから、もっとしゃべれと言われます」

 筒口が目標とする選手もその松永だ。
「まだまだほど遠いけど、努力していつかは追い越せるような選手になりたい」

 偉大な先輩をターゲットに、一つひとつ階段を上る。