ライバルと相部屋になった。当の本人はこうだ。
「まだ始まったばかりなのでそれほどラグビーの話はできていません。ただ、きょう(取材日は10月1日)の夜にミーティングがあります。その後、より具体的な話をしていくと思います」
ラファエレ ティモシー。9月29日から宮崎で始まった、ラグビー日本代表候補の合宿へ参加中だ。
2016年秋の代表デビュー以来、着実に出世してきた。
多彩なオフロードパス、左右両足でのキック、防御力を持ち味とし、2019年のワールドカップ日本大会では全5試合に出場。華麗にトライをお膳立てし、史上初の8強入りに喜んだ。
約1年7か月ぶりの再始動となった今年5~7月のツアーでも、組まれた2つのテストマッチ(代表戦)で13番をつけた。以後は所属するコベルコ神戸スティーラーズの活動拠点へ戻り、代表側から渡されたトレーニングメニューと自主的な減量セッションでコンディションを整えてきた。
そして再集合した今回、新たな好敵手と行動することとなった。2人部屋のルームメイトが、同じアウトサイドCTBのディラン・ライリーとなったのだ。
ライリーはパナソニック(現 埼玉パナソニックワイルドナイツ)の一員。今年5月までの国内トップリーグを制し、ベストフィフティーンも受賞した。
守備範囲の広さや相手を引き付けてからのパスの精度は、6歳年上のラファエレにも匹敵しそう。何より力強い突進に防御網を抜け出してからのスピードと、この人独自の強みもある。
アウトサイドCTBでの動きが期待される選手には他に、今年デビューした29歳のシェーン・ゲイツ(NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安)がいる。代表候補の予備軍にあたるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)でも、24歳の中野将伍(東京サントリーサンゴリアス)がスタンバイ。4日には、2019年ワールドカップのメンバー入りに迫っていた26歳の梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)もNDSに追加された。
30歳の通称「ティム」は、激しい競争に挑んでいる。この状況をどう捉えるか。あくまで、ひとりの年長者として述べる。
「競争率が上がることはチームにとってはいいこと。CTBとして競争力を持って練習したいです。自分もここで年齢を重ねてきました。最初に来た時とは違う感じになっています。若い選手がベストな選手になれるよう、いろいろと手助けしていきたいです」
他者とつながる人だ。豪華戦力を擁するコベルコ神戸スティーラーズでは、元ニュージーランド代表であるベン・スミスの献身ぶり、ゲーム理解度の高さに感銘を受ける。そのかたわら、全体練習後は同じ働き場の若手とスキル練習に励む。賢人から教わるだけでなく、教える立場にも回る。
直近のオフでは、妻の知人を支援すべくオークションを開催。今夏のテストマッチで使った日本代表のジャージィやスパイクを、SNS上で出品した。
かねて「いい人間でないと成長するチャンスはない」との持論を持つラファエレは、こともなげに言った。
「自分が動くのがいいアイデアだと思ったんです。コロナ禍という難しい状況のなか、何かできることはないかと考え、やろうと決めました」
チームはこの秋、10月23日のオーストラリア代表戦(昭和電工ドーム大分)を皮切りに国内外で計4つのテストマッチを実施する。
周りの状況に左右されず落ち着きと謙虚さを保つラファエレは、「違う国に行っても(日本にいる時と)同じ準備をして、プレーをするだけです」。話をしたのは10月1日の取材機会。タフな道のりに淡々と向き合う。