ラグビーリパブリック

個性派集団の頂点。東海大のジョーンズ リチャード剛は部内の「新ルール」導入に感謝。

2021.10.08

背中で見せるリーダーシップ。東海大FLジョーンズ リチャード剛(撮影:高塩 隆)


 それぞれ、得意なことをすればいい。東海大ラグビー部のジョーンズ リチャード剛主将は、割り切っていた。

 2年生SOの武藤ゆらぎ、司令塔的な役目を担うインサイドCTBの丸山凜太朗、長らくレギュラーを張るLOの小池隆成の名を挙げて言う。

「試合中の円陣では、武藤、丸山が次の動きについて的確な話をしてくれています。FWのアタックについては小池もしゃべってくれる。助けられています」

 参加する関東大学リーグ戦1部での4連覇、さらには大学選手権での初優勝を目指す。戦術理解度や言語能力に長ける仲間を従え、自身はタフであらんとする。身長177センチ、体重93キロの身体を絶え間なく動かす。

 9月26日、神奈川・小田原市城山陸上競技場。リーグ戦の開幕節で関東学院大を57-5で下した。丸山がプレイヤー・オブ・ザ・マッチを得たこの一戦で、オープンサイドFLのジョーンズは渋く光った。

 24点リードで迎えた前半28分、対する大型FBの川崎清純がラインブレイクを決める。オフロードパスを放つ。刹那、そのパスの受け手へ船頭が飛び込む。

 ピンチの場面に駆け戻り、首尾よくタックルを放ったのだ。本人はこうだ。

「自分の立ち位置的に、相手との間合いを詰めたら仕留められると感じました。それで、スピードをアップして、行きました。自分はタックルをしないといけないポジションをしているので、タックルの回数をどれだけ増やすかを考えます。常に、タックルした後の起き上がりを意識します」

 選手が当事者意識を持ってチームを作れたらいい。そんな思いで、今季から新たな仕組みを導入している。

 戦術、練習内容を決める際、まずはリーダー陣が主導でミーティングを実施。時折、その輪に若手コーチも混ざり、話した内容を木村季由監督が受け取り、適宜、微修正を図る。その流れで全部員と意思統一する。

 昨季以前は、全体ミーティングで首脳陣が選手へ伝達事項を述べる傾向が強かったそう。チーム運営の変化について、木村監督はこう語る。

「去年までも学生同士で話はさせているんですよ。ただ、選手とコーチ陣で考え方の齟齬(そご)が生じることはあった。いまはひと手間、ふた手間かけることで、彼らの理解度が深まっている実感があります。基本的に、僕は選手同士のミーティングには入らない。完全に丸投げしているわけでは決してないんですが、そのような雰囲気にしています」

 京都の上京中、伏見工高では役職に就かなかったという22歳は、責任ある立場を与えられてこう感じている。

「チームをまとめるために必要なことなどを、(WTBで副将の)林隆広、(右PRでFWリーダーの)前田翔、(BKリーダーでFBの)野口幹太などといった他のリーダー陣と話し合うこともあります。いままで考えてこなかったことを、こういう役職にいるからこそ考えています。戦術について話し合うミーティングもありますが、ここでは他のラグビー理解度が高い選手たちの意見を聞ける。成長につながっています」

 東海大の2018年度組は、キャラクターの濃さで知られる。特にジョーンズ、丸山、小池、前田は1、2年時から1軍で存在感を発揮している。ルーキーイヤーからトライゲッターとして期待されてきた望月裕貴も、一時退部を経て復帰。ピースが揃った印象だ。

 ミーティングにまつわる新方式は、木村監督いわく「今年の子だからあえて(導入した側面もある)」。自己主張の強い4年生たちのここまでの成長ぶりを踏まえ、含みを持たせて言う。

「今年の子は活発に議論する子たちかというと、必ずしもそうじゃない。だから、あえてそういう(話し合いの)時間を与えて、主体性を持たせようとも思いました。(4年生は)上級生になって、『自分の言いたいこと、やりたいこと、主張したいことを言うには、他の人のことも聞かないと受け入れられない』と、ようやく受け入れたんです。時間はかかりましたが」

 東海大が大学選手権決勝へ進んだのは通算3回。コミュニケーションの流れを変えたことで、これまでにないブレイクスルーを目指せるか。ジョーンズは「隙のないチームを作っていきたい」と展望する。

「向こうがどこを攻めたらいいかわからないディフェンス、常に前に出続けるアタック、必ず1人は何か仕事をして相手に不利益な状況を作っているブレイクダウン(接点)、手が出されないくらいに押すスクラム、トライにつなげられるモール…。隙がないとは、そういう意味です」

 次戦は10月9日、神奈川・東海大グラウンドでおこなわれる。一枚岩にならんとする個性派集団が、初戦勝利で勢いに乗る大東大を迎える。

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