10月23日、日本代表が2019年のラグビーワールドカップ以来、実に2年ぶりとなる国内でのテストマッチを戦う。その相手は、現在世界ランキング3位、過去2度のワールドカップ優勝を誇るオーストラリア代表ワラビーズだ。日本代表とワラビーズは過去5回対戦しており、すべてワラビーズが勝利を収めている。ここではその足跡をたどりながら、両国の激突の歴史を振り返ってみたい。
<参考:過去の対戦成績>
1975年8月2日 ●7-37(@シドニー)
1975年8月17日 ●25-50(@ブリスベン)
1987年6月3日 ●23-42(@シドニー/第1回W杯)
2007年9月8日 ●3-91(@リヨン/第6回W杯)
2017年11月4日 ●30-63(@横浜・日産スタジアム)
初対戦は1975年の豪州遠征。第1回W杯では19点差と奮闘
日本代表がワラビーズと最初のテストマッチを戦ったのは、初のオーストラリア遠征を行った1975年8月のことだ。5週間のツアーで9試合を行うタイトなスケジュールの中、3勝1敗で迎えたツアー第5戦の第1テストでは、地力で上回る相手にじわじわとスコアを広げられる展開で6T5G1PGを許し、7-37で敗戦。
遠征最後のゲームとなった8月17日の第2テストは、体を張ったタックルとBKのスピーディーなアタックで前半15-22と奮闘したものの、後半の立ち上がりに3連続トライを奪われて突き放された。
なお、この試合で日本代表のCTBを務めたのは現日本協会会長の森重隆氏で、ワラビーズの8番を背負っていたのは、今回のジャパンに名を連ねるFLジャック・コーネルセンの父、グレッグ・コーネルセンだった。
その後、10年以上対戦がなかったワラビーズにふたたびジャパンが挑む機会が巡ってきたのは、1987年に開催された第1回ラグビーワールドカップだ。
アメリカに18−21、イングランドに7−60と連敗して迎えたプールマッチ最終戦、サクラのジャージーの闘志あふれる攻守は、優勝候補の地元チームをおおいにあわてさせた。
開始1分のWTB沖土居稔のPGに続き、12分、24分とCTB朽木英次が巧みなランで連続トライを挙げ、13−16で前半を折り返す。後半もジャパンは沖土居の50メートル近いロングDGやHO藤田剛のトライなどで懸命に食らいつき、スタンドを沸かせる場面をたびたび作った。
最終的にはワラビーズが底力を発揮し、終了間際に2トライを奪われて23-42と突き放されたが、初めて催されたラグビーの国際的祭典で苦い経験を味わった日本ラグビーにとって、この試合は貴重な希望の光となった。ちなみにこの時の19点差というスコアは、過去5回の両国の対戦における最小得失点差記録だ。
2チーム制により若手主体のメンバーで挑んだ’07年W杯では、世界トップとの差を痛感
1991年の第2回大会、1999年の第4回大会とワールドカップで2度頂点に立ったワラビーズと対照的に、プロ化の波に乗り遅れたジャパンは1990年代中盤以降、国際舞台での存在感を急速に失っていく。
大きく水をあけられた日本代表はオーストラリアにとってテストマッチを戦うに足る相手ではなくなり、若手中心のオーストラリアAとのゲームでも60得点以上の大差試合になるなど、背中すら見えないところまでワラビーズの存在は遠かった。
それをあらためて痛感させられたのが、4回目の激突となった2007年の第6回ワールドカップでの一戦だ。ターゲットに掲げるフィジーとの第2戦を3日後に控え、スコッドを2つに分ける2チーム制を敷いたジャパンは、若手主体の布陣でオーストラリアとのプールマッチ第1戦に臨む。
23歳でゲームキャプテンを務めたFL佐々木隆道や、円熟期に達しようとしていた副キャプテンのWTB小野澤宏時らを筆頭に渾身のチャレンジで挑み、前半は3-23と健闘したジャパンだったが、後半は格の違いをまざまざと見せつけられた。
SHジョージ・グレーガン、SOスティーヴン・ラーカムのHB陣にFLジョージ・スミス、CTBスターリング・モートロックら世界の顔をずらりと並べたワラビーズの本物の圧力は、予想していても対処できないほどすさまじかった。
たたみかけるような猛攻を受け次第にジャパンの選手たちの足が止まりはじめると、50分以降は一方的な展開に。終わってみれば後半だけで10トライを失い、ジャパンにとっては1995年の第3回南アフリカ大会のニュージーランド戦で喫した17-145に次ぐ、ワールドカップでの記録的大敗(3-91)となった。
ジョセフ体制2年目の対戦は完敗も、2019年W杯につながる貴重な経験に
世界的名将、エディー・ジョーンズ氏が2012年にヘッドコーチに就任して以降、日本代表はそれまでの遅れを取り戻すように目覚ましい躍進を遂げた。
ウエールズ、イタリアを初めて倒し、2015年のワールドカップイングランド大会では南アフリカ代表スプリングボクスからスポーツ史に残る大金星を挙げる。
2016年にジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチがチームを引き継いだ後も右肩上がりの成長は続き、アウェイでウエールズに30-33と迫るなど、2019年のワールドカップ自国開催に向け着実に自信を深めていった。
そうした流れの中、ジョセフ体制2年目となる2017年秋に行われたのが、ジャパンにとって5回目となるワラビーズとのテストマッチだ。ワラビーズは2週間前にニュージーランドを23−18で破ったブレディスローカップのメンバーから、FBイズラエル・フォラウやSOバーナード・フォーリーら5人を入れ替えた布陣だったが、ここでも世界の頂点を争う強豪国の実力をいかんなく誇示した。
得意のラインアウトを起点とするアタックから開始24分までに3トライを奪って主導権を握ると、その後も強烈な突破力を誇るCTBテヴィタ・クリンドラニのラインブレイクでゴールラインを超え、35-3でハーフタイムを迎える。
後半、ジャパンが9分までに1T1G1PGを挙げ一時22点差まで追い上げたが、オーストラリアはそこからもう一段ギアアップして4トライを追加。最終スコアを63-30まで伸ばし、余裕を持ってフィニッシュした。
またしてもワラビーズの分厚い壁にはね返されたジャパンだったが、ワールドカップ日本大会まで2年を切ったこのタイミングで、世界の最先端を行くチームの凄みを体感できたことは、貴重な財産になったはずだ。
終了間際にパワープレーでトライをマークした姫野和樹をはじめ、LOヴィンピー・ファンデルヴァルトやPRヴァルアサエリ愛ら2019年ワールドカップで主軸を担う選手たちがこの試合でテストマッチデビューを果たしており、ここで得た経験が2年後の大舞台での飛躍につながったことは疑いない。
なお、横浜・日産スタジアムの観客席を埋めた43,621人の入場者数は、2004年より実数をカウントするようになって以来、日本代表の国内のテストマッチで最高の数字となった。
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このように過去5回の対戦では苦戦を強いられてきた日本代表だが、今夏のヨーロッパ遠征でブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに堂々と渡り合い、アイルランドと8点差の接戦を繰り広げた現在のチームは、これまでワラビーズと戦ってきたどのジャパンよりも大きな可能性を秘めている。久々に国内のファンが見守るピッチで、歴史を動かす勝利をつかみ取ることを期待したい。
「日本 vs. オーストラリア」
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