文武両道をしっかりと体現する。
川和高校は神奈川有数の進学校だ。
生徒たちは怠けるという言葉を知らない。朝の授業前、お昼の休み時間は自主練に没頭し、空いた時間を見つけては勉学に励む。
ラグビー部は少数精鋭。
15人の部員に2年生助っ人が1人加わり、16人で花園予選の初戦に臨む(対柏陽・横浜緑ケ丘合同、日程非公表)。
今年の3年生はたったの2人だ。両PRに入る。
3番のキャプテン、宮崎怜嗣(れんじ)は「人数が少ない分、3年生のプレッシャーはどうしても大きいし、やらなければいけないこともたくさんあります」と苦労を語った。
夏の緊急事態宣言下では、練習もままならない状況が続いた。9月末で宣言が解除されるまでは分散登校で、部活動は学年単位での活動になった。だから2人の3年生は、赴任4年目の小野圭介監督と3人で練習に励むしかなかった。
取材を行った10月上旬は、久しぶりに活気が戻る。決して広くはないグラウンドに、サッカー部や野球部、陸上部、そしてラグビー部が集まる光景を小野監督は懐かしんだ。
最上級生は2人だけだけど、バランスが良い。宮崎主将は一番に周りを見渡して、的確な言葉をかけられる。1番の上田武蔵は黙々とメニューをこなし、試合ではガッツを見せるファイターだ。
宮崎主将は最後の大会に向けて、「3年生2人で全力のプレーをして、自分たちが本当の意味で戦うことができれば、後輩も一緒に頑張ってくれて結果はついてくる」と意気込む。
昨年も16人で挑んだ花園予選は、3回戦で日大藤沢に17-35で惜敗。ベスト16に終わった。目標をベスト8に置いていたから、今年こその思いは強い。
「その試合は自分も不甲斐ないプレーばかりでした。なのでまずはベスト8。ただ去年はベスト8を目指して届かなかったので、さらにその上を目指してどんどん勝ちたい」と宮崎主将は語る。
部員のほとんどがラグビー初心者だ。宮崎主将も中学まではサッカー少年。川和高校へ進学したのも公立のサッカー強豪校だったからだが、ラグビー部の勧誘を受けてあっさりと扱うボールを変えた。
「もともと体が大きくて、受験太りのせいもあって80㌔くらいありました(笑)。でもそのコンタクトの強さを活かせるスポーツだと感じて。意外にもパッとラグビーに切り替わりました」
2年生は5人、1年生は8人いる。うち2年生の3人だけがラグビー経験者だ。インサイドセンターに入る石野創太郎は、小学1年で地元の麻生ラグビースクールに入った。
「いろんなスポーツに触れましたが、ラグビーは周りの人がすごく温かくて、タックルバッグに思い切り当たるのも楽しかった。一番自分に合っているなと」
神奈川DAGSでラグビーを続けた中学時は、勉学にも秀でた。学校の成績はオール5。高校でも文武両道を志して川和に決めた。入学時はコロナ禍で6月まで部員と会えなかったが、近所に住んでいた麻生RSの先輩で明大2年の古田空(くう)に練習方法など、いろいろ教わった。
「ひとりでパス練をしたり、ラグビーノートを作ったり。みんなと会う時のためのいい準備はやってきました」
この秋には2021年度のビッグマン&ファストマンキャンプのメンバーに選ばれる。石野は自薦で選ばれた16人のひとりだった。立ち幅跳び280㌢をクリアした。
「キャンプの存在は知っていましたが、雲の上の存在で自分には行けない場所だと思っていました。でも小野先生から話をいただいて、自分にも行ける可能性があるんだと。家の前で幅跳びの練習ばかりしてました(笑)」
オンラインでの開催だったが、実りある時間だった。
「背筋を使うのが大事と教わりました。これまでは勉強してた時、腰が曲がっていたけれど、いまは授業中も(いい姿勢を)意識しています。走りも生活の中から変えられると教わったので、普段の生活の意識が大きく変わりました」
キャンプに参加して自信もついた。3年生2人がFWにいるから、石野はBKのリーダーを買って出る。数少ないラグビー経験者としてプレーでお手本となる存在でありたい。
「まずは自分が揺らがないこと。リーダーはいつも自信を持っていないといけない」
今春に合同チームで出場した関東大会予選では3回戦で日大高に17-24で敗れるも、前半は17-5でリードしていた。
ベスト8まではあと一勝。着実に力はついてきている。
人数が少なくても、戦えることを証明したい。