後半23分からの登場だった。明大ラグビー部の大石康太副将が、加盟する関東大学対抗戦の初陣を飾る。
10月9日、東京・江戸川区陸上競技場。ラストイヤーの第3節で途中出場を果たす。日体大を46-10で下すまでの間、得意のラインブレイクを披露した。
チームは強豪高出身の猛者を揃え、大石の務めるFW第3列の位置には一線級が並ぶ。激しい部内競争の下、当の本人はこう考えていた。
「人と比較しない。最終的に評価するのはスタッフです。自分と誰かを比べていいことはないです。それよりも、自分に何が足りないかにフォーカスする」
人と自分を比べるのではなく、理想の自分といまの自分を比べる。選手選考の責任は首脳陣にある以上、人に秀でているかどうかを自分で考えるのはやめた。
「僕はルビコン(チーム内用語で、控え選手主体のグループを指す)にいたんでわかるんですけど、下の選手って、スタッフからの評価を気にして自分が思うように動けていなかったり、萎縮したりすることが多いんです。そこで自分は、自分の大事にしている部分に注力しています。いいお手本がいたらその映像は観ますし、自分がやりたいこととチームがやりたいことが合わないのであればスタッフと話すべきだと思いますけど、それを気にし過ぎない」
國學院久我山中、高を経て明大に入った。身長179センチ、体重96キロのサイズで防御ラインを突き破る強さ、何より誠実な生活態度が買われた。3年時までの1軍経験はそう多くないなか、役職に就いた。
目指すのは「凡事徹底」。今年6月に就任した神鳥裕之新監督の合言葉を、以前から大切にしていた。
「ストレッチをさぼったり、体温、体重をはかり忘れたり、それを何回もやってしまったり(という状態をなくしたい)。普通にできること、選手がコントロールできることを大事にして欲しい」
普段から規則正しく暮らすことで、グラウンドで規律あるプレーを徹底したい。周りをそう促したい。
「皆、育ってきた環境にはプライドを持っていると思う。それを全面否定はせず、明大のスタンダードを明確にする。毎年、言っていますが、私生活を突き詰められているかで(すべてを)変えていけるのかなと」
前年度サンウルブズの練習生になったNO8の箸本龍雅前主将(東京サンゴリアス)、1年時から国内トップクラブに注目されたSOの山沢京平前副将(埼玉ワイルドナイツ)はすでに卒業。SHの飯沼蓮主将率いる現チームの生命線は、「ひたむきさ」にあると大石は見る。
「(昨季は)スター選手が多かった。個の力で打開できた。今年は一人ひとりがラグビーにひたむきに泥臭くやることがキーポイントなのかなと思います。一人ひとりが貪欲に身体をぶつけられるかどうか…」
日体大戦は、チームにとって課題が多い試合だった。攻撃中のミスや反則を重ねたことに、飯沼主将に加え首脳陣も猛省していた。大石のみならず、明大も自分たちとの戦いに勝ちたい。