関東大学リーグ戦1部の雄として年々存在感が増している日本大学。昨季は大学選手権で2年連続のベスト8に到達した。
主力メンバーが多く残る今季は、関東リーグ戦で開幕3連勝。強みのひとつであるディフェンスも試合を重ねるごとに精度が高まっている。中央大学との開幕戦は50-22、続く専修大学戦は86-3、そして10月17日の大東文化大学戦では完封勝利(31-0)だった。
大東大戦の前半は、冷たい雨風が吹きつけるコンディション。日大と同じく守備にこだわる大東大も、HO酒木凜平主将、FL吉瀬航太らFW陣をはじめ、SH稲葉聖馬、CTB戸野部謙といったBK陣も鋭いタックルで堅陣に貢献した。
しかし我慢比べでは日大も負けなかった。日大の先発FWは8人中7人が4年生。つまり学生ラストシーズンに懸ける者が先発FWに7人いた。
「フォワードは4年生メインです。みんな自立していて、厳しい場面でも心が折れません。大東大戦では我慢して戦うことができました」
そう語るのは、愛知県名古屋市出身の4年生PR鈴木哉斗だ。
新潟・開志国際高ではラグビー部とアメフト部に所属。週の3日間はラグビー、残りはアメフトに打ち込むという二刀流生活を送っていた異色の22歳だ。
「週前半の3日間はラグビー、後半はアメフトといった生活で、アメフト部ではキャプテンもやっていました。アメフトのポジションはオフェンスラインとディフェンスラインで、アジリティや毎回全力で当たる力はアメフトで鍛えられたと思います」(PR鈴木)
卒業後に進んだ日大での先発定着は今季からだ。4年生になって掴み取った背番号「1」が何よりも嬉しく、重みを感じている。
「これまで試合に出られなかったぶん、1番を噛みしめて、一戦一戦良い試合をしたいです」
PR鈴木と同じく、今季から先発に定着した4年生FWはまだいる。
佐賀工業出身のPR山内開斗だ。国内プロップとしては最大級の188センチ、123キロという体格を誇る。
「もともとロックでしたが大学3年の前半あたりからプロップをしています。プロップに固定されてからは、体重を増やそうと思ってとにかく食べて、プロテインを飲んでウエイトも頑張りました。基礎練習が大事ということで、フッカーの藤村先輩(琉士/現NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安)が、練習後のタイヤ押しなどに付き合ってくれました」(PR山内)
公式戦初出場は大学3年。シーズンのラストゲームとなった大学選手権準々決勝の明治大学戦だった。後半28分の途中出場から、そのHO藤村とスクラム最前列に並んで「明治大学さんを相手にスクラムを押すことができました」。プロップ転向1年目にして大舞台で手応えを掴んだ。
元ロックらしくモールへのこだわりも強い。
「モールが塊になって進み出して、トライを取った時は気持ちが良いです。大東大戦など、フッカー(井上風雅/2年)以外の先発FWが4年生で同期なので、日頃から話したり、団結力があります。モールは練習後に4年生を中心に残って練習をしています」(PR山内)
試合週の練習後は、毎日のようにモールの操作術を鍛錬するという。闇雲に押しまくるのではない。巧みに前進するための確認作業だ。
モール最後尾につくことが多い2年生のHO井上は、開幕3戦で13トライ。大東大戦では5トライ中4トライをスコアしたが、そのうち3トライが実にラインアウトモールからだった。上級生FWの日々の鍛錬がHO井上のトライ量産を支えている。
中野克己監督にもモールが武器になっている手応えはある。
「メンバーが残っていることもあって、去年もある程度やれていたモールは強みです。ラインアウトモールはある程度計算できるのかなと思っています」(中野監督)
4年生らしい結束力が生み出すモールは大きな武器だ。さらには大東大を完封したディフェンスもある。今後さらに武器を増やし、磨き、ベスト8のその先を目指す。