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中大42-22流経大。前に出る「スピード」で中大が金星。昨季全国8強の流経大から、今季初勝利を挙げる!

2021.10.10

リーグ戦で中大が流経大を破ったのは、19年ぶり(2002年度の中大48-25流経大)。2007年度、2008年度は引き分けだった(撮影:向 風見也)

 あっという間だった。

 敵陣の深い位置から、対する流経大の擁する留学生たちに大きく突破される。オフロードパスを介しフィニッシュを許す。直後のゴール成功でスコアは10―17となる。前半36分だった。

 しかし中大は、ここで崩れなかった。右PRの茂原隆由主将は、インゴールで小さく円陣を組む。

「ひとつのミスで落ちない。一つひとつ大事にしよう。そう、話をしました。(失点のきっかけが)自分のミスからだったので反省しているんですが、切り替えて、取り返してやろうと。皆が取り返してやろうという気持ちだったのが、自分にとってもうれしいことでした」

 10月11日、茨城・流経大龍ケ崎グラウンド。関東大学ラグビーリーグ戦1部の2戦目に臨んだ。昨季2位の流経大に、同5位の中大は攻守両面での鋭さで対抗する。

 同26分のチーム初トライまでの過程では、駆け込む走者のスピード感、フットワークが際立った。茂原主将は「1フェーズ、1フェーズステージアップができた」とも喜ぶ。

 例の手痛い失点の直後は、キックオフからのタックル、防御ラインのせり上げで流経大のミスを誘う。敵陣ゴール前中央で自軍スクラムを得るや、用意されたプレーを放つ。おとり役を担うCTBの水野陸の背後から、FBの杉本崇馬が駆け上がる。ゴールエリア右中間へ抜け出す。直後のゴール成功で17―17と追いついた。

 以後もタフな防御を重ね、続く前半ロスタイム42分にはハイテンポな連続攻撃から敵陣22メートルエリア左でペナルティーゴールを獲得。20—17と勝ち越した。

 流経大の一時退場処分で数的優位のあった同46分以降には、モールによるトライとコンバージョンゴールで27―17とリードを広げる。

 後半もスタイルを貫く。序盤から好タックルを連発したFLの松浦嵩は、ずっと変わらずに刺さり続けた。得点力がありこの午後1トライの水野も、相手にぶつかってはすぐに起き上がって防御を締めた。

 着実に加点する傍ら、相手の追加点は後半ロスタイムまで許さなかった。

 ノーサイド。42―22。

 嫌な流れでの失点に落ち込むどころか、勢いを保ち、盛り返し、今季初白星を挙げた。

「流経大は外に展開する。相手の外側に立つことを意識し、チームとしてのディフェンスをぶれずにできた。そこが個人的ないいタックルにもつながったと思っています」

 こう語るのは津田貫汰。プレーヤー・オブ・ザ・マッチ受賞の3年生SOだ。その言葉通り、松浦や攻撃力のある水野とともに、幾度もタックルしていた。何よりその足技で、試合の流れを作った。

 ハーフ線の付近で反則を得た際は、タッチキックを敵陣のゴールラインの手前まで届かせてチャンスを拡大。30—17で迎えた後半18分のそれは、味方のモールによるトライを演出した。

「時間帯的にも敵陣に入りたかった。モールで(スコアを)獲ってくれてよかった」

 何よりゴールキッカーとして、距離、角度を問わず精度の高い一撃を刻む。

 前半3分の50メートル超のペナルティーゴールは外したものの、続く12分にはハーフ線をやや超えたあたりから真正面にあるゴールを射止めて先制する(3―0)。結局、7本中6本のゴールキックの機会を成功させ、計14得点を挙げた。

「ペナルティーゴールはチームのためのチャンス。決めなければいけないから、練習してきました」

 中大は一昨季まで2シーズン連続で下部との入替戦を強いられ、昨季も開幕5連敗と苦しんでいた。とはいえ就任3年目となる遠藤哲ヘッドコーチのもと、身体能力のみに頼らぬち密なスタイルを涵養。惜敗したゲームにも一定の手応えを掴んでいた。

 留学生を揃える相手をなぎ倒した今度の80分は、現体制下の代表作のひとつとなり得る。次の法大(昨季4位)戦を16日(場所は非公開)に控え、茂原主将は足元を見つめる。

「立ち返るところ。原点。アタックでも、ディフェンスでも、前に出ること」

 敗れた流経大は、HOの西山大樹主将曰く「前、後半を通し、自分たちのダイナミックラグビーができなかった」。近年、上位争いに絡んできたが、今季は開幕2連敗と苦しむ。

 6月上旬からの約2か月間、新型コロナウイルスのクラスター発生により活動停止。ワールドラグビーの推奨する休暇明けのプロトコルに沿って活動し、いまに至る。

 課題はいまのチームでの実戦不足、コンタクトへの耐性だろう。西山主将は「ブレイクダウン(接点)に課題が残りました。コロナにかかってしまって春シーズンができなかった分、頑張ろうとして来ていますが、ゲーム経験のところが足りないかなと」。池英基ヘッドコーチはこうだ。

「中大のスピード、自分たちの弱いコンタクトの部分がうまくいかず、早く展開するダイナミックラグビーができずに終わってしまいました。ワールドラグビーのガイドラインに沿ったところ、コンタクト練習ができなかった。それがいまの課題に現れている。ただ、それを改善すれば自分たちのダイナミックラグビーができる」

 10月16日、改めて本拠地で関東学大(昨季7位)とぶつかる。 

 予定より約2週間遅れて9月26日に始まったリーグ戦。大学選手権へ進める上位3傑争いが激しくなりそうだ。